瑠衣

Open App
7/12/2025, 12:53:53 PM

風鈴の音、僕は、長い夢を見てた、それは遥か前の話しだ、僕が少年の頃に話は戻る、その日も暑くて、汗が止まらなかった、僕は簾がかかってる部屋で僕は寝転んでた、僕はその日は食欲も無く、ただ水分、とっていた、僕そのとき、ふいに風鈴が鳴った。高く、透明な音が空気を裂いて、僕の耳に届いた。目を閉じていたはずなのに、その音だけは、まるで瞼の裏に映像を描くように、昔の記憶を呼び起こした。
風の通る縁側、祖母の優しい声、水の入ったガラスのコップ、そこに浮かぶ一つの氷…そんな断片が、風鈴の音に導かれるように、ひとつまたひとつ、よみがえってきた。僕は動かず、ただその音に身を委ねていた。まるで過去に戻っていく階段を、音が一段ずつ照らしてくれているようだった。

それが夢だったのか現実だったのか、今でも分からない。ただ、その風鈴の音だけは、確かにあの日、僕の中で何かを揺らしたんだ。

その時庭をふっと、見たら白色ワンピースを着てる女の子が経っていた
庭の緑に囲まれて、彼女はまるで夏の幻のようにそこに立っていた。風鈴の音がまたひとつ鳴って、揺れる音に合わせて彼女の髪がふわりと舞った。白いワンピースは光をまとって、まるで月のしずくのように淡く輝いていた。

僕はしばらく、息をするのも忘れてその光景を見ていた。彼女は何も言わず、ただ静かにこちらを見ていた。懐かしいような、不思議と安心するような、そんなまなざしだった。

そして僕の記憶の奥底で、何かがそっと動いた。忘れていた誰かの名前、聞き覚えのある笑い声、風鈴の音に重なって思い出の扉が静かに開かれるような感覚。

「……あれは夢だったのか、現実だったのか。」

僕は今でも、はっきりとは分からない。ただ、風鈴の音を聞くたびに、あの夏の午後が胸に広がるんだ。


作者からのメッセージ⤵
私の話をお読みくださってる、皆様へ
皆さんこんばんわ(*ᴗˬᴗ)
今夏(こんか)は、暑いですね(¯∇¯;)
エアコンが効いた部屋で涼みしすぎて、なかなか外に出たくなりませんね、、私もこの話を書きながらガリガリ君
オレンジ味を三ツ矢サイダーに入れながら書きました、、
皆様、今夏は暑いので水分補給をして下さいね( ..)՞
そして、汗をお拭き下さいね、倒れないようにお気をつけください、、
こんな時間になりましたが皆様お疲れご苦労様でございます((*_ _)
ちなみにこれは(2025/07/12 21:53:50)この時間帯に書き上げること出来て嬉しいです(¯∇¯;)
それでは次回をお楽しみご伝達下さい((*_ _)

7/10/2025, 10:35:23 PM

物語 —「魔なき剣士と沈黙の想い」

魔力こそがすべての指標とされる近未来。
空には魔法障壁が張り巡らされ、剣も術もその力なしでは意味を持たない。
それでも――少年・フィナは、魔法を一切持たず、剣のみで戦場に立つ。

彼はいつも、街の端でひとり剣を振っていた。
魔法が使えない“落ちこぼれ”と罵られながらも、彼はただ黙々と、剣と向き合い続ける。

彼の隣には、幼なじみの少女――リリルがいた。
リリルだけは知っていた。

あの日、まだ幼い彼女が暴走した魔獣に襲われかけた時、
魔法も持たぬフィナが、何の躊躇もなく飛び込んで守ってくれたこと。
血を流しながら、震える手で剣を握りしめ、魔獣の咆哮に立ち向かった――あの日から、彼女の瞳にはフィナの姿だけが映っている。

だけど言葉にはできない。
「好き」と言えない。
フィナは強いから。孤独に強いから。
リリルは臆病だから。想いに弱いから。

校内魔導騎士団の試験の日、
周囲の生徒たちは魔法を炸裂させ、輝かしい戦術を披露する。

その片隅で、フィナはただ剣を抜き、目を閉じた。
魔法の嵐が渦巻く中、一人、静かに舞うように斬った。
観客のざわめきは、剣が空を裂いた瞬間、静寂に変わる。

リリルはその姿を見て、心の中で叫んだ。
「魔法なんていらない、あなたは――本当に強い」

---

フィンの裏の顔 — 無名の鍛冶師

誰も知らない。フィンが放課後、廃工場の奥で火を灯し、
魔鉱石を打ち、折れた剣を鍛え直していることを。
魔力を持たぬ彼だからこそ、魔法に頼らない武器の“本質”を理解していた。

