"Red,Green,Blue"
英字でこの字体だと、なんとなく硬質で光が透けているような感じ。宝石みたいな色がイメージされる。
今回のお題だと、ルビーとサファイアかなぁ。
どちらもコランダム(酸化アルミニウムの結晶鉱物)だけど、クロムが含まれるとルビー、鉄やチタンが含まれるとサファイアになる。
含まれる僅かな元素の違いで色が変わって別物として扱われるんだから面白いよね。
日本画でよく使用される岩絵の具には、宝石なんかの鉱物を砕いて色を作っているものもある。
アズライト、ラピスラズリ、孔雀石、辰砂 etc……。
同じ鉱物を使った岩絵の具でも、細かく砕くと、光が乱反射して白っぽくなる。
最初見た時は同じ石からどうやってこの色を出しているんだろうと不思議に思ったっけ。
粒子の大きさで色のグラデーションができるんだから、凄いよなぁ。
"仲間になれなくて"
自分がおかしいって自覚はある。
特に道徳方面。
誰かと意見が対立したら、世間的には間違いなく僕じゃない方が正解だろうな、と諦めている。
分かっているから、だからこそ、放って置いてほしいんだけどな。
なんで最初から違うと分かっているものを気にしなけりゃならないんだろうね。
"雨と君"
鞄にはいつも折りたたみ傘を忍ばせている。
軽い雨であれば折りたたみ傘を使用するけれど、風が強く雨も激しい時は通常の傘を持って行く。
つい最近、台風が来た時も傘を持って通勤した。
で、雨が止んだ帰りに持ち帰るのを忘れてしまった。
一度忘れて帰ると、なかなか持って帰る機会を掴めないのが大きい傘だ。
また強い雨が降った時のための置き傘にしようと思っていても、ポツンと残った大きな傘はその存在を意識する度にこちらを責めているように感じてしまう。
……近いうちにまた雨降らないかなぁ。
"誰もいない教室"
鍵をかける音。
くすくす笑う声が、徐々に遠ざかっていく。
二、三度扉を引いて、開かないことを確認して。
仕方無いから机に腰掛け、鞄から本を取り出す。
文庫本半分くらいまで読み進めた頃。
廊下をバタバタと走る騒がしい音に顔を上げた。
ガチャガチャと鍵が開けられた後、勢いよくスパンと扉が横にスライドする。
やぁ、と手を挙げると。
"……お前はっ、少しは焦れよ!! "
苛立ちと焦燥が入り混じった顔をした知り合いの、
全力の叫びに思わず耳を塞いだ。
"いや、窓あるし。それに電気をつけていたら最終的には警備員の見回りで気付かれるだろうから"
のんびり帰る支度をしつつ、仁王立ちでこちらを睥睨する知り合いに向かってそう言うが、その眦は吊り上がったまま緩む気配はない。
"閉じ込めた奴らは、"
"あ、別にいいよ。面倒だから"
"……お前、さては結構機嫌良いな"
"合法的に授業をサボる言い訳をくれたからね。
ゆっくり本も読めたし。
誰もいない教室というのも、静かで、なかなか良いものだね"
そう言うと、深く深く溜め息を吐かれた。
帰宅の路について、改めて鍵を開けてくれたことに対して礼を述べると、彼はなにやら複雑そうな表情を浮かべた。
"本当に何にもしないつもりか。ああいう奴らは反撃しないと際限なくつけ上がるぞ。……昔の俺みたいに"
"ん?ああ、連中には後日個別に話をするよ。
折角自分で自分の弱味を作ってくれたんだ。せいぜい有効活用してやらないと、だろう?"
少しの沈黙の後、
"……あいつらに同情するわ"
そう言って、彼は完全に脱力した。
"ページをめくる"
本の世界に没頭するのは、水に潜る感覚に近い。
それで言うと、ページをめくる瞬間は息継ぎみたいなものなのかもね。