喜村

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 四月の半ば、こんな新生活の時期に、私の地元で同窓会があった。地元とは疎遠となり、かれこれ十年ぶりの同窓会参加である。
毎年同窓会は通例で行っていたらしいが、最近の流行り病の影響か、同窓会自体が四年ぶりのようだ。

 十年も会っていないと色んなことが変わる。
まさか担任の先生が亡くなっていたことも知らなかったし、海外に行ってしまった同級生がいることも驚きだった。
 みんな良い大人になったんだなぁ、と感心してしまう。

 そんな中、私は夢を追いかけて上京して、色々踠いたが夢は疎かになって、十年ぶりの帰郷。情けなくて、本当はこの場を離れたいくらいだった。
でも、少しだけ下心があって参加をした。
 同級生の女の子、私の初恋の相手である。
当時は可愛らしいツインテールで目はくりくりで、えくぼがあって、お人形さんのような女の子。

 しかし、現実は無情にもそれを打ち砕く。
「ママ~、おりがみ折って~」
「えー、今~?」
 その初恋の女の子は『ママ』になっていた。
隣には、私が初恋をした当時のままのような、女の子が座っている。
--そうか、ママ、か。
 今でも彼女のことが気になっていたのだが、この気持ちは伝えられそうにない、届かぬ思いとなってしまった。
 宴会ムードで騒がしいはずなのに、何故か私の回りだけ無音になっていた。
 


【届かぬ思い】

4/15/2023, 1:24:35 PM