離れた、はず。
逃げれた、はず。
わからない。ここがどこまで続いているのか。私は何に追われているのか。
でも、私を追っている何かには幸いなことに足音がある。正確には足音じゃない。ベビーカーを押す音。ベビーカーが動く音。かなり音は聞き取りにくいが、遠いか、遠くないかが分かる。不幸中の幸いというやつだ。今は聞こえない。
だから遠い、はず。
これはかくれんぼじゃなくて、鬼ごっこ。直感的に分かる。
思えば、鬼ごっこなんて酷い名前だ。触れられたら鬼。
この仮説が本当ならば私はきっと鬼になるだろう。
あいつは鬼だ。ベビーカーごと。ひとりでに動くなんてそうだ。ベビーカーが鬼だ。
何も分からない。
死に直面した事で思考が回転に回転を重ねてパンク寸前になる。現実逃避したいから鬼ごっこが酷い名前だとか考えてしまうし、でも現実を見なければならないからベビーカー=鬼なんてことも考えてしまう。考える。頭が疲れる。疲労。頭がベビーカーに潰される。フル回転する。疲れる。
...?あたまが、つぶれる?
「ぁ゙」
『遠い足音』
どこにも行かないで下さい。どうか。
私は貴方に何度も願った。
けれども貴方は聞いてすらくれなかった。
聞こえないのかもしれない。
でも、聞いてくれる素振りだけでも、私はして欲しかった。
点P、お前の事だよ。
貴方の背中が眩しくて、ずっと、追っていた。貴方のこと。
ごめんなさい。
つい、好きになったから。
ごめんなさい。
旅行、登校、下校。全てつけていたんです。
ごめんなさい。
でも、たのしかったです。
ごめんなさい。
貴方が、不審者に追われてるとご友人に相談して。
ごめんなさい。
守れなくて。
ごめんなさい。
あまりに突然で。何も出来なくて。
ごめんなさい。
今、あなたの、背中を、追って。
無駄!無駄!無駄!無駄!
全部全部無駄!!
意味ないの、こんなこと。
でも、でもだって、無駄でも、意味がなくても、実を結ばなくても、結果が出なくても、それでも、続けなきゃいけないの。
無駄なんだよ、こんなこと。
こんなこと考えても意味ないし、時間がもったいない。
すき、すき、すき、すき!
だいすき!すき!あいしてる!
所詮幼稚園児の言う愛言葉なんてこの程度で、大人になったら言ったことさえ忘れてる。なんて悲しいんだろう。
僕は覚えてるっていうのにね。
だって僕は君のことが大好きだから。
でも君はいつからか僕にすきもだいすきも愛してるも言ってくれなくなった。
あーあ。失恋。