「自分、もしかして迷子の子やな?」
高校一年生の春頃。
その辺りでこの幸せな夢を見始めた気がする。
所謂、一目惚れってやつだ。
「んはは、図星っぽいな。
この学校やけに広いし部屋数も多いもんな。わかるわ」
にぃっと笑う。
まるで芝犬のような無邪気な笑顔を向けられ、
私は危うく失神するところだった。
「どこ?職員室?」
と聞かれ、小さく頷くと
「そかそか。じゃあ俺が先輩として案内してやらんとな」
「えっと、ありがとう、ございます」
ようやく言葉を捻り出すことができた。
声は震えていたが怖いと言う感情はなかった。
「緊張しなくてええんやで?そんながちがちだと俺が恥ずかしなってまうわ」
と頭を掻きながら言う先輩は誰が見てもイケメンだった。
とりあえず行こか!と言われ2人で歩き出した。
そこからの会話は緊張しすぎて覚えていないが、
先輩が実家で飼っている芝犬がとても可愛いということは十分わかった。
「ここが職員室やで」
と教えてくれた時、
私が今まで息することを忘れていたくらい
先輩に見入っていた事に気づいた。
「あっ、本当助かりました、ありがとうございます」
と頭を下げるとあたふたした声が聞こえる。
「頭上げてや、そんな、当たり前のことしただけやし、!」
私は既に彼の虜になっていた。
それからと言うもの、毎日が楽しくて仕方がなかった。
同じ学年では無いし会うこともあまりなかったけど、
会う度に手を振ってくれたり、目があったら笑ってくれた。
正直告白しようか迷った。
でもなったばかりだし、手を振るのも笑ってくれるのも
他の人に普通にしてるかもしればいし…
…と永遠に出てくる色々な可能性があったので断念した。
ある日、私はサッカーのマネージャーをすることが決まった。
実際に部活へ行きサッカーの練習の様子を見せてもらうと、そこにはあの先輩がいたのだ。
私に気づいた先輩はサッカーの練習を辞めてこちらへ寄ってきた。
本当に輝いていた。
汗すらも漫画のエフェクトのようで、
より一層先輩を引き立たせていた。
「マネージャーか!よろしくな!」
生きていてよかったと思った。
あぁ、この夢が一生続いてほしい。
告白して、振られたら夢は醒めてしまうのだろうか。
それからの毎日どうなるんだろうか。
お題:夢が醒める前に 2023/03/20
追記(読まなくてもいいです)
:この2人は結ばれるのかな。
本当は先輩に彼女がいたって言う事にしても良かったかもなと思ってました。(バットエンド)
3/20/2023, 2:18:55 PM