憂一

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4/19/2024, 11:04:40 PM

『もしも未来を見れるなら』

もしも未来を見れるなら。
そう思っていたら、本当に未来が見えるようになった。15秒先までだけど。
意識して見ようとして見れるわけではなくて、学校の廊下で転びそうになった時とか、通学路の交差点で人とぶつかりそうになった時とか、体が傷つく前に見える法則があるみたい。

だけど、この前、1度だけこの法則に合わない時に未来が見えた。
定期テストで満点を取って、お母さんに「いい子だね」って言われた時。
あの時はなんで未来が見えたんだろう。

4/18/2024, 9:37:53 PM

『無色の世界』

老人はとうとう色の区別がつかなくなってしまった。
齢七十を過ぎた頃から、目に映るすべてのものが彩度を失いつつあった。それが全くのモノクロームになった。
医者にかかっても症例がないと言われ、ただ世界が色を失うことを受け入れることだけしかできなかった。

老人は画家であった。彼の住む島に生い茂る杉を、墨の濃淡で描くことに生涯を捧げていた。
今、彼の目に映る世界はまさにそのキャンバスと同じようになった。
それと同時に、彼はキャンバスに向かうことをやめてしまった。
老人の息子がある日尋ねた。

「父さんはどうして絵を描くのをやめちゃったんだい?」
「何を描いてもただ写実になっちまうからさ。」

4/16/2024, 10:56:31 PM

『夢見る心』

少しでも多くの人々を楽しませたいと夢見て、ゲーム会社に入った。
プロジェクトマネージャーという、スケジュールを管理したり、予算を管理したり、クリエイティブを支える職に就いた。
ゲーム作りに携わる夢は叶えられたけれど、いつからか自分の弱さにばかり目がいくようになった。
形あるものを作る力を持つ人々の中で、形あるものを作ることが出来ない自分と、毎日向き合い続けなければならない。
「少しでも多くの人々を楽しませたい」という夢を持っていたことなど忘れてしまっていた。
人を楽しませるという利他的な動機は嘘だったのか。
それは違うような気もする。
人を楽しませたいという気持ちも本当だ。
それでも、自分を認めてもらえなければ、活力をどんどん失ってしまう。

自分をどのように肯定すればいいのだろうか。

4/10/2024, 12:13:17 AM

『誰よりも、ずっと』

誰よりも、ずっと、考えている。
言葉の意味と、響きと、リズムと、ビジュアルを。
すべてを同時に満たすとき、初めて文章は成立する。
そんなことはなくて、どれかしらを大事にして、その代わりに他のものは少し見捨てられる。
それで良くて、むしろ、だからこそ、言葉にその人の癖というものが見えるのだ。

4/4/2024, 12:45:32 AM

『1つだけ』

「1つだけ、どんな願い事でも叶うなら、どんなお願いする?」
他愛のない、誰もが一度は聞いたことがある質問。
「どんな願い事も叶える力をもらう!」なんて答えてしまう人は、興ざめだ。
在り来りだし、それ以上会話が広がらない。
広がったとしても「そんなのずるいよ」「いいじゃん別に」といった具合だろう。
こういう時、どんな内容であれ、個別具体的なことを答えるようにしたいと思うし、そう答えてくれる人と関わっていたい。
それが、本当に願っていることでなくても、だ。
「最近、胃の調子が悪いから太田胃散もらいたいな」でもいいし、「毎日同じ電車に乗っている、英単語を必死に覚えている高校生の苦労が報われてほしい」でもいい。
私の目から見えている世界と、その人の目から見えている世界を、ただ共有したいのだ。

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