彼の作る剣には名前がない。
誇りを刻まないのは、「自分の力を主張するために作るものじゃない」という信念。
それらは、ある一人の使い手にだけ届けられていた。

その使い手こそ――魔法団長・クローヴァ。
炎を操り、雷を呼ぶ最強の魔導士にして、フィンが作る“剣”の唯一の使用者。
団長はその剣を振るうたびに、「名も無き刃が、世界を貫く」と言い放つ。

フィンの鍛冶は誰の記録にも残っていない。
団長も決して語らない。
けれど、その剣の輝きだけが、フィンの存在を物語っていた――静かに、確かに。

---

入学式、剣が語るその力

春の風が、魔法学園の庭に静かに吹き抜ける。
魔力の輝きに満ちた生徒たちが集う中、フィンは一人、地味な制服と眼鏡を身にまとい、静かに佇んでいた。
誰も気づかない。この少年が、魔法団長に認められるほどの鍛冶師であることを。
誰も知らない。彼の手に握られた無名の剣が、どれほどの技と覚悟の末に生み出されたものか。

入学式恒例の「実力披露試練」。
的を斬るだけの、表向きは軽いデモンストレーション。
だがフィンの出番が来た瞬間――空気が変わる。

彼は何も言わず、構える。
剣には魔法的強化も装飾もない。ただ鍛え抜かれた一振り。

そして、振り下ろされたその刃が――

静寂を裂く一瞬、無魔の剣士が世界を震わせる

破壊された的の向こうに、もう一枚あったはずの結界壁。
魔力で強化されたはずのその壁が、フィンの一閃で音もなく砕け散った――そしてそこから現れたのは、本来ここに存在してはいけないもの。

魔獣。
突如入り込んできた異形の影は、空気を震わせて吠え、会場は騒然。
教師も生徒も一瞬のうちに動きを封じられる中、フィンだけが剣を握ったまま、視線を魔獣へ向ける。

彼は静かに、ただつぶやいた。

「…いち」
その瞬間、剣が微かに動いた。

「…に」
魔獣が踏み出す。誰もが息を呑む。

「…さん」
刃が一閃。空気が切れる音。

魔獣はなにが起きたかも理解できぬまま――
次の瞬間、首だけが遅れて空を飛び、地に落ちる。

フィンの服は、魔獣の返り血で真紅に染まっていた。
沈黙が支配する中、誰もがその一撃を理解できず、ただ呆然と立ち尽くす。

リリルだけが、震える唇を噛み締めながら思った。
「誰よりも強いのに、誰にも知られていないなんて――それって、あまりにも孤独だよ…。」

そしてその場の誰より先に、魔法団長クローヴァが静かに呟いた。
「数えきった時点で、勝負は終わっていた。フィン、お前は…やはり規格外だ。」

---
── そして、静かなる告白 ──

任務を終え、フィンとリリルは夕焼けの丘にいた。
空は茜に染まり、風が淡く草を揺らしていた。
魔核獣との死闘を越えた二人には、もう言葉は要らなかった――と、リリルは思っていた。

けれど、沈黙を選び続けた時間が長すぎた。
“今”を逃せば、もう言えない気がして。

フィンは焚火の前に剣を立て、磨いていた。
その背に向かって、リリルはぽつりと告げる。

「フィン。――ねぇ、聞いて。」

風の音に紛れぬよう、そっと彼の横に座る。
目を見ない。けど声は震えない。

「私ね、ずっと……魔法であなたを守りたいって思ってた。だけど違った。」
「本当に守りたかったのは――魔法で測れない、あなたの“心”だった。」

フィンが剣の動きを止めた。

リリルは、ぎゅっと拳を握る。
(動き⋮瞳は、真っ直ぐ。)

