0°C

Open App


今頃あなたは眠りについているのだろうか。
コバルトブルーの絨毯に浮かぶ小さな島が闇に包まれていく。


あれからどれだけ経ったのだろう。光を絶やすことのないこの場所にいると、時間の感覚も無くなってしまう。漆黒のスクリーンに輝く青い星の模様の変化が、あなたの生きる時間をうかがう、唯一のてがかりだ。

あの夜、私はあなたではなく、故郷を選んだ。あなたは、従者が引く籠に乗せられて、光のトンネルの中に消えていく私に怒っていますか?優しいあなたはきっと怒ってなんていないのだろう。私の身を案じながら、いつものように竹林でせっせと働いているのかもしれない。

私はあなたのことが好きだ。愛している。けれど、この思いを言葉にして伝えることはできない。私はあなたからこんなにも遠く離れたところに来てしまったのだから。

決してあなたに愛想を尽かしたわけじゃない。月に生まれた私の老いを知らない体は、いつか老いるあなたを不幸にしてしまうだろう。そうなるくらいなら、私は消えてしまった方が良かった。

言葉で、私の口から伝えることはできない。過ごす時間も、空間も、生きる星の名前さえ変わってしまった。けれど私の、あなたへの愛は変わらない。



せめて、この私の想いだけは、どうか伝わってくれないだろうか。 10万里離れたこの場所から、あなたが眠りにつく前に。


「竹取物語 -another」




月の自転と公転の周期が同じであるため、月の模様は変化しないそうです。月の裏側はどんな模様をしてるのでしょうか。想像するだけでワクワクしますね。

11/2/2023, 12:24:05 PM