🌻「夏の匂い」
あの年、八月の風は不思議と甘くて、空の色もどこか透明だった。駅前の坂道を自転車で下っていた僕は、不意に立ち止まった。風に乗って届いたのは、線香花火と汗と、どこか懐かしい洗剤の香り——そう、それが「夏の匂い」だった。
その匂いの向こうに彼女がいた。セーラー服の少女。白い襟に夏の陽が反射して、君はなぜか目を逸らせなかった。
「暑いね」
そう言った彼女の声が、あまりにまっすぐで、僕の心に残った。
作り直しました!( ´ㅁ` ;)
あとこの場を借りて自己紹介します!
私の名前は鳳羅です!
読み方はふうらいです
基本呑気に投稿するので<(_ _)>よろしくお願いします
このアプリはたまたま物語だけをあげたいな…って思って調べたら出てきたのでまだふつつか者ですか<(_ _)>よろしくお願いします
「あの夏、川辺で君に出会った」
白いカーテンがゆらゆらと風に揺れている。
今もなお、あの夏の陽ざしと君の笑顔が、
僕の中に焼きついて離れない。
それは、遠い夏の日だった。
僕は田舎のおばあちゃん家へ、一人で向かった。
列車に揺られて辿りついた村には、セミの声と土の匂いが満ちていた。
その日も、うだるような暑さだった。
Tシャツはすぐに汗でぐっしょりになり、
僕は川のせせらぎに誘われるように森の奥へ足を運んだ。
そこで出会ったのが――君だった。
透きとおる川で無邪気に遊ぶ、その姿はまるで夏の精のようで。
水しぶきをあげて笑う声に、僕の鼓動が跳ねた。
気づけば、僕の目は君に釘付けだった。
その日から毎日、僕は川へ通った。
何を話したか、どんなことを一緒にしたか――
些細な一つひとつが、今では宝物だ。
でも夏は、いつまでも続かない。
蝉の声が遠のき、稲穂が黄金に変わった頃、
僕は町へ戻る日がきてしまった。
最後の日、君は何も言わずに、
ただ笑って、冷たい水に手を浸していたね。
僕は今でも、青い夏の日を思い出す。
白いカーテンが揺れるたび、
あの日の風が、心に吹き抜ける。
『青く、深く』
あの日、彼女は海に呼ばれた。
町外れの崖の上から、遥か下に広がる海を眺めるたび、藍色の波がそっと心を撫でるのを感じていた。幼いころに失った記憶の断片が、その青さの中に眠っている気がしてならなかった。
「青く、深く——」彼女はつぶやく。「なぜこの言葉が胸から離れないの?」
祖母の残した手紙にはこう記されていた。
> “海の底には、まだ語られぬ約束がある。”
その一文を頼りに、彼女は小舟で夜の海へ漕ぎ出した。月明かりに照らされた波間は、まるで別世界のように静まり返っていた。
やがて、舟の下からぼんやりと光が浮かび上がる。水面下に眠る石造りの回廊、海藻に覆われた扉、そこに刻まれた古代文字。その一つ一つが、彼女の過去と繋がっていた。
深く、さらに深く潜るほどに、彼女の中に眠っていた感情や記憶が目覚めていく。青い海は、ただの自然ではなかった。それは彼女自身の心だった。蓋をしていた悲しみも、決して消えなかった希望も、すべてがそこに息づいていた。
そして、最も深い場所——“約束の間”と呼ばれる神殿で、彼女は幼き日の自分に出会う。
「あなたは忘れたわけじゃない。選んだの。前に進むために。」
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それ以来、彼女は毎夜、海へと足を運ぶ。もう記憶に怯えることはない。なぜなら彼女は知っているのだ。
心の奥底にこそ、本当の光があることを。
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『青く、深く』 続章:記憶の礁(いくりのしょう)
“約束の間”を出た彼女の頬を、潮の流れが優しく撫でていった。かつて沈めた痛みと向き合ったあとに残ったのは、悲しみではなく、静かな決意だった。
「まだ——何かが呼んでる。」
神殿の奥には、封じられていた通路があった。珊瑚に覆われた扉を指でなぞると、文字が淡く浮かび上がる。
> “記憶の礁を越えて、真の光へ至れ。”
その瞬間、海の色が変わった。深い蒼が、夜明けの群青へと溶けてゆく。彼女のまわりに現れたのは、彼女の記憶からこぼれ落ちた影たち——幼い日の夢、消えた笑顔、交わされぬ言葉。だがそれらは、もう彼女を縛るものではなかった。
「もう隠さない。わたしは、歩いてゆく。」
彼女が進むたびに、影たちは光となって消えていった。そしてついに、記憶の礁の先に、ひときわ輝く扉が現れる。そこには、再会の気配があった。海の底に遺された、たったひとつの祈りとともに。
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この先には、誰が待っているのか。彼女は誰の願いに触れ、どんな選択をするのか。それはまた、別の深みで語られる物語。