アリア

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10/18/2025, 3:35:17 PM



人と違うと何か問題があるのか

いろんな人がいて
いろんな考えがあって
個性があっていいと思う人。


駄目だよの一点張りで
みんながこうだから
こうでいなきゃいけないんだぞ、という人。


霧がかかったみたいに
モヤモヤと
雁字搦めみたいだ。


後者の考えは
一度こうと決まった時にくじけることが起こると
なかなか抜け出せない気がして
沼にハマりそうで。


私は前者がいいなぁ…。
もやもやする中にも希望という光を見出だせそう。



霧の中にも光があれば
進行方向は見失わずに生きていけるんじゃないかな。
どこかの有名な方はさ
いろんな人がいるんだぞって
違っていいじゃん、て言ってるのに。



自分がこうだったから
あなたもこうであらなきゃ


そんなの決めつけないでよ
私の進む道は私が決めるの。



霧と光の狭間で動けずにいるよりも
私は光の方へと進みたいの。



だから君もおいでよ
そこで立ち止まってないで



怖いなら私が一緒に行ってあげるから





お題【光と霧の狭間】

10/17/2025, 1:43:59 PM



おーいそこの人。
そんな風に急に声をかけられ辺りを見渡すと
手を振る短髪のお兄さん。
何か出店をしているのか屋台を構えていて
恐る恐る近づく。


「いらっしゃい!」


ニコニコ笑うお兄さんにどうもと返して
何に出してるんだろうと品物を見る。
そこには様々な時計。
デジタル、アナログ、懐中、砂時計。
本当に様々な種類があった。


屋台で時計屋なんて珍しい。
出張的なものかなとそれ以上は特に気にすることはなく1つ1つ魅入られるようにじっくり見ていた。



そんな中木彫の砂時計が目に入る。
雑貨屋などでも売ってるのを見たことはあるが
手にする事も無ければ目を奪われることなんて普段なら無かった。



「お、良いの見てんねぇ」
「あの、この砂時計は?」
「それは過去でも未来でも行ける砂時計」


あ、やばいやつだった。
この店は良くない、そう思って後退りをする。
しかしそれを目敏くお兄さんは気づいて、待った待った!と目の前に立ち塞がる。



「…怪しすぎますよ」
「まぁそうなんだけどさ。
その砂時計が気になったってことは願いがあんだろうなって」


そんな流れ星じゃあるまいし。
インチキやってるのかな。
詐欺とか。


「俺もね、変えたいものがあんのよ」


だからその砂時計欲しかったんだよなぁ
そうぼやくお兄さんに眉を寄せる。
こんな立ち話をしてる暇なんてないのに。


「君、この砂時計貰ってくんないかな?」
「はい?いらないですよ」


どうせ高額で請求されるやつだ、そう思って
首を振る。
そう言わずと、とお兄さんは砂時計を手にすると無理矢理手に持たせた。



「ちょっと!」
「耳澄ましてみ?」


文句を言おうと声を荒げる。
しかしお兄さんの言葉により音に意識を向けてしまった。サラサラと綺麗な音で思考が停止する。
砂時計の中の砂は上から下にと落ちていく、上段にはもうそんなに無くてボーっとそれを見つめる。


