緒方

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5/10/2024, 12:50:07 PM


あぁ、どこまでも清く美しい君。

私の叫びなど知らず、遠くへ羽ばたいてゆくのね。

そこはきっと、貴方を苦しめるものなど何もない楽園。

暖かな光が、世界を白く染め上げているんだわ。

君に優しく、私には痛みだけを残すその世界。

いっそ羽を毟ってしまえば、君はここに留まれる?


だってほら。


周りが黒く歪むほど、君の白は美しい。

その気高い様を、真に理解しえるのは私だけ。

醜く淀んだ、私だけでいいのに。


【モンシロチョウ】

12/14/2023, 9:17:25 AM


欲しい。愛が欲しい。

君に優しくなんてできないけど、君に優しくされたい。

純然たる愛、油よりもどろどろのやつ。

甘やかして、ただ甘やかしてよ。

そうして白い息も灰色の町も、全部全部染め上げて。


嫌、やっぱり。やっぱりさ。

全て放って連れ出して、引き返せない位に。

痕が残るほどの力でこの手を引いて。

できたらそのまま私の首を絞めて。


お願いだよ君。どうか私に、愛を注いで。



【愛を注いで】

11/21/2023, 11:12:52 AM


惰性で続けていたゲームを遮る、一つの通知。

タイルを追うスピードのまま、現れた文字を確認した。

日曜、昼から、二人きり。

送り主は、空色のアイコン。

思わず指が止まって、画面だけが世話しなく切り替わる。

これは、これは。

休日、予定、何もない。

もちろん? いや、嬉しいな?

沢山の言葉が、頭の中をぐるぐる、ぐるぐる。


あぁ、この時をずっと待っていた。

待っていたから、こそ。


ねぇ、誰か教えてよ。

私、どうすればいいの?



【どうすればいいの?】

11/1/2023, 1:04:22 AM


君さえ居ればいいと、そう決めた。

君が幸せでいられるのなら、他の全ては些末なこと。

君の何気ない明日のため、僕の全てを捧げると。

それが私の、一番の幸せだと。


そう決めた、筈なのに。


目まぐるしく動く視界の中、知らない筈の君の笑顔が浮かんで消えない。

ねぇ、その顔は誰に向けたものだったっけ。

本来なら、隣に、僕が。

そこには確かに、有限かつ微かな光があった筈で。


一粒の雫が、重力に逆らって離れてゆく。


本当に、本当にこれで良かった?


私は、僕は、幸せか?


あぁ、出来ることならもう一度、君と。



理想郷の完成まで、あと10cm。



【理想郷】

10/28/2023, 11:22:12 AM


暗がりの中で君は一人、蹲っていた。

無機質な部屋の隅を埋めるように、頭から毛布を被って何かを呟いて。

私はそっと荷物を下ろし、その隣一メートルの距離を開けて座り込む。

暗い部屋に、私達二人の呼吸音だけが響いていた。


君は時折、私の知らない過去に取り憑かれる。

その度に、私は君との間の確かな距離を見るのだ。

伸ばせば届きそうな掌を、私は掴むことができない。


縮まることのない一メートルを前に、今日ももどかしさを募らせて。

私はただ、唇を噛む。



【暗がりの中で】

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