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10/9/2024, 10:58:47 AM

 題目:『ココロオドル』

 天鐘、響き渡るチャイム。鳴り響いたその音を背に一人先走り、駆け出した。

 段差がさもそこにないかのように蹴り降りて、伸ばした右手で引き出す二足。窮屈な白青を滑らせ脱ぎ捨て、ものの数秒で下駄箱を去る。

 すぐさま背の後ろから掛けられる声々、それらを無視して胸の鳴る方へ。

 駆け出し、駆け下り、駆け跳ね、赤で止まり。
 再開の後に、交差をくぐる。

 巡る街道、裏方の路地。一癖見せるは猫の道か、はてさてそれとも白線の通りか。

 途切れた通りを飛び越し、駆ける。
 手頃な石を蹴飛ばして、転がるそれを機に進む。

 結論、辿り着いたのは、変哲も何もない民家。

 代わり映えのない扉を開き、その杜撰さに顰めっ面を経る。

 さりとて心はここに在らず。
 顰めた面も一面に過ぎず。

 背の黒色を定位置に帰し、再び扉を掴み開く。

 一時の苦心も放り捨て、青色に跨り風を漕いだ。

10/8/2024, 10:22:15 AM

 題目:『束の間の休息』

 白黒の視点で見下ろしたデスク。
 外からの光が乱反射して、黒を白に染め上げた。

 打たれたはずの文字は見えず、手をかざしてみれば如何様にも受け取れる言葉の繰り返し。

 繰り返し。パターンを変え、態度を変え、されど打ち綴る言葉の意味は何一つ変わらない。

 自ら打ったのだから意味が分かる。当然の如く意図が分かる。自分が何を伝えたいのか。

 ではどうしよう、これは酷い。
 人様に見せれた物ではない。

 ひとまずこれから目を離す。
 頭は回し、されど腕から先には別の役を。

 時代遅れの鉛筆を持ち、滑りやすい材質の上を塗り潰すかのように巡らせる。

 それで何が起きるのか、何が出来上がるのか。
 自らやり始めたことなのに、然程興味は感じられないが、さりとて腕を止めようとはしない。

 ならば出来たのは人か、物か、幻か。

 重なった黒鉛と見慣れた体躯。
 けれど人では無いのだろう。

 それは自らの二足で立ち、胴から連なる片方の腕を振り上げていた。そこに見慣れた頭蓋は無い。

 自ら描いたのだから意味が分かる。当然の如く意図が分かる。自分が何を伝えたいのか。

 ではどうしよう、これは酷い。
 人様に見せれた物ではない。

 ひとまずこれから目を離す。
 頭は回し、されど腕から先には別の役を。

10/7/2024, 12:36:46 PM

 題目:『力を込めて』

 二年の放棄に亀の歩み、取り繕われた人の面。

 暗がりは大して好きでもなくて、ネオンの光に身を惹かれる。
 そんな無謀な思惑も、臆病風に吹かれてしまえばまるで砂山のよう。

 計画を立てる。その瞬間が好きで。
 実行に移す。その瞬間が嫌いで。

 やってみれば案外大したことない。そんなことも多々あれば、悲惨すぎて何も言えないこともある。

 自分のことが分からない。
 自分の程度が測れない。

 私は立派にやれてますか?
 それとも駄目な人ですか?

 誰も私を見ていない。
 測ってくれる相手は居ない。

 故に未だにわからずじまい。
 途方も無いのだ二年とは。

 布団に潜り、人を知り、音の摩擦に擦り切れる。
 部屋のカーテンを開こうともせず、電子の光を好んで浴びた。

 浪費に嘆き、寄生に呻く胸には栓をした。

 さりとて、寝たれば終わるのだ。
 この悩みも、あの憂いも、その反省も。

 ならば今日の終わりにさあ一度、と気持ちを膨らませて叫ぶ。

 言葉にならない、音の羅列を一声に。

 力を込める。音は出ない。