檸檬味の飴

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「もっと笑ってや」


そう言ってくれた彼は今、私の傍で眠っている。

趣味だったカメラは少し埃を被っていた。

本棚も写真やカメラのことが書かれている本ばかりで、
最初のうちは少しめんどくさかった。


「写真撮らせてくれへん?」

「今ー?」

「おん、初めてのデートやし、!」

「いいけど…あんまり面白くないと思うよ」

「いつも綺麗だから大丈夫やって」


と言いながら彼はカシャっとシャッターを切る。


「うちの彼女は可愛いなぁ」

と頬を赤らめる彼を見て、私も恥ずかしくなってしまう。


「お返しにアイス食べたい」

「んえっ?ええけど…何味がいい?」

「チョコ!」

「んはは、元気やなぁ」


と笑いながら去った彼の背中は暖かかった。


でも、幸せはいつまでも続くものではない。





ガッシャッン‼︎




「ねえ!目開けてよ!起きてよ!」


トラックが歩道に乗り上げた。私が気づいた時には彼は倒れていて、頭から赤いものが流れていた。

体への目立つ外傷は無かったものの、
頭への強い衝撃と、大量の流血で彼は冷たくなってしまった。




なんで私だけ残したの?


カメラは?写真は撮らないの?


笑顔になるからさ。


君も笑顔を見せてよ。






あぁ。


こんな不条理な運命を嘆かずにはいられない。










お題:不条理  2023/03/18


追記:はじめまして。檸檬味の飴と申します。
関西弁彼氏とのお話を書いていくつもりです。何卒。
(ただ私の趣味なだけ)

3/18/2023, 12:50:01 PM