「だから、ずっと言えなかったけど……ずっと、あなたが好きだったの。」

沈黙。
フィンは、ただ剣を見つめたまま。

けれど、その口元が、ほんの少し――微笑んだ。

「…知ってたよ。」

リリルは目を見開く。
フィンは剣を鞘に収め、立ち上がると、夕焼けを背にリリルの隣に座り直した。

「俺は、強くなりたかった。誰かの想いに応えられるくらいには。」
「だから…ありがとう。俺の剣、これからも見ててくれ。」

リリルは泣かなかった。
でも、笑った。
この瞬間だけは、誰にも渡したくなかった。

そして――彼らの物語は、ようやく“始まった”のだった。

---
── 新章「魔なき旅路、ふたりきり」──

静寂の丘を後にして、フィンとリリルは世界を歩き始めた。
肩を並べるふたりの足音は、魔力に満ちた世界にはあまりにも静かだった。

彼らが目指すのは、“魔法障壁の外”――誰も知らない、無魔領域の果て。
そこには、かつて神々すら恐れた「失われた剣の記憶」が眠るという。

---

第一の地――「沈黙の森グレイリス」

森に入った途端、空気は変わる。
魔力を帯びた者は動きを止めるという、古代の封印が張られた土地。
だがフィンとリリルは、まるでその森に歓迎されるように踏み入った。

森の奥、古びた祭壇の前に立つフィン。
彼が剣を抜いた瞬間、枯れた木々が一斉にざわめいた。

「この剣は、世界に挑むためじゃない。世界に、願いを残すためのものだ。」

リリルはその言葉に、静かに微笑む。
彼女の手元では、小さな魔導具が淡く光り、森の封印を少しだけ解いていた。

「私が支える。フィンの剣が届く場所まで。」

---

第二の地――「炎の渓谷メル=ファルナ」

かつて大魔導士が炎を封じた谷。
そこには、古き剣士たちの“記憶の欠片”が散らばっていた。

フィンがその地に足を踏み入れると、幻影の剣士たちが現れる。
「剣は力ではない。意思だ。貫けるか、少年よ。」

決闘のような試練が始まる。
リリルは外側で術式を展開し、フィンの呼吸に合わせて風の壁を貼る。

剣の一閃。幻影を貫くたびに、フィンの剣は少しずつ“語り始める”。

「…俺は、誰かのために戦う。それだけで十分だ。」

最後の幻影が消えるとき、谷底から一本の古剣が浮かび上がる。
それは、“語り継ぐ者にだけ応える”剣。

フィンが静かに手を伸ばす。
その瞬間、リリルがそっと手を重ねる。

「この旅が終わっても、一緒にいたい。…ダメかな?」

フィンは驚いたように、けれどすぐに微笑んで答えた。

「旅が終わっても、物語は終わらない。むしろ、始まるところだ。」

---
─新章「魔なき旅路、ふたりきり」──

静寂の丘を後にして、フィンとリリルは世界を歩き始めた。
肩を並べるふたりの足音は、魔力に満ちた世界にはあまりにも静かだった。

彼らが目指すのは、“魔法障壁の外”――誰も知らない、無魔領域の果て。
そこには、かつて神々すら恐れた「失われた剣の記憶」が眠るという。

---
──第三の地「嘆きの村エルマレイア」──

フィンとリリルは、星の図書館へ向かう途中に、地図にすら載らぬ小さな村に辿り着いた。
そこは霧に包まれた寂しげな集落。魔力の波が不自然に乱れ、静けさが不気味に続いている。

