肌寒さがグッと押し寄せてきたこの頃。
腕を擦り空を見上げるとふわっと白い吐息。
それを見てあぁ寒くなったもんなとぼんやり考える。
雪でも降るのかなと思ったが乱層雲などなく、そりゃそうかと落胆した。
自分の住む地域は雪なんて稀。
積もるなんて夢のまた夢だ。
温暖化が昔より進行してるのだろう。
雪が降ったら何が出来るだろう?
雪だるまを作る?
かまくら?
それとも雪合戦?
雪うさぎもいいね。
いつかの夢はことごとく難しくなった。
将来も仕事も学業も
みんなみんな挑戦するも土俵に立てなかったり
挫折したり。
だから雪でも降って童心に帰りたいなって
そう思った。
それに
雪は君が好きだったから。
冬が好きで雪が好きな君が大好きだったから。
もう今は会うことはないけれど
さいごにみた君が笑顔になるような雪を
自分も好きになりたくて。
「…降ってくれよ」
今年こそ雪をこの目に見させてほしい。
そうすれば自分も笑顔で頑張るから。
いつもは嫌いだった雪景色。
今は見たくて溜まらない。
どうかもう一度
あの日の景色を今年こそ。
✝
お題【白い吐息】
【消えない
消えてくれない
いつまでも心に残り続けるこの灯り。
つらい 妬ましい
その灯りで照らしてくれるな
苦しくなる。
溢れる涙
怒れる表情】
『残って
残り続けて
いつまでも心に残り続けるこの灯り。
楽しい 羨ましい
この灯りで覆い尽くして
幸せなの。
溢れる涙
安らぎの表情』
【どうか】
『どうか』
【この悲しい思い出が】
『この楽しかった思い出が』
【お前に】
『あなたに』
【届きませんように】
『届きますように』
お題 消えない灯り
世間はクリスマスムードで
街には色とりどりの電飾が飾られる。
並木道 駅 ショッピングモール
今は減ってしまったけど、
一軒家にもたくさん光っていて。
その横を歩いたり車で通り過ぎたり。
自分もそういった場所には何度か足を運んだ。
キラキラしたものが昔から好きだったから。
瞳に飛び込んでくるキラキラは目に焼き付き
写真の中に収まり思い出の中に仕舞われる。
その瞬間瞬間が大事で何度も何度も。
なんとなく大きくなってからもそうなるんだと思っていたけれどそんなことはなくその横を通り過ぎるだけ。
足を止めて見る余裕もなく
あぁ、今年も光ってるな、くらい。
それどころじゃ無くなったってのが正解だ。
大人になれば仕事もあり家庭も出来たりする。
子どもを授かればもう周りなんて気にしてられない。
もう少し大きくなってきたら落ち着くかな、なんて
淡い期待をして毎年通り過ぎていた。
今年もそうなるだろうと踏んでいたし、諦めていた。
「うわぁ」
先を行く子どもが足を止めた。
そして自分を振り返るとキラキラしたお目目で
花が咲いたように笑った。
「きれいだね!!すごい!!」
なにこれー!!とはしゃぐ子に
ポカンとした後(のち)
クシャリと破顔した。
「これはイルミネーション。
街をキラキラさせてみんなを笑顔にさせてくれる魔法みたいな光だよ」
「いるみ、ねーしょん…魔法!?」
「そう、でもねこれはクリスマスの時期にしかつかない特別なやつだから
サンタさんがおうちに帰ったら無くなっちゃうの」
「そっかぁ…。
あ!じゃあ写真撮ろうよ!いっぱいいっぱい!」
こっちこっち!と手を引かれポーズを撮って写真を撮っていく。久しぶりの場所で素敵な子と撮る素敵な瞬間。もやもやする心がブワッと一気に晴れる感覚に笑みを漏らした。
今年はいい年だった。
間違いなく。
だってこんなにも最高な瞬間があったから。
お題【きらめく街並み】
おかえり
そんな言葉をかけるも目の前に立つ人は
無反応。
そんな事慣れっこで気にせず話しかけた。
あの子がきたの
2人で楽しくしてるのよ
この前は2人で歌を歌ったの
一生懸命伝えるもあなたは涙を流すだけ。
ごめんなんて聞きたくないのに。
あなたは毎度同じ花を持って私に話しかける。
手紙を貰ったんだ。
ほんとは苦しくて死にたくて
でもあの子の方がもっと苦しかっただろう
ごめん、守れなかった
それには怒ってるのよ。
でもね気付いたんでしょう?
だから大丈夫よ
ね?もう前を向いて
私もあの子も
いつも貴方の傍にいるんだから
私の墓標と君に月明かりが指す。
もう帰りの時間だ。
触れる筈ないけれど彼の背中に両手を回す。
生きて
耳元でそれだけ伝えると呆然として涙を止めた
彼にニッコリ笑って
その場を去った。
また来るよ。
あなたが此処に来るその時に
今度はあの子と一緒に。
お題【君を照らす月】
「ままワンちゃん!可愛い!」
子どもの声にそうだねと優しく笑う。
週末雨でする事も無くてペットショップのある
モールに来ていた。
様々な犬や猫がいて子ども達は大はしゃぎ。
びっくりしちゃうからシーだよと言うと
口を手で抑えて勢いよく頷く姿が愛らしい。
「ワンちゃん…いいなぁ」
その言葉にグッと押し黙る。
この流れは良くない。
安易に家にお迎えはしちゃいけない。
でもそれが小さい子に伝わるか怪しい。
「ねぇママ、ワンちゃん飼いたい!」
「ワンちゃんと寝たい!」
ザーザーと降りつける雨の音と
子供達の無邪気な声に頭が痛くなる。
無意識に拳を握っていた事に気付くと
深呼吸して子供達の前にしゃがんだ。
「ママもね、ワンちゃん家に居ると楽しいと思う」
「じゃあ!」
「でも最後までお世話しなきゃいけないよ」
「出来るもん!」
「……もしかしたら途中で死んじゃうこともある」
「え…死んじゃうの…?」
子どもの悲しげな顔にズキッと胸が痛む。
でもこれは命の問題だ。
容易くいいよとは言ってあげられない。
場所を変えてペットショップ前にあるベンチに座り
2人の頭を撫でた。
「最後まで頑張って生きるワンちゃんもいる。
でもね事故で死んじゃうワンちゃんもいるのよ」
「…じこって…おくるまとか?」
「そうね、色んな事故があるけど…」
脳裏にちらつく愛犬。
ここで泣いてはこの子たちを心配させてしまう。
頑張らなきゃ。
「2人が大きくなってママの言ってる事が
わかるようになってまだ飼いたい!て思ったら教えてくれる?」
「うーん…わかった!」
「僕も!早く大きくなりたいな!」
「ふふっ、うん」
よし、帰ろうかと2人の背中を押しペットショップを後にする。
これでいい。
今はこれでいい。
あの空虚感と
やるせない気持ちや罪悪感。
こんなの小さい頃から味わなくていい。
寂しくなって泣いちゃう顔は見たくない。
安易な気持ちで命を買う判断をしちゃいけない。
色んなケースがあるんだ。
覚悟を持っていないといけないんだよ。
「雨、あがったね!」
「ほんとだ!虹ー!」
あぁ良かった。
雷は鳴るまでじゃなかったんだ。
「虹、綺麗だね」
苦しい気持ちと懐かしい気持ちに蓋をして。
またいつか
この傷が癒える日が来るようにと。
2人の笑顔とまだ消えない虹を見ながら
3人は帰路についていった。
お題【寂しくて】