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 題目:『ココロオドル』

 天鐘、響き渡るチャイム。鳴り響いたその音を背に一人先走り、駆け出した。

 段差がさもそこにないかのように蹴り降りて、伸ばした右手で引き出す二足。窮屈な白青を滑らせ脱ぎ捨て、ものの数秒で下駄箱を去る。

 すぐさま背の後ろから掛けられる声々、それらを無視して胸の鳴る方へ。

 駆け出し、駆け下り、駆け跳ね、赤で止まり。
 再開の後に、交差をくぐる。

 巡る街道、裏方の路地。一癖見せるは猫の道か、はてさてそれとも白線の通りか。

 途切れた通りを飛び越し、駆ける。
 手頃な石を蹴飛ばして、転がるそれを機に進む。

 結論、辿り着いたのは、変哲も何もない民家。

 代わり映えのない扉を開き、その杜撰さに顰めっ面を経る。

 さりとて心はここに在らず。
 顰めた面も一面に過ぎず。

 背の黒色を定位置に帰し、再び扉を掴み開く。

 一時の苦心も放り捨て、青色に跨り風を漕いだ。

10/9/2024, 10:58:47 AM