阿ヶ野川ゆうすけ

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「もう行ってしまうの?」

旅先で恋をすることはよくあった。
泊めてもらった家の娘や従業員の女の子にはよく惚れられているのは自覚していた。
お互いが心地良く過ごすために必要なことは謙虚な態度と優しさ、そして笑顔だ。
多分それが勘違いさせてしまったのだろうと少しは反省している。

「うん、ごめんね。もう家に帰らなきゃ」
「じゃあまたどこかで会えたらその時は‥」

僕は何も返事をしなかった。
だってもう戻ることは無い。
笑顔で手を振って歩き出し、これで家に帰れると思ったら旅の疲れなど吹き飛ぶようだった。

「やっと見つけたんだ、遠くへ行ってしまった君をようやく探せた。」


僕は手のひらに収まるほど小さいかけらとなってしまった君を見つめてその美しい白い骨にキスをする。



「もう逃がさない。
 どこにも行かないでね、愛しい君。」

6/23/2025, 12:07:47 AM