肌寒くなって、君のくれた手袋をつけた。
君は僕のあげたマフラーに顔を埋めて、あったかいって笑う。そんな顔が可愛かった。
赤くなった指先を僕の手に絡める。
僕の手は君の手より冷たかったらしくて、11月の誕生日に君は手袋をプレゼントしてくれた。
君のマフラーと僕の手袋。ずっとそれが見られると思っていたのに。
君は僕を振った。他に好きな人が出来たんだって。
しょうがないよね。もう好きじゃないんだから。
君は一ヶ月後に違うマフラーをつけていた。
横には僕よりもカッコいい人がいて、楽しそうに笑ってる。
僕の手袋は、まだ変わらないままなのに。
愛する、それ故に理解がない。
ある女は言った「私はこんなに愛しているのに」
ある男は言った「愛してるからこそ」
皆は愛し愛されることに重点を置く。
それ故に、相手を理解するということが疎かになる。
人は愛を求める。「愛」と「理解」は交わることがない。
愛しているから理解しようとする。
そう思う人は多いが、結局はそれも自分よがりの考えだ。「愛しているのになんで…」「愛してるからこそ俺は…」
所詮は他人。愛することはできても、理解はできない。
その歪さが、美しいのかもしれないがな。
教室。先生の問いに対して皆が静まり返る。
静寂の中心で、1人だけが静かに手を挙げた。
そして見事に正解を言い当ててみせた。
そんな人に、いつか僕もなってみたい。
張り詰める空気に潰されない。
誰もが責任を押し付け合う中、誰に流されるでもなく自身を信じ、自ら発言できるようなカッコいい人間に、なってみたい。
そう願ったところで僕の芯は変わらない。
変わろうとしない。
静寂の中心でスッと手を上げるあの人を眺め、静寂であることに努める。
そんなくだらない人間であること。
だけど、どうせ皆んなも同類だろうから。
紅葉は燃えるように赤くて綺麗だ。
だから紅葉狩りというものが存在する。
人は美しいものに囚われる。だけど美しく無くなってしまえばお終いだ。
人々を感動させた紅葉でさえ、燃え尽きて地面へ落ちてしまえば邪魔だと言われる。
誰もが羨ましがるあの人だって、落ちぶれてしまえば誰も見向きなんてしないでしょ?
人は今1番燃えているものが好きだ。
それはたった一瞬でも。暖かさを求めるように燃えている葉へと飛びつく。
燃え尽きれば次の葉を探す。
葉に火をつけるのは、暖かさに飢えた獣だというのに。
いつも通りの月明かりが暗い部屋を照らす。
貴方のいない部屋はやけにキレイで、それでいて寂しげだった。
貴方に別れを告げた今日の夜。
部屋に入ってベットに沈んだ。
暗い部屋には窓からの冷たい風と、静かな月光だけが流れ込む。
本気で好きだったの。私が浮気相手だって知る時までは。
昼間のデートなんてしたことなかったのに、横にいる女の子とはするんだ。なに?その笑顔。
私じゃダメだったんだね。
後悔なんてしていない。
ただ、貴方のいない夜が冷たくてキレイだっただけ。