檸檬味の飴

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3/26/2023, 6:40:45 AM

「おーい、聞こえてんのかー?」



目の前で手を振られて、ハッとした。
ぼーっとしてたようだ。


「お前死んだ魚の目ぇしてたで」


笑いながら言うのは、幼馴染の桃瀬だ。

成績はめっちゃ悪いのに運動神経だけはめっちゃ良い。
バスケで全国大会行ったとか。


「なんかあったん?」


「なんもない…」


いや本当はある。けどこいつだけには言いたくない。



「いやなんかあるやろ」


「何もないって」


百瀬は腕を組んで唸り始めた


「んー何かなー。あ、わかった!」

「…なに」

「推しのイベントのチケット外れたやろ!」

「ちゃうし」

「ちゃうのー?えーじゃあ…」


即答するとまたすぐ考え始めた。

「怪我した!」

「してない」

「弁当で嫌いなもん出た!」

「出てない」

「こん前のテスト今までで一番悪かった!」

「…それはお前やろ」

「あ、バレた?」

「バレバレやわ」

「んはは」


豪快に笑う彼が輝いて見えるのは、太陽の光せいだろう。




あー…私今どきどきしてる。

こういう時間が好きだなって思ってる。

一生続いて欲しいとか思ってる。

自覚したくないって思ってる。







好きじゃないのに。












お題:好きじゃないのに 2023/03/26

3/20/2023, 2:18:55 PM

「自分、もしかして迷子の子やな?」


高校一年生の春頃。

その辺りでこの幸せな夢を見始めた気がする。

所謂、一目惚れってやつだ。


「んはは、図星っぽいな。
 この学校やけに広いし部屋数も多いもんな。わかるわ」

にぃっと笑う。

まるで芝犬のような無邪気な笑顔を向けられ、
私は危うく失神するところだった。

「どこ?職員室?」

と聞かれ、小さく頷くと

「そかそか。じゃあ俺が先輩として案内してやらんとな」

「えっと、ありがとう、ございます」

ようやく言葉を捻り出すことができた。
声は震えていたが怖いと言う感情はなかった。

「緊張しなくてええんやで?そんながちがちだと俺が恥ずかしなってまうわ」

と頭を掻きながら言う先輩は誰が見てもイケメンだった。

とりあえず行こか!と言われ2人で歩き出した。

そこからの会話は緊張しすぎて覚えていないが、
先輩が実家で飼っている芝犬がとても可愛いということは十分わかった。


「ここが職員室やで」

と教えてくれた時、
私が今まで息することを忘れていたくらい
先輩に見入っていた事に気づいた。

「あっ、本当助かりました、ありがとうございます」

と頭を下げるとあたふたした声が聞こえる。

「頭上げてや、そんな、当たり前のことしただけやし、!」

私は既に彼の虜になっていた。




それからと言うもの、毎日が楽しくて仕方がなかった。

同じ学年では無いし会うこともあまりなかったけど、
会う度に手を振ってくれたり、目があったら笑ってくれた。

正直告白しようか迷った。

でもなったばかりだし、手を振るのも笑ってくれるのも
他の人に普通にしてるかもしればいし…
…と永遠に出てくる色々な可能性があったので断念した。


ある日、私はサッカーのマネージャーをすることが決まった。

実際に部活へ行きサッカーの練習の様子を見せてもらうと、そこにはあの先輩がいたのだ。


私に気づいた先輩はサッカーの練習を辞めてこちらへ寄ってきた。

本当に輝いていた。
汗すらも漫画のエフェクトのようで、
より一層先輩を引き立たせていた。

「マネージャーか!よろしくな!」

生きていてよかったと思った。



あぁ、この夢が一生続いてほしい。


告白して、振られたら夢は醒めてしまうのだろうか。


それからの毎日どうなるんだろうか。












お題:夢が醒める前に   2023/03/20


追記(読まなくてもいいです)

:この2人は結ばれるのかな。
本当は先輩に彼女がいたって言う事にしても良かったかもなと思ってました。(バットエンド)

3/18/2023, 12:50:01 PM

「もっと笑ってや」


そう言ってくれた彼は今、私の傍で眠っている。

趣味だったカメラは少し埃を被っていた。

本棚も写真やカメラのことが書かれている本ばかりで、
最初のうちは少しめんどくさかった。


「写真撮らせてくれへん?」

「今ー?」

「おん、初めてのデートやし、!」

「いいけど…あんまり面白くないと思うよ」

「いつも綺麗だから大丈夫やって」


と言いながら彼はカシャっとシャッターを切る。


「うちの彼女は可愛いなぁ」

と頬を赤らめる彼を見て、私も恥ずかしくなってしまう。


「お返しにアイス食べたい」

「んえっ?ええけど…何味がいい?」

「チョコ!」

「んはは、元気やなぁ」


と笑いながら去った彼の背中は暖かかった。


でも、幸せはいつまでも続くものではない。





ガッシャッン‼︎




「ねえ!目開けてよ!起きてよ!」


トラックが歩道に乗り上げた。私が気づいた時には彼は倒れていて、頭から赤いものが流れていた。

体への目立つ外傷は無かったものの、
頭への強い衝撃と、大量の流血で彼は冷たくなってしまった。




なんで私だけ残したの?


カメラは?写真は撮らないの?


笑顔になるからさ。


君も笑顔を見せてよ。






あぁ。


こんな不条理な運命を嘆かずにはいられない。










お題:不条理  2023/03/18


追記:はじめまして。檸檬味の飴と申します。
関西弁彼氏とのお話を書いていくつもりです。何卒。
(ただ私の趣味なだけ)