朝、突然、赤い糸が見るようになった。どういう風の吹き回しだ。
私はいつも通り顔を洗ってご飯を食べ、歯を磨き、制服に着替えて学校に行く。その道中にも赤い糸が沢山見えた。鬱陶しいほど見えるそれに私は目を背けつつ教室に着く。そこら中に糸があって、ピンと張っているものもあれば、だらんと床についてるものもある。それに触れても特に害はなく、私はそれをできる限り避けつつも
とある場所へ向かう。
好きな人がいる場所へ。
紫の髪を少し浮かせた七三分けにし、ほかの髪はいい具合に遊ばせている。寝不足の証であろう隈は妖艶な顔立ちをさらに際立たせている。制服の上からでもわかる腰のくびれは彼の隠している秘密の美しさを引き立てる
そんな彼のところに行った。いつもの様に行ってるからそこにいる他の人たちからはもう驚かれもしない。
そしてそこに行って私は赤い糸が見えるようになってから初めて自らの手を見る。
そこ糸は結ばれていなかった。だが私には無数の糸が巻きついていて、ふと彼の指を見るとそこからは数多の糸が出ていた。
赤い糸は運命の他にも束縛という意味もあるか。と心底驚きながら私はそこから去る
何も言わず去っていった私を見て彼はキョトンとしていたがそんな私を見て笑っていた、とほかの人たちは言っていた。
赤い糸
前世の事だった。
それは綺麗で、まるで、花の形にカットされた宝石の中にでもいるような気がする、そんな花畑だった。
そんな花に照らされ陸明、私の愛人は笑っていた。器用な彼は花冠を作り、私の頭に乗せてくれた。
刹那、体に異変を感じた。体が固まるような気がした。死期が近いのか。
そうか、私はもう陸明とは会えないんだ。そう悟った。だから私は不器用ながら、花のブレスレットを作り
「じゃあね。」と言ってその場から去る。そしてその後私はー
それから何年、何十年経っただろうか。私はもう一度、姿は変わったけれど、シチュエーションは全く違うけど
貴方と会えた。
貴方と会った最後の日。それは
今をも引き寄せるナニカだったのかもしれない。
繊細な花。それは人の心や記憶などに置き換えられるのではないか。
私は授業中ふとそんなことを思いついた。
心、メンタルは人それぞれ硬度は違うけど、どこか繊細な所はあるはず。
記憶もそうだ。例えばトラウマがある。思い出しただけでも吐き気がするくらいにデリケートだ。
そんな繊細なものを扱ってる人間って凄いけど、だからこそ、それを破壊するほどの力を持っているのではないか。真相なんて知らないし要らない。だって、それがみんなが思っているものではなく、推測に過ぎないのだから。
1、前世
私は実の2人の兄に出会った。そして私の両親は心中した。
私はそれにショックだったけど兄たちがフォローしてくれたおかげで気に病むことが少なかった。
それから1年が経った。私は兄との生活に慣れてきたある日の事だった。
学校からの帰り道での事。一人で歩いていたら急に着信音が鳴って、何事だろうと思って出てみたら
「海暗〜、荷物多いからちょっと手伝いに来てくんね〜?」という長男でシスコンの良夜の声が聞こえた。
案の定声が大きい。携帯から耳を遠ざけつつ、
「どこいんの〜」と聞く。「いつもんとこ!来て!よろ」と言ったと思ったら電話が切れた。
荷物どうしようかなと思っていると女子の黄色い声が聞こえてくる。
銀兎だ。もう一人の兄で
学校や外では猫被って人気キャラを演じているが私や良夜の前ではデンレデレのよく分かんない奴だ。
遺伝と言うやつだろうか。私と銀兎は薔薇も百合も大好きなんだ。
そんな銀兎がこっちに来るのに賭けて私はリュックを下ろす。
「わっ、可愛い同士がいると思ったら荷物持たされんのかよぉ後で本貸せよ〜」と言いつつもリュックを持ってくれる。うちの兄はツンデレ属性までも兼ね備えているのか。最強かよ
と思いつつもその場所に全力疾走で向かう。
着いた。上がった息を整えつつ、良夜の所へ向かっている時の事だった。190超の男性に出逢った。
この人を見た瞬間私は何かを思い出した。
嗚呼、それは前世だ。
一年後私はー前世という悲惨な過去を思い出す。
子供の頃は覚えていない。ずっと独りで、あるとしたら両親の葬式くらい。
だけど
それよりも私は今の暖かい生活を鮮明に覚えていたいから私は昔の子供の時のことなんて思い出さない。と思う