懐かしく思うこと
私は今、高校生として青春を謳歌している最中だ。
今年の春中学校を卒業し、ずっと前から憧れていたJKになってから数ヶ月過ぎた頃、勉強と部活も両立を何とかできており、友達にも恵まれた。もう文句なしの高校生活を充実して遅れていると胸を張って言えるだろう。
そんなとある日の帰り道、最近自分の体のスタイルが丸くなってしまったため、少し遠回りをして帰ることにした。革のバックを肩にかけながら緩やかな坂を登っていく。すると私にとって、とても懐かしい景色が見えてきた。
「あ、学校。」
今年卒業した中学校。高校生になってから様子を見に来たことは無かったけれど、やはり1ミリも変わっていない。少し立ち止まってマジマジとみているといろいろ思い出す。
あの国語の先生の授業マジで眠かったなぁーとか、親友と一緒に自分の机の下に「3年〇組 (自分)&(親友)」とかくだらないことを沢山落書きしたよな〜とか、好きだった男の子のバスケの試合、こっそり見に行ったらすごくかっこよかったとか。あとは、あの先輩マジで怖いし厳しかったとか、あの子、いつも私にイタズラしかけてきてたよなーとか。大変なことも沢山あったけれど、何気に楽しくてあっという間に過ぎた思い出達。今だから言えるけれど、どれも大切な宝物。
私は1回深い深呼吸をして、こう呟いた。
「さて、そろそろ行こっかな。」
革バックを肩にしょい直して、まだ家まで続く道を進み続ける。
これからある人生の出来事も、懐かしく感じる日が来た時に自分にとって良いものと思えるように、期待を胸にしながら、私は歩き始めたのだった。
もう一つの物語
いつもベランダから見える夜景には色々と考えさせるものがある。なぜって、光一つ一つに一人の人間の物語が詰まっていると思うと、どんな世界が広がっているのか気になってしまうからだ。
例えばあそこの大きな3階建てのお家、お金持ちの夫婦が暮らしていて、今は夕食を食べながら優雅に時をすごしているかもしれない。あっちのマンションの端の窓、あそこは仲のいいカップルが、お話しながら楽しいひと時を過ごしていたりして…。 そっちの小さな家では幸せな家族が、それぞれの布団に潜って、川の字になって夢を見ている時かもしれない。
そうやってこの光一つ一つに、色んな物語があると思うと、とっても楽しい。けれど、全部が楽しいものだったり、幸せなものだったりするとは限らない。私は明るい物語がこの綺麗な夜景のように広がっていますようにと静かに願って過ごした、今日の私の物語。
暗がりの中で
一人暮らしを始めてから、夜が心細い。家を出る前はそんなことも考えず、ベッドに入るとすぐ寝てしまう私だったのに。なぜだろうか、。
そんなある日、いつもよりも胸がざわついて眠れない暗い夜が私に訪れた。不安で押しつぶされそうで、目を閉じてもなかなか寝付けない。どうしようと思ったが、しばらくベッドの中で考えているうちにふと思った。
もういっそ、起きていようと。
私はベッドから出て、カーテンを少し開けた。外から月明かりが差し込んでくる。
まるで私を光が優しく包み込んでくれるようだった。
次に私は、どこからか持ってきた古いダンボールからあるものを引っ張り出した。それは、昔お母さんに読んでもらっていた絵本。小さい頃のお気に入りだったからこれだけは捨てずに取っておいてたんだったけ。
ベッドに腰かけ、月明かりを頼りにページを開く。
絵本は私に素敵な世界を見せてくれた。大人になっても絵本はいいなと改めて感じる。
しばらくして絵本を読み終えると、少しウトウトしてきた。私もまだ子供なのかな、と思いつつもいい夜を過ごせた満足感を胸に、ベッドに思いっきり横たわった。
そんなある暗い夜の、楽しい大人の時間を過ごした私のお話。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
紅茶の香り
私の家では毎日楽しみにしていることがある。それは、いつも一緒に住んでいる彼が淹れてくれる紅茶を楽しみながら、今日あったことを話すこと。
私が仕事から家へ帰ると、彼はいつも優しい笑顔で私を出迎えてくれる。そんな彼に答えたくて、いつも私は笑顔で同じことを言う。
「ただいま、!」
そうすると、彼は包み込むような優しい声で「おかえりなさい。」と言ってくれる。この声が聞けるだけで私はとても幸せだ。仕事でどんなに怒られたとしても、どんなにミスをしても彼の前だと疲れが一気に吹き飛ぶような気がする。
「茶葉、新しいのが入ったんです。飲みますか?」
「うん。飲みたいな、お願いしてもいい?」
「もちろん。」
そうすると、彼は手馴れた手つきで上品に紅茶を淹れてくれる。毎日見ているのに、毎回すごいなぁと感心してしまう。そう思っていると、もう紅茶の準備が整ったようだ。
「さぁ、召し上がれ。良かったら今日、マドレーヌが手に入りましたから良かったらどうぞ。」
「わぁ、ありがとう!いただきます。」
綺麗な花柄のカップを口に運ぶ、優しくて深い香りだ。とっても美味しくて落ち着く。二人で静かに紅茶を嗜んでいると彼が口を開いた。
「最近、お仕事は順調ですか?」
彼は私をまっすぐ見つめて聞いてきた、その顔は少し心配しているようだった。実は最近、仕事が上手くいかなくて上司に怒られてばかりの毎日だ。同僚とも上手くいかず、あの雰囲気に飲まれるのが怖くて怖くて仕方がなかった。だけど彼には心配させたくなくて…、彼を安心させたくて。
「まぁ、普通かな、!」
そう言ってしまった。
「本当に?」
「うん、本当だよ!」
「…そうですか。」
彼は黙って紅茶を飲む。私も彼につられて紅茶を飲んだ。
すると彼はカップを静かに置いて、ゆっくりと私にこう言った。
「無理…しないで。」
「え、?」
驚いた。いつも敬語で上品な彼が少し震えた声でこういうから。
「最近、なにかあったのですか?最近、疲れているように見えるので…。」
私は、何も答えられなかった。話したら楽しい時間か終わってしまうと思ったのと、仕事の時の状況がフラッシュバックしてきて涙をこらえるのに必死だったから。すると、彼は私にこう話しかけてくれた。
「私には素を見せて下さい。……私は、あなたの力になるほど嬉しいことはないのですから。」
私は彼を安心させたくていままでずっと、笑顔を作っていた。けれど、それは違ったみたいだ。彼に嘘はつけれなかった。
「実は…」
本当は秘密にしておこうと思った。彼との紅茶の時間は楽しい時間でありたかったから。だけど、その日私は仕事での悩みを彼に全部伝えた。気付くと私は気持ちが溢れ出して涙をこぼしながら…。それでも彼は黙って頷いて話を聞いてくれた。彼は私の話が終わると、こう言った。
「辛かったですね…。本当にあなたはよく頑張りました。私はいつもあなたの味方ですよ。いつでも相談にのりますからね。」
彼は優しく、でも真剣に話してくれた。
「…ありがとう。」
私は色んな気持ちを込めて、その一言を頑張って伝えた。
紅茶はもうぬるくなってしまっている。だけど、優しくて深い香りはいつまでも私を包み込んでくれていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