「ごめんねよりもありがとうを伝えた方がいい」
そんなの分かってるよ
自分だってそうしたい
でも気づいたらごめんって言ってることが多くて、
なんで?なんでなんだろうね。
もう定着しちゃってるのかな。癖みたいな。
正直何に謝ってるか分からないこともあるし
相手は対応が厄介で困ってしまうってことも分かってる
それでまた反応に困るよね、ごめんねって。
負のループの完成
ありがとうの方がいいよね
自分もそっちの方が嬉しい
でもね、でもごめんねって
なにか謝らないとって思ってる自分がいて
もちろん感謝もしてるけど申し訳なさがそれを超越してしまう
『ありがとう、ごめんね』
今日が最期の日だろう。
先例のない病
15回の手術
日に日に浮き出る骨
使えなくなる身体の機能
完治なんてもっての外だった
本当に人間は自分の寿命が分かるんだね。
だから伝えないと。
「さよならなんて、言わないで。」
聞き慣れた声は何かを悟ったように震えていた
もう少し話したかったなぁ。
身体が許してくれない。
やりたいこともたくさんあった
もう叶うことのない夢を前に虚しさで涙が溢れた
最期の記憶は好きな人がいいから
目を瞑った。
『さよならは言わないで』
距離感がおかしい
素っ気なくしてもお構いないらしく
縮まるほどの距離がはじめからない
好きなはずなのに嫌気が差す
物理的距離は近いのに
精神的距離は離れていく
遠距離じゃないのに一人だけ遠距離みたい
少し距離を取りたい。
嫌なはずだったのに望んでる
心の距離が開きすぎた
君との距離と僕の気持ちは反比例していくよう
僕たち、別れようか。
『距離』
隣の病室の女の子が今日は泣いていた
泣いてるの初めてみたなぁ。
そのくらいしか思ってなかったんだ。
でもね、あまりにもずっと泣いているから
どうしても気になってどうしたの?って声をかけにいったの。
そうしたら、
今度するはずだった退院が延びたって
そういえば僕ももう3回くらい延長されてるよ。
少し経って泣いていたのごめんね。って謝ってくれた。
僕もよく泣くから大丈夫だよ。泣いていいんだよ。って返したんだ。
その時ふふって笑った顔がかわいくて
やっぱり君は泣かないで。笑った顔の方がかわいいよって言ったんだ。
お友達が増えた。
僕は強いから退院するまで泣かないんだ。
『泣かないで』
迷い込んだ世界は綺麗で美しかった
片割れ時に見える月は青い
夕日が沈んでいく
太陽が地球の裏を照らしに行ってしまう
パレードの音楽が国を包む
愉快な音は短命で、
夢の世界のエンディングに
静かに心を締め付けられる
鳴り止んだその瞬間に漏れる息
虚無を感じる数秒間
この時間が好きじゃない
終わるとそこでは
道しるべを持って帰路を教えてくれるから
またいつか会おうね
大きな住民と
小さな約束
まだ夢の中にいたい
だから、どうか終わらせないで
『終わらせないで』