空が、泣いている
朝の天気予報ではくもりの予報だったから、傘は持ってきていない
肩に雨がかかり服が濡れる
次第に全身がびしょびしょになっていく
地面に打ちつける雨の音に紛れて、私も泣いた
これまでの悲しさ、悔しさ、全部吐き出すようにして泣いた
数分そうした後ようやく泣き疲れ、涙が止まって空を見上げた
空はもう、晴れていた
私はさっきまで泣いていたことも忘れて表情を緩めていた
「明日の予定はありますか?」
ここから始まった僕と彼女のLINE。
授業前に爆速で文章を考え、会話を繋げる。
彼女は同じクラスでも同じ高校でもなく、隣町のいいとこの学校だ。
僕とは違って彼女は頭がいいので、勉強に忙しく遊ぶ暇などないのかもしれない。
それでも、と勇気を振り絞ってメッセージを送ってみたのが今日、金曜日の朝。
彼女から返信がくるのを楽しみに思ったり、どんな返事だろうと怖気付いてこなかったらいいのにと思ったり、感情が忙しい
結局、観たい映画があるからと無難に映画館に誘った。
彼女は応じてくれるだろうか
授業が終わるたびにスマホを確認している
さっき送ったメッセージは既読になったのか、返信が返ってきたか頻繁にチェックしてしまう
昼休み入り、食堂で昼飯を食べていると学ランのポケットからピコン!という音がした。
慌ててスマホを取り出すと、待ちに待っていた例の彼女からのLINEだった。
僕はおそるおそるアプリを開き、メッセージを確認する。
その瞬間、思わず箸を持った手でガッツポーズをしていた。だんだんと嬉しさが表情に表れてくる。
彼女からの返事はオーケーだったのだ。
はやる気持ちを抑えつつ、時間や集合場所の提案を送る。
たった一言で嬉しさがマックスになる、
こんな気持ちになるのは君からのLINEだけだ
彼らと私の思い出は世界に一つだけのもの
今までのことも全部宝物
これからの未来も一緒につくっていく
世界に一つだけの君と僕のストーリー
学校の敷地内にある大きな弓道場で「カン」と鳴り響いている土曜日の午前
部活に来ている生徒も多く、グラウンドでは掛け声とともに走り込みをしている
そんな中、私はまだ誰も来ていない一人の弓道場で、ゆっくりと集中して練習を始めた
何回か練習したあと、誰かが近づいてくる気配がした
先輩だ
憧れの先輩が袴姿で弓道場に入ってくる
「おはようございます!」と静かに挨拶を交わし
私は先輩と並んでひたすら練習をした
一息つこうと水を求めて下がろうとした
けれど、私はその場から動かなかった、いや動けなかった
先輩がチラッとこちらを見たのだ
私は憧れの先輩のふいのアイコンタクトに少しドキッとしてしまう
私が動かないでいると、先輩は練習の再開として
弓をひきはじめた
私の瞳は先輩の弓を引くモーションに釘付けになる
その時、一段と大きな
「カン!」という弦音が響いた
その瞬間、胸の鼓動も大きく鳴った気がした
胸の鼓動
太陽が元気に輝いている街の中心で、
忙しくしている少年がいる
彼の郵便配達という仕事は真夏であっても暇はないようだ
ベレー帽に赤い大きなカバンを持った彼は
一軒ずつ、扉を叩いて周る
「こんにちは!」と元気な声が響く
その声を聞いて元気をもらっているようで周りの人も表情が笑顔に変わっている
そんな暖かな街にお昼を告げる時計がなった
時を告げる鐘がゴーンゴーンと鳴り響く
汗を拭っていた少年もお昼ご飯の時間になったと知ると足取りが少し軽くなったようだ
時を告げる