ねえ、私たちどうなるのかな
さあ?雲の上にでも着陸するんじゃない?あ、雲の"下"か。
ファンタジーの世界じゃないんだから。雲に着陸なんてできるわけないでしょう?だいたい雲の下って何なのよ。
今僕らはファンタジーの世界にいるようなもんじゃないか。花畑でピクニックしてたら、僕たち2人だけ急に世界が逆さまになってお空へ急降下だよ。
それもそうね。
山吹の空を見上げながら、空色のプールへ落ちていく。
冷たい雲を突き抜けて、見渡すかぎりの深い青。
下がる体温。薄くなる空気。
消えゆく意識の中で、感じるのはあなたの手の温もりだけ。
透き通った世界に、あなたとわたしだけ。
「wing」
苦しい
この暗闇が
この閉じた空間が
体を壁へ打ち付ける
ただ必死に
必死に光を目指して
パキッ
生温かったこの牢に
冷たい風が
光の粒子が
飛び込んでくる
ついに!
始まるんだ
この僕の
新しい人生が
さあ行こう!
より高く、遠くへ!
自由の翼と共に!
「記憶」
夕立
穂の上で煌めくのは
小さな水晶玉
兵どもが流したのは
喜びの汗か
あるいは
敗走の涙か
夕暮れ
透き通った結晶に血潮が流れ込む
宵の口
闇に染まる戦場ヶ原は
ススキの墓標のようである
「曖昧」
赤く染まる君の頬は、まるで血の通った真珠のように美しい。けれど、伸ばした僕の指先に触れる君の頬は固くて冷たい。僕の目には、こんなにも生き生きとした君が、はっきりと映っているのに。僕は、毎分毎秒君のことを考えているのに。
君の温度を感じることができるのは、いつになるのだろう。
僕は、鏡の世界の入り口で、その時を待ち続ける。
今頃あなたは眠りについているのだろうか。
コバルトブルーの絨毯に浮かぶ小さな島が闇に包まれていく。
あれからどれだけ経ったのだろう。光を絶やすことのないこの場所にいると、時間の感覚も無くなってしまう。漆黒のスクリーンに輝く青い星の模様の変化が、あなたの生きる時間をうかがう、唯一のてがかりだ。
あの夜、私はあなたではなく、故郷を選んだ。あなたは、従者が引く籠に乗せられて、光のトンネルの中に消えていく私に怒っていますか?優しいあなたはきっと怒ってなんていないのだろう。私の身を案じながら、いつものように竹林でせっせと働いているのかもしれない。
私はあなたのことが好きだ。愛している。けれど、この思いを言葉にして伝えることはできない。私はあなたからこんなにも遠く離れたところに来てしまったのだから。
決してあなたに愛想を尽かしたわけじゃない。月に生まれた私の老いを知らない体は、いつか老いるあなたを不幸にしてしまうだろう。そうなるくらいなら、私は消えてしまった方が良かった。
言葉で、私の口から伝えることはできない。過ごす時間も、空間も、生きる星の名前さえ変わってしまった。けれど私の、あなたへの愛は変わらない。
せめて、この私の想いだけは、どうか伝わってくれないだろうか。 10万里離れたこの場所から、あなたが眠りにつく前に。
「竹取物語 -another」
月の自転と公転の周期が同じであるため、月の模様は変化しないそうです。月の裏側はどんな模様をしてるのでしょうか。想像するだけでワクワクしますね。