いかないでと、願ったのに。
あの人にまだ行かないでと言えなかった。
あの子にまだ逝かないでなんて言えなかった。
「いかないで」という言葉が、どれだけ相手を縛り付けるのか分からない。
でも、きっと私がそんなことを言ったらダメだから、あの人もあの子も、優しいから。
限界まで自分を追い込んでしまう人だから。
だから、いかないでと、願ったのに___。
今日も息をする。
生きるため、死なないため、体に酸素を巡らせる。
いっそのこと止まって仕舞えば良いのに。
何が辛いとか、何が嫌とかじゃないんだ。
ただ、ここに居るのが違和感なんだ。
友達と笑って過ごしている時もどこか虚しさを感じる。まるで自分だけがこの世界の一員ではないような気持ちに襲われて、心臓の鼓動が痛い。
今日も死んでみたいと思う。
そしたら誰かが悲しんでくれるかな?
誰かが悲しんでくれるなら、僕はこの世界の一員と呼べるのだろう。
そして今日も息をする。
そして、今日も窓枠に足をかける。
俺が5歳。貴方が30歳の時、俺は貴方に恋をした。
キレイで強くてどこか儚い雰囲気を纏った貴方に、子供ながらに強く惹かれたのを覚えている。
それは俺が成長しても変わる事はなかった。むしろ俺の炎は燃えていくばかりだった。
5歳、10歳、18歳__50歳。俺はまだ貴方が好きだ。
何回も口説いたさ。でも、
「こんな歳の離れた奴なんかダメだよ。」
なんて、いつまで子供扱いするの?
俺の告白を聞かないまま、貴方は今死を目の前にしている。なぁ、お姉さん。一回で良いんだ。だから、
そんな願いも虚しく、貴方は息を引き取った。
俺の炎が、焔に変わり激しく燃えた。
お姉さん、俺がそっち行ったら覚悟してて下さいね。
ねぇ、楽しい? 分からない。
ねぇ、死にたい? 死にたくない。
ねぇ、辛い? 多分違う。
ねぇ、何がしたい? 何もしたくない。
頭の中が自分自身の弱さで埋め尽くされる。
それを否定するかのように曖昧な考えがグルグルと廻る。
私はどうしたい?
親や友達にも恵まれて、食べるものがあって、寝る場所があって、決して裕福ではないけれど幸せで。
それなのに、なんで心が何かを訴えるの?
喜べる。怒れる。泣ける。笑える。
私は何が不満なの?
ねぇ、誰か。この心を教えてよ。
無人島に行くならば、僕はなにも持って行かない。
都会でも田舎でもない。人とも会わない。
きっとそこで死にゆくだけなら、無駄な足掻きはしたくない。
何かを考えるのではなく、ただ疲れた体を寝そべらせ、空を眺め、波音に耳を澄ませたい。
そしていつか「寂しい」と思えた瞬間が、無人島に行く理由だろう。
いつか、いつか僕にその瞬間が来るのなら、僕は無人島で死んでも構わない。
人に疲れた僕は無人島で人が恋しいと思いたい。
そう思えたなら、僕はこの世に悔いなく死んでゆく。