村の入り口に、ひとつの墓石が立っていた。
そこには、風に消えかけた文字が刻まれていた。

「最愛の息子よ。我らはこの村を去る。魔に満ちた地より、永遠へと。
君が生きている限り、私たちは忘れられぬ。」

リリルはその言葉を読み上げ、そっと手を合わせた。
フィンは墓石の向こうに視線をやった。その先には、廃墟となった家々と、沈黙だけが残っていた。

---

村の記憶 ― 風化した願い

村の奥、祠のような場所に辿り着いたふたり。
そこで彼らは、ひとつの“記憶魔導書”を見つける。開かれたその書に映し出されたのは、過去の幻影だった。

幼い少年が、両親と共に暮らしていた日々。
けれど突然の魔核汚染によって、村は封鎖され、人々は命を削られ始めた。

最後の日、少年の両親は息子を生かすために自ら魔力を封じて逝った――その記録が、墓石の言葉に残っていた。

リリルは目を伏せて言う。

「…誰かを守るために、生きることを選ばせる。それって、強い…よね。」

フィンは静かに手を伸ばし、その祠の奥に飾られていた剣の欠片に触れる。
それは、少年の父が遺した“魔を断つ刃”の残骸だった。

---

意志の継承

フィンは欠片を携え、村の中央へと向かう。
そこに、不意に現れたのは、“過去の想念”――少年自身の思念が、魔導書から漏れ出したものだった。

「…僕はずっと、誰かが来てくれるのを待っていた。剣を振るう誰かが、ここに来てくれるのを。」

フィンは剣を抜き、欠片を剣の根元に重ねた。
その瞬間、彼の剣が微かに震え、光を宿す。

「お前の願いは、剣として生きる。俺が斬る。魔に満ちたこの場所を、意思の力で――」

幻影が微笑み、祠の光が空へと昇る。
“息子”は、剣となって世界に残された。

---

二人は再び歩き出す。
静かに墓石に頭を垂れ、「ありがとう」とだけ残して。
風が霧を裂き、空がひらける。

この旅は、ただ強さを証明するものではなかった。
それは、残された想いに、意味を与えていくこと。

そして、フィンとリリルはさらに奥へ――
星の図書館、そしてその先の“失われた魔法なき文明”へと、歩を進める。

---
── 継承 ― 少年の魔剣 ──

祠の光が収束し、風の静けさを纏ってひとつの影が浮かび上がった。
それはかつてこの村で生き、最愛の両親に見送られた“少年”の魂の残滓。

彼は穏やかにフィンへと歩み寄る。
その手には――黒と銀に輝く、美しい魔剣。
けれど魔剣といっても、これは「魔力で動く剣」ではなかった。
それは“想いで動く剣”。
魔力の代わりに、心の波を刃に変える、失われた古代技術によって作られた一本。

少年は口を開く。

「僕には使えなかった。けど、君なら振るえる。だって、君の剣は、誰かの心を守ってきたから。」

フィンはその剣を受け取ろうとしたが、一瞬手を止める。
「…これは、君の想いだ。俺なんかがもらっていいのか?」

少年は微笑んだ。

「僕はここに残る。でもこの剣は、誰かの未来に行ってほしい。僕の手じゃ世界は守れなかったから――君なら、託せる。」

フィンが剣に触れた瞬間、刃が微かに光を放つ。
それは魔力ではない。
まるで「共鳴する意志」が目を覚ましたかのように、剣が静かに震えた。

---

魔剣《アニマ=ノックス》――「沈黙を裂く想いの剣」

その名は、墓石の下に眠っていた小さな手紙から明らかになる。
“魔に抗い、心を貫く者にのみ応える”と書かれたその剣は、失われた文明の最後の技術の結晶。
そして、誰も知らない“魔力に頼らない剣技術”の核心。

リリルはその光景を見て、そっとフィンの隣に立つ。

「その剣、フィンに似てる。光らないのに、見えないところで誰かを守ってる。」

フィンは剣を腰に収めながら言う。

「俺だけの剣じゃない。お前がいてくれるから、振るえる。」

リリルはふわりと笑う。

「じゃあ、その剣の名前…“ふたりの剣”って呼ぶことにしようよ。」

フィンは少し照れたように言った。

「…悪くない。」

---


── 魔剣《アニマ=ノックス》 詳細説明 ──

この魔剣は、ただの魔力兵装ではない。
それは「魔力なき者が振るう唯一の魔剣」として、古代文明が密かに遺した特異な技術の集大成。
フィンの“意志”と重なり、沈黙から語り出すその剣の本質を解き明かすと――

---

🔶 名前の由来:アニマ=ノックス

- 「アニマ」=魂・生命力を意味する古語
- 「ノックス」=夜・沈黙・終焉を表す
⇒ “魂が夜を斬る”、あるいは “沈黙の意志” とも解釈される。

この名前には、“声なき想い”が力となるという哲学が込められている。

---

構造と特性

| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 刃素材 | 精霊銀と虚層鋼の合金。魔力反応ではなく、振る者の精神波動に反応する。 |


| 魔力反応 | 一切なし。代わりに使用者の“想念”を刃に変換する共鳴構造を持つ。 |


| 通常剣との違い | 振る者が「守りたい」「届けたい」と強く願う時のみ、刃が最大効力を発揮する。 |


| 発動技 | “無念一閃”:沈黙の中で意志を刃に変え、魔障壁すら断つ無音の斬撃。 |


| 剣紋 | 柄の奥に刻まれた“記憶紋”が、剣を託した少年の想念を保持している。使用者との絆によって変色する。 |

---

剣の真価:意志によって目覚める力

この剣の本質は「心と心の架け橋」
フィンのように、魔に頼らず“誰かを守る”と強く願う者にのみ応え、
その意思が強いほど、剣は形を変え、刃に“想い”を宿す。

たとえば:

