この間、開花宣言されたと思ったら、あっという間に満開になり、次の休みに歩きながら桜でも見ようと思っていたのに……
次の休みは五日後、まぁ、ギリギリ満開は逃しても遅咲きの桜は見れると思っていた。
しかし天気は日々変わるもので、開花から満開まではお天道様の頑張りで一週間足らずでそれに至ったが、満開からはあいにくの大荒れ天気。
暴風雨で、花散らしの雨どころか、樹木丸ごと飛んでいったニュースまで流れていた。雹も降ったり雷が鳴ったり春の大嵐である。
満開から五日後の本日、仕事は休み。
ダメ元で桜の木の下へと足を運んでみる。
うん、やはり枝には花どころか、葉っぱすらない。
はぁ、と、ため息をついて足元をみると、水溜まりや湿った地面に、桜の花びらの絨毯が広がっていた。
上ばかり、咲いた桜ばかりをみていたが、散った桜もまた風流ではないか。
俺は下を向いていたが、心は前向きになった。
嵐の後の空気も、気持ちがよいくらいに清々しかった。
【桜散る】
あたりは焦げ臭く、視界は煙で狭く、息苦しい。大きく息を吸うと思い切りむせ返ってしまう。
煙のせいで、今が夜なのか昼なのかもわからないくらいに暗い。暗いのに火の手で不気味に赤い光があった。
パチパチと物を燃やす音と、時折ズサズサと燃え落ち崩れた物の音が聞こえる。人の呻き声と子どもや動物の鳴き声も聞こえた。
あぁ、どうして私は、戦争がある世界に生まれてしまったのだろう。
安心して眠れない、満足にご飯は食べれない、衛生面なんて考えたこともない。今生きることに必死、今日死ななかったことが奇跡だ。
ここではない、どこかでは、戦争とは無縁なところがあるらしい。
いいなぁ、生まれた時から戦争が日常だった私には考えられない世界だ。
羨ましい、疎ましい、僻んでしまう。私もそこにいきたいな。
もし明日死んでしまったら、次生まれ変わる時は、戦争のない、ここではない、どこかで生きたいな。
起き上がる気力もない、横たわっている私に、火の粉が降り注いでくる。気付くと身体に無数の木材が突き刺さっていた。
戦争なんてなにもない。平和などこかで幸せになりたい。
【ここではない、どこかで】
四月の半ば、こんな新生活の時期に、私の地元で同窓会があった。地元とは疎遠となり、かれこれ十年ぶりの同窓会参加である。
毎年同窓会は通例で行っていたらしいが、最近の流行り病の影響か、同窓会自体が四年ぶりのようだ。
十年も会っていないと色んなことが変わる。
まさか担任の先生が亡くなっていたことも知らなかったし、海外に行ってしまった同級生がいることも驚きだった。
みんな良い大人になったんだなぁ、と感心してしまう。
そんな中、私は夢を追いかけて上京して、色々踠いたが夢は疎かになって、十年ぶりの帰郷。情けなくて、本当はこの場を離れたいくらいだった。
でも、少しだけ下心があって参加をした。
同級生の女の子、私の初恋の相手である。
当時は可愛らしいツインテールで目はくりくりで、えくぼがあって、お人形さんのような女の子。
しかし、現実は無情にもそれを打ち砕く。
「ママ~、おりがみ折って~」
「えー、今~?」
その初恋の女の子は『ママ』になっていた。
隣には、私が初恋をした当時のままのような、女の子が座っている。
--そうか、ママ、か。
今でも彼女のことが気になっていたのだが、この気持ちは伝えられそうにない、届かぬ思いとなってしまった。
宴会ムードで騒がしいはずなのに、何故か私の回りだけ無音になっていた。
【届かぬ思い】
もし神様がいるのならば、ねぇ、神様、どうして私にこんな試練を与えるのですか?
私なら耐えられるぎりぎりの試練を与えているのですか?
母に捨てられ、父に犯され、クラスメイトにいじめられ、好きな人に先立たれ、育児でお金も時間もない。
神様へ、私は何か悪いことをしましたか?
せめての救いは、この子の成長を見届けれることでしょうか。
これで私まで事故や病気で、この子をおいて死んでしまったら、それこそ死にきれない。
神様は残酷だ、それかいないのかもしれない。
でも、もしいるのであれば、良心を持ち合わせている神様ならば。
神様へ、ノドカが一人立ちできるまでは、生きさせて下さい。
【神様へ】
※シリーズのものをまとめた続編
雲一つない空だった。
澄みきった青空が広がっている。
電線の上で楽しそうに小鳥たちがさえずっていた。
本日は快晴。
春の穏やかな陽気に包まれている。
珍しく風もそよ風程度である。
こんなに気持ちの良い春の気候なのに、どうして私は仕事をしているんだろう。
窓からお気持ち程度の空の様子はみてとれるが、鳴り止まないクレームのコール音。
みんな一回外に出ようよ、そのクレームは本当に必要なものですか?
気持ちの良い日差しを浴びて、心を浄化してから、そのクレームをもう一度考え直してみてよ。
いや、もしかしたら、クレームを伝えたことによって、快晴な気持ちになる人もいるかもしれないけれど。
快晴の日は、毎度そう思う私なのでした。
【快晴】