閉店間際話題も尽きて
ずっと氷を舐めながら
枝豆一莢押し付け合い
指が絡んで静かに届く
ジャンボプリンパフェ
半泣き気味笑いながら
始まる無言のファイト
君が勝ったら告げる嘘
――――
(正直)
白いノイズ 脳を焼いたらいいのに
思ったより風情でもない窓際
湿気た項 雨間なんて要らない
喧しさも人の聲より静謐
縁の終り 触っただけの感情
鳴らないなら無言もただの挨拶
「いつも此処は暖かいのに どうして」
不思議そうに毛並みを捩る猫達
――――
(梅雨)
ブルスケッタに
プチピンチョス
エプロン姿に頬杖で
酒の好みをまた覚え
香りだけ 香りだけと
ワインを香り咽ている
ミートローフに
アクアパッツァ
色を失っていく日常
愚かに留まる夢心地
増える得意料理
揺れる言葉の羽
味見は罪
恋は足枷
――――
(無垢)
都心駅チカ1DK
独り暮らしの最適解
ボロ屋で瑣細な野心を抱いた
瑞々しさの新成人
海を揺蕩う浮き草の
ゆらりふわりと事もなげ
私は私のままに だなんて
思っていたのはいつの日か
箸で掴んで洗うよう
今日は此処 昨日は彼処と
押込めグチャリと交ぜられて
「お疲れ様」と この巣に干され
若布のように明日を経る
乾いた私が割れぬよう
塩ごと隙間に擦り込んで
水を得たりと回遊魚
鉄の匣から身を投げて
水銹を逃るというのなら
朝に揺蕩う漁火に
今日は此処 昨日は此処と
鰭が無くとも 目移りしたい
――――――――
(終わりなき旅)
貴方が絵画のように
微笑を形成している。
この恋を悲劇として
僕と貴方は舞台の上。
一層魅きつけてくる
らしくない美しさは
互いの心を守るため
貴方なりでの一芝居。
僕も貴方も敏いから
すぐに気づいていた。
僕はうぬぼれていた。
最後に差し出された
その手を握り返して
「今一度
貴方を好きになった」
貴方と
舞台を降りた気の侭。
その手
だけは
芝居でなかったのに。
――――――
「ごめんね」