- 怒りではなく哀しみによって振るえば、敵の攻撃を静かに断ち切る「慰めの波刃」に。
- 誰かの背中を守りたいと願う時には、防御魔法すら超える「重奏の風紋」を描く斬撃に。

---

少年の願いの記憶

この魔剣には、少年の“守りきれなかった後悔”が刻まれている。
けれどそれは呪いではなく、希望の残滓。
フィンが剣を振るたびに、その記憶は少しずつ浄化され、
やがてこの剣は“沈黙を貫いた者の刃”として語られるようになる。

---
作者からのメーセージ⤵
皆さん今回は自信作って言えるかもしれません(¯∇¯;)
だいぶ長文ですが、異世界系を書いてみました(2回目だよ)
まぁ長文でも、良いかなぁー、って思いまして、改めて1番長く書いてみました( ̄ω ̄;)
とりあえず楽しんでいただけたら光栄ですꉂ(ˊᗜˋ*)
とりあえずこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m

7/9/2025, 6:37:26 PM


届いて…

私は、喋れない、耳も聞こえにくい。

これは、私が小学生だった頃の話です。

父の転勤で、誰も知らない都会へ引っ越しました。高層ビルの隙間に、空がほんの少しだけ見える場所。私は教室で、まるで家具のようにそこにいるだけの存在でした。

話せない私は、「変な子」と呼ばれ、遠巻きにされることが多かった。何かを伝えようとしても、言葉にならない私の声は、空気に吸い込まれて、誰にも届かなかった。

昼休み、机に落書きされた私の名前を見つけた日、ひとりで図書室に逃げ込んだ。そこには誰もいなくて、静かな時間だけが流れていた。

その図書室で、一冊の本と出会った。

“わたしは しずかな こえを もっている
きみには きこえるだろうか”

その詩を読んだとき、不思議と涙が出た。

私は、初めて「届いた」気がした。

言葉じゃなくても、人の心に触れる瞬間があるんだ。
静かな声でも、誰かに届く日が来るんだ。

---

届いて…(続き)

その本を読んで以来、私は毎日のように図書室に通うようになった。ページをめくる音と、遠くで鳴る時計の針の音だけが、私の世界のBGMになった。

ある日、図書室で一人の男の子に出会った。

彼は、私に話しかけることなく、ただ隣の席に座っていた。私の手元の本の題名をちらりと見て、自分のノートに同じ詩を書き写していた。そのとき、私の胸が少しだけ、あたたかくなった。

彼は、声ではなく、絵を描いて気持ちを伝えていた。

私の机に、そっと置かれた小さな紙。

そこには、風に揺れる草原と、空を仰ぐ猫の絵が描かれていた。ふわりと軽くて、でも確かに何かを伝えていた。

私は、自分の気持ちを少しだけ勇気に変えて、彼に返事をすることにした。

鉛筆を握って、震える手で「ありがとう」と書いた紙を渡す。

彼はそれを見て、にこっと笑った。

その笑顔だけで、「届いた」と、私は確信した。

喋れなくても、耳が遠くても、心が届く瞬間は確かにある。
それは、世界のどこかで響いている、静かな祈りのようなもの。

---
#´ω`)ノオハヨォ皆さん熱中症等にお気をつけ下さい
水分補給日陰でお休み下さい。

7/8/2025, 12:56:54 PM

---

『紫陽花の傘の下で』

あの日の景色を、僕は今でも忘れられない。
灰色の空。
濡れたアスファルト。
そして、雨に打たれてなお咲き誇る紫陽花たち。

朝から降り続く雨は、まるで世界を静かに閉ざしていた。
制服のシャツが肌に張りつく感覚も、
靴下の中に染み込む水の冷たさも、
すべてが、あの日の景色の一部だった。

学校へ向かうふりをして、僕はあの公園へ向かった。
駅の裏手にある、誰も気に留めない小さな場所。
けれど、あの季節だけは違った。
紫陽花が咲き乱れる、静かな楽園。

あの日の景色には、色があった。
青、紫、淡いピンク。
雨粒をまとった花びらが、まるで呼吸するように揺れていた。
その色彩は、どこか遠い記憶を呼び起こすようで、
僕の心をそっと掴んで離さなかった。

