"ぬるい炭酸と無口な君"
そういえば、昔、鶏肉のコーラ煮を作ったことがあったっけ。知り合いに美味しいと教えてもらって、丁度材料があったから作ってみることにしたんだ。
最終段階、コーラと醤油で煮込んでいると、匂いにつられた貴女がヒョイと台所を覗き込んできた。
くつくつと順調に煮込まれている鶏肉。
甘い香りを漂わせる、鍋の中の黒い液体。
空になったコーラ缶をじっと見つめた貴女が、
こいつ、正気か……?という顔をしたのを覚えている。
いや、本当にこういう料理なんだって、と言っても懐疑的な眼差しは変わらず。
味見で一欠片差し出すと、無言でもぐもぐ頬張った後、おかわりを要求されたけど。
料理が口にあうと、口数が減るのが貴女だった。
美味しいものにはじっくり向き合わないといけないから、らしい。
ちょっと目を細めて機嫌良さそうに食べる姿を見たくて、色んな料理に手を出したなぁ。
今じゃもう全然だ。
自分一人のために凝った料理を作るのは億劫なんだよな。
8/4/2025, 6:28:01 AM