その少女はどこまでも白かった。
身も心も白としか言い表せないほど純粋で何も知らない生娘。
少女は美しかった。
陶器のような透き通る肌、でもどこか青白く不健康にみえてしまう。
少女は不気味だった。
何を考えているか分からない。何も考えていないかもしれない。何もわかってないかもしれない。そんな表情が酷く不気味だった。
少女は笑わなかった。
1度たりとも。向けるのはいつも無表情。私はそれが怖くて怖くて仕方がなかった。
少女は幼かった。
行動も、言動も、容姿も。
だから15を超えた歳に70をもゆうに超えた気持ちの悪い少女性愛者の年寄り金持ちに嫁いだ。
少女はその時も悲しそうな様子も嫌がる素振りも見せなかった。
少女は白無垢を着た。
相変わらず不気味な無表情で。
その時は本当に白かった。白で、白で、白だった。
真っ白な、無垢な少女だった。
「おれは!!この旅に終わりはないと思っている。それでも、ついてきてくれるか?」
え〜〜〜〜〜〜〜〜そんなの嫌だよティーくん。
僕終わりの見える旅じゃないとむりだよぉ。
やる気出ないよぉ。
言いたい。そう言いたい。
でも周りの仲間は
「うん!お前にならついて行くさ!」
「ええ私もですわ!」
とか言ってる。やめようそーゆーの。どーちょーあつりょくって言うんだよ。
「お前も、くれるか?」
ティーくんがそう言った。
「う...うん...」
うわあああああああ言っちゃったよ!!!
行くって!!付いてくって!!!
うわあん、僕のばかぁ...。
日差しのいい朝、いい気分で居た。
起きてからコーヒーを入れて、ちょっとくつろいで。
それからポストを見に行った。
すると宛先だけ書かれた可愛らしい封筒が入っていた。
ピンクで、花柄の。シンプルだけど可愛い封筒。
私の知り合いには手紙なんて書くような性格の人はいない。
だからとても不思議に思った。
手に取って封筒の表、裏、どちらも見たけれど差出人は書いていないみたい。
日差しの当たる窓辺で、テーブルクロスのかかったテーブルにコーヒーを置いてから手紙を開けることにした。
素敵な封筒なんだから開ける時も素敵にしないとな、みたいな使命感で。
まだ畳んであるけれどレターも凄く素敵な紙。
カサ、と開いてみる。
そこには便箋に見合わない殴り書きの文字で「しね」と書いてあった。
好奇心があっただけに衝撃は大きかった。
誰から?なんで?私が?
感情がぐるぐるぐるぐる渦巻きを作る。
人を殺した。
殺したんだ。私は。彼を。
私が彼と出会わなければ、私は彼を殺すことは無かったのに。
だから、過去の私に手紙を送った。
あえて綺麗なレターセットで。
端的に。「しね」って。
理想のあなたは、私に暴言を吐かないし、まして殴ったりなんて絶対にしない人。
仕事は出来て酒は嗜む程度、他の女には目もくれず私だけを好いていてくれる人。
家事はちょっぴり苦手だけど私と一緒にやると楽しいって言ってくれる、そんな優しくて素敵な人。
それが理想のあなたなの!
私、あなたの声、顔、体格、文字の書き方、姿勢、交際のし方、笑い方、家族構成、金銭感覚、全部が私の理想通りなの。
だからね、あなたは私の運命の人だと思うわ!
だから、私のお願い、なんでも聞いてくれるわよね?
急に話しかけらた人から理想を押し付けられたこと、君にはあるか?
僕はこれが初めてだ。
いや、何度もあったらたまったものではない。
僕は話しかけてきた相手のことを知らないし、何より家族構成や金銭感覚まで知られていたことが恐怖でしか無かった。
「ごめんなさい、無理です」
と言えば逆上された。意味がわからない。
高すぎる理想は人の人生ひとつを無駄にしてしまう。
だから僕は高望みをしたくない。
楽園?そんなものがあるか。
そんなものがあれば誰だってそこに行く。
行けないからこそ憧れるじゃないか。
だから、楽園なんてものは存在しなくていい。