Open App
11/27/2023, 1:32:39 PM

愛情は無いものだと思っていた

私には縁がないものだ、と。

私の親にはなかった

備わっていなかった

ただそれだけの事。

今まで憧れて生きてきたわけでもない

誰かに愛されたいとか、

誰かを愛したいとか

考えたことがなかった。

私とはかけ離れた欲求不満な誰かさんの贅沢品

その程度

見ても、食べても、聴いても、叩かれても、

何も感じなかった

世の中は理不尽だから

不公平だから

平等なんてものはない

何もかもそのせい

そう思い込んでいた

そう受け入れるしかなかった

今はただ

ただ、

目に映る手を引いた親子が

少しだけ

ほんの少しだけ

羨ましくなった


『愛情』

11/26/2023, 12:56:57 PM

顔の火照りは人を幼くするようで

電話越しにする話は健全者には伝わらない

小春日和に上がる体温

素っ気ないふりした上辺だけの声

図星かな、なんて思いながらもう一度

声が聴きたかったを口実に

空元気で隠された本音

弱々しい強気な人は

今日はなんだか兎のよう


『微熱』

11/25/2023, 6:41:23 AM

母の手編みのセーター

私は毎年訪れるこの季節の日常が大好きだった

母が編んだセーターを着て

お菓子を作りに台所へ

一息ついたら街へ行き

お気に入りを持っていく

博識で容姿端麗さながらに

街では有名な私の母

おまけの手は

いつも母に向いていた

知らない世界を知る母は

夕日が沈むと話をしてくれた

私はいつも最後まで聴けずに眠ってしまう

母のセーターは温かい

ほつれても、ほつれても、また編んでくれた

小さな村の休日のお話


『セーター』

11/23/2023, 10:43:52 PM

紅葉の綺麗な道で

堕天使に会った

空から落ちてきたとか

天国とか地獄とか運命とか

そんな話を聞いていたら

上も下もよく分からなくて

高所恐怖症になった

羽のない人間が宙を舞うなんて

変な表現だ

なんて呟いたら

地面の中に引きずり込まれた

ずっと深く

落ちていく

このままどこまで行くのだろう。

浮遊感が不快

光も差し込まない

そんなところで夢から覚めて

ジェットコースターが嫌いになった


『落ちていく』

11/21/2023, 10:00:19 AM

世界中のみんなの宝物を

美術館に展示したら

どんな表情をして帰っていくかな。

今日はどんな素敵な宝物があるだろう

自分の宝物は飾られているかなって

少しワクワクしながら今日を楽しめるかもしれない。

人の思い出を謗る人は立入禁止にしてさ、

鑑賞者を子どもと大人に分けたら

感想はどう変わるんだろう。

怒られている青年も

怒っている教師にも

功績を残した傑物にも

名のしれたヒーローも

悪とされるあいつにも

きっと宝物はあるだろう。

そんな夢が叶うなら

非難轟々の世の中にも

少しだけ平和な時間が訪れるだろう


『宝物』

Next