鳳羅

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「あの夏、川辺で君に出会った」

白いカーテンがゆらゆらと風に揺れている。
今もなお、あの夏の陽ざしと君の笑顔が、
僕の中に焼きついて離れない。

それは、遠い夏の日だった。
僕は田舎のおばあちゃん家へ、一人で向かった。
列車に揺られて辿りついた村には、セミの声と土の匂いが満ちていた。

その日も、うだるような暑さだった。
Tシャツはすぐに汗でぐっしょりになり、
僕は川のせせらぎに誘われるように森の奥へ足を運んだ。

そこで出会ったのが――君だった。
透きとおる川で無邪気に遊ぶ、その姿はまるで夏の精のようで。
水しぶきをあげて笑う声に、僕の鼓動が跳ねた。
気づけば、僕の目は君に釘付けだった。

その日から毎日、僕は川へ通った。
何を話したか、どんなことを一緒にしたか――
些細な一つひとつが、今では宝物だ。

でも夏は、いつまでも続かない。
蝉の声が遠のき、稲穂が黄金に変わった頃、
僕は町へ戻る日がきてしまった。

最後の日、君は何も言わずに、
ただ笑って、冷たい水に手を浸していたね。

僕は今でも、青い夏の日を思い出す。
白いカーテンが揺れるたび、
あの日の風が、心に吹き抜ける。

6/30/2025, 1:53:29 PM