NoName

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4/14/2026, 11:38:28 AM

神様へ

好きな人がインスタのしたともから私を外さないようにしてください

手の大きなひとだ
頭が良くて優しくて謙虚なひとだ
おとなしいけれど面白いひとだ
私に愛と劣等をくれるひとだ

身長が高いひとだ
私はそうでもないから羨ましい
睫毛の長い人だ
物憂げな顔をよくする

足の速いひとだ
でもそれよりずっと持久力があった
山を登ろうがどれだけ走ろうが涼しそうで
それなのに、ふたりのときは簡単に呼吸を乱す

よく
目が合う寸前に逸らしてしまう
本当に好きに落ちたら困ってしまうから
もうすでにあなたのとりこだけど

音楽の好きなひとだ
私の知らない五線譜を、あなたが辿る
絵の描けないひとだ
あなたの知らない色を、私が探っている

心の奥深くに
未だときめきを隠している
淡い期待と不安がどこまでも膨らんで
私はふつうのやつになってしまった

どうか神様
彼が私の嘘に気が付かないように
彼がもう怪我をしないように
彼が誰にも触れられないように

本当は
綺麗な鳥籠に入れてしまいたいくらいなの

どうか神様
私が彼より先に死ねるように
私が彼の隣をひとりじめできるように

ふたりじゃ狭いくらいの1LDKに
私たちを閉じ込めてください

4/13/2026, 12:19:34 PM

快晴

学生の頃
プール授業があった日
朝からまるで遠足前みたいにそわそわして
全員はしゃいでいた

恥ずかしい、と女子は背伸びして騒ぎ
男子は整えた髪を気にして触っていた
空はからからに青く晴れ渡って
眩しい太陽は、水中から揺らいで見えた

どこまでも暑かった
どこまでも爽やかだった
どこまでも青があるように思えた
それはあまりにも刺激的な気がした

プールサイドを駆けた先
青に思いっきり飛び込んだ先
冷たくて音が聞こえなくなって
地球の中心が見えそう

痛みさえ感じず
呼吸さえ必要とせず
私たちはどこまでも行けると信じて疑わず
一瞬、軽くなる

現実に引き戻されて
一気に息苦しさを感じる
上には快晴がひとつ
きっと隣町よりも遠くまである

終わってしまえばそれっきり
次の授業ではゆるゆると
夏の快晴に意識が溶けて
しばらく、全てを託してしまえ


がさがさ、とん、こっこっこっ
ねーねー、あー、えー、やばあー、ふふふ
さあさあさあさあ、さらさらさらさら
みーんみーんみーんみんみんみんみん…

たぶんずっと
快晴に落ちていくの

4/10/2026, 12:20:53 PM

春爛漫

私、あなたのこと好きでたまんない
この世全部春にしてやれるくらいには
今に東京都心に桜咲かせられるくらいには
じゃんけんでグー出してあげれるくらいには

春の風にくしゃみひとつ
喉の奥が少し変な感じ
かぜ?
ねえ春は嫌いだけどさあ

はるはるはるはるはるらんまん
はらはらはらはらはらはらはらり
桜散っていく、も少ししたら

ふたり、
ひとり、
セロリはあんまり好きじゃないね?
ゆれり、
ふたり、
ずっとずっといてよ春よ。

私、あなたが生きてさえいれば
この世の春を信じられるの
世紀末の大芝居なんてもう忘れてしまえ
なんであなたみたいな人なんて
ずっと前から思っている
もうルーティーンでしょう春の

はるはるはるはるはるらんまん
みるみるみるみるみるみるうちに散っていく
そんなのありえないのに
はらはらはらはらはらはらり
桜が咲くなんて
一世一代の大嘘つきめ
かわいいねなんて

4/5/2026, 12:43:48 PM

星空の下で

真っ暗な夜に砂糖を振りかけたら星空ができる
そんな気がする
ざくざくしててゲロ甘な天井
そんな下で君と歩いている

一つ折ったスカートが風になびく
あまりの寒さにカイロを挟んで手を繋いだ
上着貸すよ、という君の申し出を断る
それは、あんまりにも甘くて刺激的だから

一本、熱いコーヒーを買って、ふたりでちびちび飲んだ
苦さが私を現実に戻す
それなのに、君はホワイトチョコを差し出す

ホワイトチョコが溶け出す
酷い甘さに舌が痺れ、体温が上がる
手と手が絡み合って、唇も触れるくらいまで
近付く

砂糖をぶっかけた黒い天井は少し眩しい
星の光に照らされて、青が混ざる
痛いくらいの甘さで抱きしめあう
息もできない気がした

やっぱりホワイトチョコは嫌い
星空も嫌い
君も嫌い
全部全部、暴力的に甘すぎる
頭が溶ける
言葉がなくなる

明日になれば、きっと甘さだけを残して
いつもどおりに帰るから

今だけは何も考えないでいよう

2/17/2026, 1:19:07 PM

お気に入り

お気に入りがたくさんあった。
小さな秘密がたくさんあった。

なんの面白みもない女子生徒だった。
髪の毛は肩につかないように。
スカートだって折らないように。
キーホルダーもつけないように。
優等生でいられるように。

なんの面白みもない女子生徒だった。
黒のハイソックスの下。
真っ赤なペディキュアが隠れていること。
きっと、あなたしか知らないわ。

朝。
白い日焼け止めを塗って。
高いファンデつけて。
心のうちも全部隠して仕舞って。
薄い、口紅をつけたなら。
最後。
足先の爪紅、忘れないでね。

お気に入りをたくさん持ってる。
みんな知らない、女子生徒の裏。
校則、いくつ破ってるかしら?
あなたならわかるかな。

ふたつ、離れたクラスの。
なんの、面白みもない男子生徒。
それがあなただった。

いつも、試験では満点で。
体育祭でも目立ってた。
なんの、面白みもない隙もない奴め。

まったく、面白みもないふたりぽっち。
今日は、寄り道してゲーセンに行くの。
明日は、静かな映画を見よう。
その次は、手をつなげたらいいなあ。

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