ミヤ

Open App
8/10/2025, 3:27:09 AM

"風を感じて"

お参りする時にいつも道の脇に飾ってあった、沢山の赤いかざぐるま。
カラカラと回るそれが不思議で、あれはなぁに、と祖父に尋ねると。
ご先祖さまや亡くなった人達が、
ここにいるよ、と教えてくれているんだと。
よく来てくれた、と歓迎しているんだと。
そう教えてくれた。

ふぅん、とその時は納得したけど。
今思うとなかなかにホラーな考え方だよね。

8/8/2025, 3:19:34 PM

"夢じゃない"

空から舞い落ちる灰が、雪のようだった。

踏み出した足が、さくり、と音を立てて僅かに地面に沈み込む。
黒と白に覆われた地の下で、知らずに踏み潰したものは何だったのだろう。
踏み出す度に、靴底ひとつ分の誰かの大切な何かが塵になって消えていく。

きっと、救いはない。
赤く、黒く、そして白く。
燃えて、焼け落ちた光景は、夢なんかじゃない。
ひどく狭いこの現実という器の底の底には、墓場によく似た安寧だけが揺蕩っている。

雲の隙間から僅かに漏れる陽光に輝く灰は、まるで雪のようで。
無数の呻き声が反響する地獄の底で、ただ、灰の降る空を見上げていた。

8/6/2025, 5:32:45 AM

"泡になりたい"

雑踏に紛れて掻き消される声も。
理解できず理解されずに続かない会話も。
誰にも届かないのならいっそ、存在ごと泡になって消えてしまえたらいいのに。

8/4/2025, 6:28:01 AM

"ぬるい炭酸と無口な君"

そういえば、昔、鶏肉のコーラ煮を作ったことがあったっけ。知り合いに美味しいと教えてもらって、丁度材料があったから作ってみることにしたんだ。

最終段階、コーラと醤油で煮込んでいると、匂いにつられた貴女がヒョイと台所を覗き込んできた。

くつくつと順調に煮込まれている鶏肉。
甘い香りを漂わせる、鍋の中の黒い液体。
空になったコーラ缶をじっと見つめた貴女が、
こいつ、正気か……?という顔をしたのを覚えている。
いや、本当にこういう料理なんだって、と言っても懐疑的な眼差しは変わらず。
味見で一欠片差し出すと、無言でもぐもぐ頬張った後、おかわりを要求されたけど。

料理が口にあうと、口数が減るのが貴女だった。
美味しいものにはじっくり向き合わないといけないから、らしい。
ちょっと目を細めて機嫌良さそうに食べる姿を見たくて、色んな料理に手を出したなぁ。


今じゃもう全然だ。
自分一人のために凝った料理を作るのは億劫なんだよな。

8/3/2025, 3:09:06 AM

"波にさらわれた手紙"

実写版アラジンの劇中歌に、Speechlessという曲がある。
"Here comes a wave meant to wash me away"から始まる歌だ。

何というか、……強いよね。
これを、雰囲気は壊さずに伴奏にマッチした文字数におさめた翻訳者さんも凄いよなぁ。
原曲も日本語版もどっちも綺麗で、個人的には
"A Whole New World"よりも好み。


Speech is silver, silence is golden(雄弁は銀、沈黙は金)と言われるけど。
確かに度を過ぎたお喋りはいらぬ災いを招くけどね。
けれど、黙っていたら全てを失う時が来る。
大きな波に掻き消されないように声を上げなきゃいけないのは分かっているけど、怖いよな。
そんな時、ほんの少しだけ背中を押してくれる何かが自分の中にあれば良いと思う。

Next