有里

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10/19/2023, 8:45:24 AM

 よく晴れた朝、僕は海に向かって歩いていた。

 終わりの見えぬ勉強に嫌気がさして、衝動的に家を飛び出してきた僕は、最近冷たくなってきた風を感じながら、黙々と歩いて行く。
 海の前に立ちはだかる建物の薄暗い間をぬって歩いて行き、曲がった途端、僕の目の前にぱぁっと海が広がった。
 突然の眩しさに僕は目を細めたが、目の前の光景を捉えると、大きく目を開いた。

 海はとても美しかった。

 海面はきらきらと日の光が反射し、海の向こうに佇む島々の緑がこれまでに鮮やかに見えた。
 終わりなく見渡せる目の前の美しい光景に感動しながら、僕は心の隅で呟いた。

 僕の将来もこれくらい見渡せればいいのに

 ……我ながら、厨二病臭いセリフに笑いそうである。
 僕は、海に背を向けた。将来を見通すためには、不確実でも、努力して行くしかない。
 僕は、再び勉強の日々に戻っていった。

《題:秋晴れ》

9/15/2023, 12:51:25 AM

 僕は夜の街を歩いていた。1日の疲れが溜まりきった体は重く、思わず深いため息がもれる。

 少しでも気分を上げたくて、僕は空を見上げた。
 しかし、街灯や建物から漏れる光の明るさに霞んで、星はほとんど見えない。虚しさがより胸に染み込んでいくのを感じた。

 今、死んだら楽だろうな。

 空を見上げながら、そんな考えが頭をよぎった。そしてすぐさま、僕の中でその考えを否定する。

 僕が今死ねば、多くの人に迷惑がかかるだろう。それに、僕の苦痛などありきたりで、自殺の免罪符にはならないだろう。何より、僕に自ら死に踏み切る勇気はない。
 出来ないことを考えても、余計虚しくなるだけだ。

 僕は歩く足を速めた。
 結局、僕はこうして命が自然と燃え尽きるまで生き続けるのだろう。

《題:命が燃え尽きるまで》

9/14/2023, 2:25:31 AM

 夢中になって読んでいた小説から顔をあげ、私は部屋の隅にある時計へと視線を移した。時計の短針は、午前5時を少し過ぎた場所を指している。

 そんなに時間が過ぎているとは思わなかった。

 私は慌てて立ち上がり、窓へ向かう。そして、カーテンを勢いよく開けた。
 闇に染まっていたはずである前の田んぼが、いつの間にか薄ぼんやりと照らされていた。

 今日、いや昨日はいつの間にか終わっていたようだ。

《題:夜明け前》