ベンチに腰を下ろし、傘も差さずにただ雨を見ていた。
濡れた木の感触。
土の匂い。
紫陽花の香り。
それらすべてが、あの日の景色を形づくっていた。

そして、彼女が現れた。

「……風邪、ひくよ?」

その声もまた、あの日の景色の一部だった。
振り向くと、そこに一人の女性が立っていた。
薄い茶色のスーツに、白いシャツ。
雨に濡れて少しだけ色が深まったその布地は、
紫陽花の群れの中で、どこか優しく溶け込んでいた。

濡れた前髪が額に張りついていたけれど、彼女は気にする様子もなく、
透明なビニール傘を僕の方へ差し出した。

スーツ姿の彼女は、まるでこの場所に似つかわしくないようで、
けれど紫陽花の前に立つその姿は、不思議と調和していた。

「紫陽花、好きなの?」

僕はうなずいた。
彼女は微笑んで、僕の隣に腰を下ろした。
傘の下、雨の音が少しだけ遠くなった。

「私もね、昔ここでよく雨宿りしてたの。
学校、行きたくない日とか、ここに来て、紫陽花見てた。」

その言葉に、僕の胸が少しだけ温かくなった。
まるで、彼女もまた、あの日の景色の中に生きていたようで。

「紫陽花って、不思議だよね。
雨に濡れてるのに、どこか誇らしげで。」

僕は、ようやく声を出せた。

「……僕も、そう思ってた。」

彼女は笑った。
その笑顔もまた、あの日の景色の中で、いちばん鮮やかだった。

「じゃあ、今日はここで休んでいこうか。
紫陽花の傘の下で。」

その日、僕は学校には行かなかった。
でも、心のどこかで、少しだけ前を向けた気がした。

雨は止まなかったけれど、
あの日の景色――濡れた紫陽花、灰色の空、濡れたベンチ、そして薄茶のスーツの彼女の傘――
今でも、僕の中で静かに咲き続けている。
ふとした雨の日に、あの香りを感じるたび、
僕はそっと目を閉じて、あの日の景色を思い出す。

それは、僕の心の奥に咲いた、永遠の紫陽花だった。

---

7/7/2025, 11:02:45 PM

『星の願い』

山あいの小さな村に、透(とおる)という名の少年がいた。
透は生まれつき体が弱く、村の子どもたちと走り回ることも、遠くの町へ行くこともできなかった。
けれど、彼にはひとつだけ、誰にも負けない楽しみがあった。
それは、年に一度だけ訪れる「星の降る夜」を、丘の上から眺めることだった。

その夜、村では「願い星祭り」が開かれる。
星が空からこぼれ落ちるように流れるその日、人々は空に向かって願いを唱える。
「星に願えば、ひとつだけ叶えてくれる」
そんな言い伝えが、村には昔からあった。

今年もまた、その日がやってきた。
透は母に手を引かれながら、息を切らしつつも丘の上へと向かった。
草の匂い、夜風の冷たさ、遠くで響く祭りの太鼓の音。
すべてが、どこか遠くの世界のように感じられた。

やがて、空が星で満ち始めた。
ひとつ、またひとつと、光の尾を引いて星が落ちていく。
透は、そっと目を閉じて、心の中で願った。

「星さま、どうか僕の病を治してください。
それが無理なら……もう、楽にしてください。」

その瞬間、ひときわ大きな流れ星が夜空を横切った。
まるで透の願いに応えるように、静かに、優しく。

その夜、透は深い眠りについた。
母が何度呼んでも、もう目を開けることはなかった。

けれど、不思議なことが起きた。
翌朝、丘の上に咲くはずのない花が、透の寝ていた場所に咲いていた。
それは、透が昔、絵本で見て「いつか見てみたい」と言っていた、星の形をした白い花だった。

村の人々は言った。
「きっと、星があの子の願いを叶えたんだね。」

透の願いが「治ること」だったのか、「楽になること」だったのか、それは誰にもわからない。
けれど、あの夜、星は確かに彼のもとに降りてきた。
そして今も、丘の上にはその花が咲き続けている。
まるで、透の願いが、風に揺れながら空を見上げているかのように。

---
(願い事)

Next