「おーい、聞こえてんのかー?」
目の前で手を振られて、ハッとした。
ぼーっとしてたようだ。
「お前死んだ魚の目ぇしてたで」
笑いながら言うのは、幼馴染の桃瀬だ。
成績はめっちゃ悪いのに運動神経だけはめっちゃ良い。
バスケで全国大会行ったとか。
「なんかあったん?」
「なんもない…」
いや本当はある。けどこいつだけには言いたくない。
「いやなんかあるやろ」
「何もないって」
百瀬は腕を組んで唸り始めた
「んー何かなー。あ、わかった!」
「…なに」
「推しのイベントのチケット外れたやろ!」
「ちゃうし」
「ちゃうのー?えーじゃあ…」
即答するとまたすぐ考え始めた。
「怪我した!」
「してない」
「弁当で嫌いなもん出た!」
「出てない」
「こん前のテスト今までで一番悪かった!」
「…それはお前やろ」
「あ、バレた?」
「バレバレやわ」
「んはは」
豪快に笑う彼が輝いて見えるのは、太陽の光せいだろう。
あー…私今どきどきしてる。
こういう時間が好きだなって思ってる。
一生続いて欲しいとか思ってる。
自覚したくないって思ってる。
好きじゃないのに。
お題:好きじゃないのに 2023/03/26
3/26/2023, 6:40:45 AM