「うんうん、じゃあそれをゆっくりひっくり返す」



言われた通りひっくり返すと意識がグワンと歪み立っていられなくなった。
なんだろう、眠くなってきた。



「そう良い子。
そのまま眠って



母さん達をよろしくな」




最後に聞こえてきた言葉と優しい声にハッと手を伸ばしたがお兄さんは首を降ってじゃあなと言っていた。



意識はそこで途絶え次に目を覚ますとそこはどこかの部屋。ぼんやりと辺りを見渡すと一つの棺。



「…え」


棺の横には遺影があった。
そこに写っていたのは意識を失う前に見た
時計屋のお兄さん。



…いや、違う。
時計屋の知らない人じゃない。



お兄ちゃんだ。
交通事故だった。
先日葬儀も終わりあまりの辛さに忘れたくて死にたいなとそう考えてた。



夢として出てきたお兄ちゃんは
生きてくれ、その思いで砂時計を渡したんだろう。



変えたいもの、それは
自分の命だった。


死のうとするな、って。



涙が出た。
もう会えない兄とデカい責任の重圧に
押し潰されそうだ。


それでも大好きな兄に助けられた命
大切にしなきゃいけない。


遺影に拳を突き出して
ゆっくり頷いた。


「任された」


そう言うと遺影の中の彼はフッと笑った気がした。





お題【砂時計の音】

10/16/2025, 8:15:50 PM



「こちらがキトラ古墳の内部を撮ったものですね」
「そしてこれが天井に描かれている星図」


周りの壁は四神が描かれております。
そんな説明を受けてじっくり見る。
昔から歴史あるものが好きだった。
古墳も例外に漏れずその一部で今日は有名な古墳の
星図の撮影に成功したものが展示されるとの事だったのではるばる行った。


写真には赤色の丸い線に
これは金粉か何か使ったんだろうか、星座の点は金色で描かれていた。
そして様々な星座。
これだけ綺麗に残ってるのは素晴らしい事だろう。



壁に描くという技術も凄いし
星を見て図に起こそうという先人の知恵は尊敬に値する。



昔から壁に書いてあると消えるような気もするが
現存する中で最古のコレは消えずに残っている。このまま残ってほしいなぁと思い次の人も見るだろうからその場を去る。



私も昔は星座の絵を書いた。
それがいわゆる星図だったんだろう。
今ではその星図は消えて私の手元にはないけれど。



遠目にもう一度だけ星図を見る。
名残惜しいがもう帰らなきゃ。
帰りの時間に間に合わない。
そうしてその日は帰りいつもの日常へ


また来れたらいいな
そう思った。
しかし後で知ることになるのだけれど
公開はその日が最後で現在はやってないとの事だった。


もう見ることないけれどきっと今も変わらず現存してるんだろう。
この先人生は長い。
もしかしたら私の記憶の中で薄れて消える星図になるかもしれない。
でもあの感動は忘れられないんだろうなって思う。



星図 朱雀 青龍 玄武 白虎


あの古墳には夢が詰まってる。
もし修理が完了して公開再開をしたら
絶対に、見に行こう。



記憶の中の更新をしよう。



お題【消える星図】

10/16/2025, 8:01:04 AM



窓から見える景色はとても憂鬱で
憎らしい。
見渡しても同じ景色で変わることはなく
じゃあ外に出ればいいじゃないかと思うかもしれないが白い壁に覆われているこの空間からは出ることは出来ない。


ガラリと扉を開ける音。
また来た。


「こんにちは」


なんていう君の手には花。
週に1、2回来る度に持ってきているそれに
うんざりとする。
毎回持ってくるのは青くて小粒の花が集まったもの。
名前はなんて言ったか…
そうだ、ワスレナグサ、たしかそんな名前だったな。



それを窓際の花瓶に入れて君は椅子に座る。



「…毎回来てくれなくてもいいんですよ」


やんわりと来るなを伝えるも君は笑うばかり。
何か言い返してくればいいものを。
よくわからない世間話や子供の話。
そんなの言われたってわからないのに。


ふと君の手に光る指輪を見る。
何故か見覚えのあるそれに思わず手を伸ばし触れると
ピクリと動く君の手。
そんな伸ばした自分の手にも対となっているデザインの指輪があった。



「…あの、何か」
「あぁ、いえ…見たことあるなと」



でもなんで僕の手にもあるんですかね?
そう言って苦笑いすれば黙り込む君。一瞬だけ見えた傷ついた表情に何か失言をしてしまったと慌てて視線をそらす。逸らした先に見える先ほど持ってきてくれた花が目に付くとあれ?と瞬きする。



「今日は…青い花じゃないんですか」
「…それはパンジーです」



パンジー…。
なんだろう、いつもワスレナグサだったのに。
何かの意図があるように思えてくる。



「…愛−恋=なんだと思いますか?」
「え?」


じっとその花を見てると急な謎かけ。
愛から恋を引く?
怪訝な顔をしていると君は口を開く。


「孤独、だと思うんです」
「…孤独」
「はい」


だから『ひとりにしないで』
悲しげな顔で言われ頭がズキッと痛む。
何か大事な事を忘れてるような。


物思いに考えていると君は立ち上がり
また来ますとこの場を去っていった。
代わるように入ってきたのは看護師で僕の状態を見てくれる。そしてふとあれ?と首を傾げていた。


