暗がりの中で君は一人、蹲っていた。
無機質な部屋の隅を埋めるように、頭から毛布を被って何かを呟いて。
私はそっと荷物を下ろし、その隣一メートルの距離を開けて座り込む。
暗い部屋に、私達二人の呼吸音だけが響いていた。
君は時折、私の知らない過去に取り憑かれる。
その度に、私は君との間の確かな距離を見るのだ。
伸ばせば届きそうな掌を、私は掴むことができない。
縮まることのない一メートルを前に、今日ももどかしさを募らせて。
私はただ、唇を噛む。
【暗がりの中で】
10/28/2023, 11:22:12 AM