足が冷たい、と家に居ても、学校にいても感じる。何重にも着重ねた靴下、インナー、そしてガンガンの暖房。冷え症の自分にはとてもじゃないが耐えられない。
それでも真夜中の寒い間、私の将来の先行投資と思ってこの寒さを耐えよう、
そう心に決めた。残り約一週間前。
暖かい春が来ると信じて…と。
4月9日
高校生になったばかりの私は新しいブレザーにとても心躍らせた。これが理由でこの高校に通う事を決めたくらいだ。特にこのリボン。赤いラインが1つある黒いリボンがとても可愛いのだ。
「あれ?」
最初は結ぶのが難しかった。リボン結びをするだけ。それだけだ。なのに靴紐のように簡単ではない。
「何してんのよ」それでしばらくは母に手伝ってもらった。
「鏡をみなさいよ、まずは…」
できない私を見兼ねて、母が教えてくれた。それがまたしばらく続いた。
「…っよし、できた。」
形は綺麗ではないができるようになった。
「よし!」
自分でも綺麗に結べるようになった頃はもう一年の秋だった。それが三年間続いた。
3月9日
卒業式の日。リボンを結ぶ最後の日。少し寂しさを覚えた。でも、いつも通り綺麗に結んだ。小さいけど、これは私がこの3年間で成長した1つだと思って。
「お母さん!行くよ!」
「はいはい……」じっと見てくるお母さん。
「…何?」
「綺麗に結べるようになったわね。不器用なアンタにしては」
「…でしょ?」
部屋の隅にある、こぢんまりしたスノードーム。
その中には華やかなクリスマスツリーが一つ。
そして、振れば雪が降ってくる。
そんなプレゼントを貴方から貰った。
それが手から溢れるくらいの暖かさで胸がいっぱい。
だから、今はもうちょっとだけこの幸せを感じていたい。そう思ってしまった夜12時の私のワガママを許してほしい。
私には幼馴染の男の子がいる。
何考えてるのかよく分かんないそんな奴。いつも少し冷めたような感じなのに、何故か私のことをいつも分かってくれるそんな奴。
そして、どこか美的センスがあるそんな奴。
私は今日、そんな奴にさよならを言いに来た。
引っ越すことになったから。十何年、家が近所で一緒にいたのに、さようなら言わないのは冷たいでしょ?
「じゃあ、またね!」と笑顔で最後、締めくくってやる。アイツ、どんな顔してるんだろ。そう思って顔を向けた。
なんちゅう顔、してんのよ。今までそんな泣きそうな顔したことなかったのに。
お互いの家族とご飯食べたり、派手に遊んで怒られたり、キャンプで私がアイツと2人で山の中で迷子になったり、いろいろあった。これは私の大事な宝物。
だから…
これからの時間も本当は、手放したくないんだけどなぁ……。
「手放した時間」
〜「紅の記憶」より〜
僕は秋が好きだ。何故だか分からないが。
僕にはお幼馴染の女の子がいる。
色白でよく笑い、笑うと少し右の方にえくぼができる。好奇心旺盛で無邪気。長い間、付き合ってきてお幼馴染のことは小さなことでもなんとなく分かるようになった。
そんなお馴染みが今度引っ越す。
引越し前日、僕たちは小さい頃から遊んでいた公園に行った。
「じゃあ、またね!」
最後まで泣かなかったお馴染み。その時、風が吹いた。あぁ、そうか。だから僕は秋が好きなのか。
僕の目には頬が赤くなり、満面の笑みで僕を見るお馴染みと紅葉にずっと魅せられていたからだと。