「パンジーなんですね」
「…はい」


やっぱり何かあるのか?
看護師さんは真剣な表情で懐からスッと携帯を取り出すと何処かに電話をしていた。


なんだろう
何か不安を覚える。


ワスレナグサからパンジー…。
愛−恋=孤独。


僕も携帯を取り出しワスレナグサと調べれば
花言葉が目についた。
『私を忘れないで』『真実の愛』
ならパンジーはと再び調べると
『ひとりにしないで』『私を思って』
そう出てきて動揺した。


先ほど彼女はひとりにしないでと言っていた。
ヒントを出してくれていた。
ポツリと涙が流れる。


どうして忘れていたんだ。


「え、大丈夫ですかっ?」


看護師さんの慌てた声。
僕は看護師さんを見ると一言
思い出しました、と。
そう言えば看護師さんは目を見開き繋がった状態の
携帯で先生を呼んだようだった。


続いて先ほど帰ったはずの彼女もいて驚いた顔で近づいてくる。



「思い出したって…」
「うん、思い出した。
ごめんね、ありがとう」


すると彼女はわっと泣き出した。
良かった、怖かったと縋りつきながら。


君からのヒントがなければ
今もずっと忘れたままだったかもしれない。
今度はきっと忘れないから。


一緒に帰ろうね




お題【愛−恋=?】

10/14/2025, 3:48:46 PM



夏から秋に変わるこの時期は
もの淋しく一年の終わりをぐっと感じ始める頃。
暑かった気温は一転、肌寒くって
半袖から長袖に変わる、そんな時期。


そんな風に物思いにふけていると
美味しい!と聞こえ店内を見る。
感嘆の声を発したのは女性でそれはもう
幸せだという顔をして笑っていた。


あんな美味しそうに食べてくれるのなら
作った甲斐があったな


その女性を見てそう思った。
この道に走ると決めて
学校へ行き卒業後は師の元で励む日々。
そして初めて作ろうと思ったのは自分が好きな
あの水々しくて食感が楽しい梨だった。


リンゴやいちごなど定番はよく見る。
けれど梨はあんまり見なくて
美味しいのに、その思いで作ったんだ。
梨の美味しさを知って欲しくて。


なんだかいい気分だ。
フッと口角をあげ仕事に励む。
そうして黙々と仕事をしているとレジのベルが鳴り表に出る。



そこには先ほどの女性がいた。
店内で食べてたからお会計かなと思ったので
ありがとうございます、伝票はございますか?と聞く。


「あの、持ち帰りもしたくて
一緒に払えますか?」
「あぁ、どうぞ。
どれになさいますか?」
「梨のケーキを…3つ!」
「…3つでございますね、ありがとうございます」


思わず多いな、と言いかけてしまった。
危ない危ない。
ショーケースから3つ取り出し丁寧に箱にしまっていく。


そして女性の元に持ってくると話しかけられた。


「この梨のケーキ、子どもたちにも食べてほしくて」
「…お子様にですか?」
「そう、とっても美味しくて優しい味がしたから」


目頭が熱くなる。
込められていた気持ちが伝わることは
こんなにも嬉しいのか。


「梨は【愛情】という意味があるんです」
「え?」
「だから、その【愛情】がお子様に届きますように」


なんて、無責任にすみませんと謝ればポカンとした後
女性はフフッと笑った。
少しだけ目がウルッとしていたのは知らないふりをした。きっとそれが正解だと思ったから。


「ありがとう」


また来ますねそう言って女性はお店を去っていった。
店内は落ち着いていたので再び中に戻ると師から話しかけられる。


「良かったな」


恐らく聞こえていたのだろう。
そしてこの人は自分の歩んで来た道がどれだけ大変だったか知っている。
感慨深く感じているのだろう。


自分も胸が熱くなった。
けれども今は仕事中だ。


精一杯の笑顔と何度も頷くことで
同意を示した。


誰かの笑顔に助けられる日々は
なにものにも代えがたい思い出だ。
今日あった日々を大事にしていきたいと
そう思えたのだった。



お題【梨】

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