「未来を見れる少女?」
唐突に事務所を訪ねてきた彼は、未来が見れる少女がいると話し始めてきた。
どうやら事務所で雇って商売をしないかという話だったのだが、いかんせんその少女には一癖も二癖もある性格をお持ちのようで。
「こちらの事務所で引き取っていただけると‥」
「‥要するに手に余る。ということですね。」
確かに、この事務所にはそういった特殊な能力を持って生まれてきた子たちを引き取って保護するという活動もしているが、公表していない中でどうやって知ったのか。
まぁ、大方親族たちから聞きつけてきたのだろう。
「未来を見る商売なんて、確かに売れはするでしょうね。」
「では契約を‥!」
「しませんよ」
あっけらかんとした表情で目をぱちくりさせながら僕の方を見る彼は、バッグから取り出そうとしていた書類をしまい込み、肩をがっくりと落としていた。
「少女は引き取りますよ。でも商売はしません。
手に余るならどうぞ連れてきてください。
‥大体、人生は不平等で不条理なこともたくさんある。
だから人は努力するんです。
未来を見て良くなったとしても"ツケ"はまわってくるもんですよ」
詐欺師を追い払ってから、もちろんそんな少女も来ていない。
一段とスッキリした気持ちで青空を見上げると、一羽の白い鳥が急くように飛び立っていた。
「やっぱ僕の予知は精度が高い。」
「もう行ってしまうの?」
旅先で恋をすることはよくあった。
泊めてもらった家の娘や従業員の女の子にはよく惚れられているのは自覚していた。
お互いが心地良く過ごすために必要なことは謙虚な態度と優しさ、そして笑顔だ。
多分それが勘違いさせてしまったのだろうと少しは反省している。
「うん、ごめんね。もう家に帰らなきゃ」
「じゃあまたどこかで会えたらその時は‥」
僕は何も返事をしなかった。
だってもう戻ることは無い。
笑顔で手を振って歩き出し、これで家に帰れると思ったら旅の疲れなど吹き飛ぶようだった。
「やっと見つけたんだ、遠くへ行ってしまった君をようやく探せた。」
僕は手のひらに収まるほど小さいかけらとなってしまった君を見つめてその美しい白い骨にキスをする。
「もう逃がさない。
どこにも行かないでね、愛しい君。」
ちまちまと小説を書く
見せる予定があるかと聞かれたら、完成度次第
完成するかも不明である
だかしかし、作品に対しての愛やアイデアは脳から溢れそうなほどだ
その静かな情熱は尽きることのない青い炎のよう。
自分がこの世を去った時も書いたものはどこかで誰かが読んで楽しんでいると考えてみると、いつか残せるものを書いてみたいなと、ふとそんなことを思いました。
退役軍人の朝は早い。
始まりはいつもこのポンコツコーヒーマシンから出る香り豊かなコーヒーだった。
並々注がれてしまってはミルクも砂糖も入れられない。
「全く、いい加減覚えてくれ」
コツン、とコーヒーマシンを指で弾くとそのブラックコーヒーを一口啜る。
顔を歪ませながらティーカップを窓辺におかれたテーブルへ運ぶと、ミルクを注いでかき混ぜる。
休日でもあるまい、妙に静かな外を眺めながら少し甘めなコーヒーをいただく。
ほっと一息ついたところで、彼の携帯がけたたましく震えた。
「もしも-」
「おいジャック!昨日から電話かけてるんだぞ!一体なんででないんだよ!!大変なんだ!助けてくれ!」
「お、おいどうしたんだリック」
「隣町のサンデロにあるアンディのバーにきてくれ!!すぐ!」
いつもメールしかよこさないはずのリックが、緊急事態と言わんばかりに電話をしてきたのだ。
彼は前の同僚であり友人である。
コーヒーを飲んだばかりなのに、そう思いつつもジャックは隣町まで車を走らせた。
彼はこの日を境に自宅へ戻れることは無くなった。
感染した人間達を相手に奮闘することになるとは、今はまだ知らない。
[コーヒーマシンの憂鬱]