頑張った時に、お父さんに「頑張ったから褒めて!」って言った事がある。
そしたら『本当に頑張った人は自分で頑張ったなんて言わない。他人が頑張ったねって言うんだよ。』なんて言われた。
そこから"頑張った"って言えなくなった。
その代わり、"頑張ったね"って言われるようにいろんな事をした。
いっぱい勉強をして、皆んなが羨むくらいのいい点をとった。
生徒会とか実行委員とかにも入ってみたりした。
家に帰ってからも家事をして、お母さんとお父さんに休んでもらった。
それでも、認めてもらえなかった。
「おー。これからもよろしくな。」だって。怒りが湧いた。でも、悲しくって何も言えなかった。
言葉にならないものが湧き上がって来た。
泣きたいのか怒りたいのかも分からなかった。
それでも、私はまだ頑張ってないから、もっといっぱい認められるまでやらなきゃいけない。
ずっと。
俺の真夏の楽しみといえば甲子園。
毎年テレビの前で映画を観るときくらい音を大きくする。
でも、今年は思いとどまった。
去年、ばあちゃんが甲子園を観るのを怖がっていたから。
その時だけは、甲子園の点いているテレビを消してばあちゃんの話を聞いた。
どうやら、甲子園のサイレンは空襲の音に似ているらしい。今年89歳のばあちゃんは空襲に遭い弟を亡くしている。
そんな悲しい記憶や怖い記憶を思い出させたくない。
だから俺は今年、テレビに甲子園を映すことはなかった。
本当は観たいけど、今はそれより大切な事がある。
いつもより少し味気ない真夏。
それでも、ばあちゃんの真夏の記憶は俺の心に刻まれている。
俺の手から沢山のアイスクリームがこぼれた。
運が悪くってさ、その場に警察がいたんだ。
普通に職質くらって、その場で逮捕。
俺はその時点で大分アイスクリームに脳が侵されてたんだ。
五感が正常に機能しなくなってた。幻覚もあって、逮捕される時は警察官に暴力もしたらしい。
最初はほんの出来心だったのに。
ちょっとでやめるはずだったのに。
俺ってバカだなぁ。
今だって後遺症に悩まされてる。少しボーッとするとアイスクリームを求めている。
もう、こんな人生やめにしたい。終わらせてくれ。
来世はもう、アイスクリーム…薬物には手を出さないよ。
だから、来世に期待してサヨウナラだ。
俺は宙に浮いてもがき、そのまま意識を失った。
やさしさって何ですか?
「頑張って」って言ったら「もう頑張ってる」
「頑張ったね」って言ったら「何が分かるの?」
励まそうとしてもダメ、共感しようとしてもダメ。
全部が偽善と見られてしまう。
決めつける前に、少しくらいこっちを見てくれませんか?
声を掛けても、そばに居ても、全部突っぱねられてしまうじゃないですか。
だから分からないんです。
やさしさって何ですか。助けるって何ですか。
偽善って何ですか。真善って何ですか。
やさしさなんて、私には分かりません。
だから、私じゃない誰かに求めてください。
私のやさしさなんて、要らないんでしょうから。
四季折々の風。
季節が変わるごとに感じる風は違う。
春のやわらかで暖かい風。夏の暑くも爽やかな風。
秋の少しずつ涼やかになっていく風。冬の冷たくて肺が凍りそうな風。
全部大好きだ。
少し早い時間に登校して、ゆっくりと自転車を漕ぎながら感じる風。霧の深いこの街。
すぅ、と息を吸い込めば肺になじみ、身体を任せれば肌に馴染む。
まるで、自分の孤独を埋めるように。
足りない部分を補ってくれる。どこにでも現れる相棒。誰にでも寄り添う、優しい奴。
でもさ、時には俺にだけ寄り添ってくれる風が欲しくなる。
まぁ、そんな奴、俺にはいないんだけど。