――よし、今だっ
「あ。」
駅の近くにある本屋。
本棚にある1冊の小説を取ろうとして、
手と手がぶつかりそうになった。
「ああ、すいません。どうぞ。……ってなんだ中野かよ」
「小林じゃん。
なんだってなによー、もしかして、美少女と同じ本を取るなんて想像した?スマートにどうぞなんて言っちゃって!」
なんて、茶化したけど、
同じ本を取るというシチュエーションってもしかして意識させられる?
とか考えていた私が言えることではない。
だってまさか、休日に会えるなんて思わなかったから。
チャンスかなって思ったんだよね。
「そういうわけじゃねぇし。私服だから中野って分からなかったわ」
私服でも、私は小林ってすぐ分かったのにな。
意識はされてない……か。
少し悲しくなったけど、すぐにニヤニヤした顔を作る。
手を伸ばしたのがわざとだって分かられたら恥ずかしいから。
「強がっちゃってー。美少女なら良かったね?」
「ちがうっての。ほら、これ読むんだろ?」
本棚から取って、手渡してくれた。
私の好きな作者の本だ。
「小林もこの作者好きなの?」
「ん。まぁな。確か中野、前好きだって言ってたよな」
覚えてたんだ。なんだか思いがけない共通点だ。嬉しくなる。
「この作者いいよな。他にも中野のおすすめの本とか今度教えてよ。知りたいから」
え?知りたいから?なんで?って戸惑ってしまった。
私のこと知りたいとか?なんてありもしない妄想までしてしまう始末。
「この本の感想も教えて。じゃあまた学校でな」
と言って去りそうになる小林に、慌てて私も言う。
「小林の好きな本も今度教えて!……知りたいから!」
はははっと笑う小林は、少し照れくさそうな表情をしているように見えた。
気のせいかな。気のせいだよね。
きっと私とは違う、と思っても、期待してしまう。
顔が熱い。きっと私の顔は今赤くなっているだろう。
「はいよ。じゃあまた話そうな」
帰っていく小林の後ろ姿を見る。
まだ熱は引かない。
――恋する乙女ってね、ちょっとした一言で舞い上がっちゃうんだよ。罪なヤツめ。私とは意味がきっと違うってわかってるけど!けど!
などと心の中で呟く。
まるで微熱を帯びたようだ。
フワフワした心は、今日はいつになったら落ち着くかな。
君も私のこと好きならいいのに。なんてね。
微熱
太陽の下で笑える日を待っている
今は夜の暗闇の中にいるようだ
夜もそれなりに楽しいかもしれない
でもそろそろ日の目が見たいな
それまで後少し、だろうか
希望を持ってというから
持つけれども
じっと待つだけも退屈なんだよ
ああまた早く太陽の下で笑いたいなぁ
太陽の下で
風がひゅうって吹いた。
湖の水面が揺れる。
ふと目をやると、
水面が光を反射して、キラキラしていた。
今日は晴れていて、太陽がくれた光は、優しく湖を輝かせている。
ほとりにある木は紅葉していて、
風に吹かれてさわさわと揺れている。
赤い葉と水面がまぶしくて、思わず、
きれい、と呟いた。
歩いてきてみてよかった。まるで宝箱みたいにキラリと光る景色。
今日は気持ちのいい秋晴れ。秋風はさわやかに吹いていて、心地いい。
風からは少し冷ややかさを感じる。
もうすぐ冬になるのね。
秋風
「また会おうね」
なんてカオリ言ってさ。言ったあとすぐ泣いてやんの。
「これからずっと会えないわけではないでしょ」
そう言ってみても、カオリから流れる涙は止まらなかった。
「そんなの……わかってるよ。でも、ユミが遠くに行っちゃうのが寂しいの!ユミは私と離れて寂しくないの?」
カオリは、素直だなぁ。
寂しいかなんてさ、そんなの。
グッて気持ちを飲み込む。だってあたしまで寂しいなんて言ったら、じめっとしちゃうじゃんね。
「べっつにー。同じ国内じゃん?連絡も取れるし!」
って言ってみた。
カオリはいつものように唇をとがらせてて、不満そうだ。
と思ったら、ビックリした顔をいきなりした。ついには、ニヤニヤしだした。
「そんな強がり言ってさ、その涙はなによ?」
あちゃー、バレたか。
強がっても涙って出ちゃうものなんだね。
「また何を強がってるか知らないけど!最後くらい寂しいって言えばー?」
ニヤニヤしながら、涙を拭いながらカオリが言う。
なんて顔なん、って笑いたいけど、
正直あたしだって寂しいんだよね。
「まあ、寂しいっちゃ寂しい。でも国内じゃん?そのうち会えるでしょ!」
「アハハ、ユミらしい!そうだね、寂しいよね、また会えるよね」
カオリが笑ってくれた。なーんだ、しめっぽくなんてならないんだ。
ついには2人とも涙で顔がぐしゃぐしゃだ。
「あー、そろそろ行かなきゃ、お母さんが呼んでるわ」
「あー、もうなの!寂しいなぁ」
「あたしだって寂しい!」
「おー、ついに素直になったか」
カオリが嬉しそうに言う。
「もう強がるのもやめた!だから、じめっとさせないでね」
ハイハイ〜ってカオリが最後は笑顔になって、楽しそうに言う。
じゃあ、
「「また会おうね」」
また会いましょう
今回の題を見て、
スリルって、普段避けて通っているかも。
と思った。
ヒヤヒヤするのがいやなのである。
あ、でも例外があるな。
「ジェットコースター」。
あれはスリルがある乗り物だよな。
乗っている時はハラハラするけど、乗った後に爽快感がある。
まぁ、私はジェットコースター好きだからそう言えるのだよな。
というか、ジェットコースターにスリルって合っているのかな?
スリル満点、って言うけど。
スリルの言葉自体、馴染みがなくて、戸惑う。
まぁここの題って、馴染みのない言葉ばかりだけど。
だから、思考を広げられて楽しい。
ジェットコースターは、
苦手な人は無理しないで欲しいし、苦手な人に無理強いしないで欲しいなと思う。
スリル