君の瞳の色はミッドナイトブルーだね。
そうほろ酔いの君に言うとポヤポヤとした顔で「どんな色?」と尋ねられた。
日本名で言うと濃紺になるのだろうか。真夜中の星もないような暗い色。
ハイライトもなく、吸い込まれそうになる君の瞳にぴったりの名前だ。
希望を失ってしまったような、それでも誰かを静かに受け入れてくれる優しさを持っている色。
君の瞳に星が輝くのはいつなんだろう。
まあ、僕には関係ない。体だけ、一夜だけの関係。
君とお酒を飲んでも、ミッドナイトブルーの空と君の瞳にまだ星はない。
ロマンチックにはなれない一夜の関係。
君にいつか星をくれる人が現れますように。
そう唇を落とし、ベットに2人で身を委ねた。
片思いのまま終わった私の恋。
好き過ぎて苦しいほどにあの人が大好きだった。
クラスではあまり目立たないメガネのあの人。でもね、メガネの奥に見える切長な綺麗な目に毎日見惚れていたのを覚えている。
結局卒業まで想いを伝えられず終わってしまった。
いや、伝えようとはしたんだ。だけど、卒業式後に見た彼の横顔、綺麗な目から流れた涙に言葉を飲み込んでしまった。
後悔していない。と言えば嘘になるけど、なぜだか胸が高鳴っていた。
あの人が好きだから。
今も次の恋に進めないほど好きなのが少しだけ苦しい。
けど、きっと、私はあの人のことを忘れられない。
なぜ泣くの?
無邪気なあなたは私にそう言った。
悲しいの?どこか痛いの?
震えている今にも泣きそうな声で心配してくれた。
「大丈夫だよ。」笑ってそう答えられたら良かったのに。
出てきたのはそんな言葉じゃなかった。
「アンタのせいよ!!」
醜い私は、あなたを傷つける言葉を放つ。
あなたは悪くないのに、ごめんなさいって謝った。
違う、違うの。ごめんなさい。私が悪いの。
今更どうしようもないのに、小さなあなたに縋ってね。こんな醜い大人にはならないでね。
どんどん溢れて止まらない涙が邪魔だった。
そしたらあなたはまた尋ねたね。なぜ泣くの?
もう疲れたから。
育児に疲れた私には、どうすることもできなかった。
ごめんね。ダメな母親で。
何も見えない真っ暗闇の中。
僕は君を目指して走り続ける。
いつか、君に追いつくため。今は辺りも見えないくらいどん底にいる僕だけど、君の足音だけを追いかける。
小さくなっていく君の足音を聞けなくなるその前に、君に追いついてみせるよ。
だから、少しだけ僕に時間をくれ。
あの幼い頃みたいに、君の隣を歩くから。
その時まで、
君が見た景色はどんなだったのかな。
どんな色で、どんな輝きで、どんな物に見えていたのだろう。
僕と君で見たあの花火。キレイだったはずなのに、君は今にも泣きそうな顔をした。花火ではない何かを見ているような。
僕と同じ花火を見ていたはずなのに、君だけの何かを感じている様で少し寂しかった。
でも、君に聞くことなんてできなかった。
そこに踏み込んでしまえば、君は壊れてしまう気がした。
君が見た、感じた、その景色。
僕はいつかわかる日が来るのかな。
君の目から涙が溢れるその前に、君の見た景色を感じたい。
だから、まだ、もう少しだけ、
君の目に映るその景色を見させてほしい。