人の目は嫌いだ。
何を思っているのかわからない。
全員の目が僕を殺しにかかっているかのような感覚に陥る。
だから僕は人の目を見ない。
他の人からは、ちゃんと目を見ろだの視線そらすよねだの言われるが、知ったことじゃない。
嫌いなのだ、怖いのだ。きっとこれは、一種の病気なのだろうと僕も思っている。
家に帰ると、尻尾をぶんぶん振って愛犬が駆け寄ってきた。
飼い猫は主人の出迎えを一応はしてくれたが、相変わらず愛想はない。
インコが高い声で「おかえり!」と声をかけてくれる。
やはり人間じゃない動物はいい。
人間と違って、目が穢れていない。安らかな瞳だ。
どうして僕はこんな汚い人間に生まれてしまったのだろう。願わくは僕も人間じゃない動物になりたかった。
【安らかな瞳】
穏やかに晴れた日だった。
桜は満開で、あなたから珍しく「お花見に行こう」とデートのお誘いがあったっけ。
あたりは桜の匂いでいっぱいで、同じようなカップルや老夫婦、家族連れでごった返していた。
周りの人にあわせるように、あなたは私の手を繋いでくれた。
夜なのに暑苦しい日だった。
年に一度の夏祭りで、カップルの定番行事でもあるので、私からデートに誘った。
浴衣姿の私をおだててくれて、満更じゃない私は浮かれて屋台巡りをした。
物凄い人並みで、あなたははぐれないようにと手を繋いでくれた。
だんだんと寒さが強くなってきた日だった。
木の葉が色づき、生まれて初めて「紅葉狩り」というデートをしてみた。
出店もないし人混みも少なく、老人やペット連れが多い大人な空間。
カップルも多くないので、あなたは少し恥ずかしながら手を繋いでくれた。
クリスマスに初詣、冬のイベントが盛りだくさんの時期。
ほぼ毎日あなたとすごして、たくさんお話して、たくさん手を繋いでくれた。
ずっと隣でいたかったので、私とあなたが結婚して、ノドカが生まれた。
ずっと隣でずっと一緒、幸せな家庭、絵に描いたような眩しい家族。
台風が近づいてきた秋口。あたりには木の葉が散らばっていた。
雨は音を立てて降り、風は耳鳴りのように吹き荒ぶ。
あなたの手を繋ぐ。しかし、握り返してはくれなかった。
--ずっと隣で、ずっと一緒でいたかったのに……
【ずっと隣で】
※【太陽のような】の続き
あなたの全てが知りたい。
本名を知りたい、年を知りたい、どこに住んでいるか知りたい。
ネット世界だから、あなたのリアルを知りたいと思うのは当たり前でしょ?
今好きな人がいるか知りたい、どんな髪型の人が好きか知りたい、どんなスタイルの人が好きか知りたい。
あなたのことを好きになってしまったのだから、知りたいと思うのは当たり前でしょ?
どんな仕事をしているのか知りたい、兄弟とかいるのか知りたい、いつ休みなのか知りたい。
あなたのリアルの知り合いと繋がって土台を作りたいから、把握しておきたいと思うのは当たり前でしょ?
私はもっともっと、あなたのことを知りたい。
過去にどんな人と付き合っていたのか、そして何故その恋は破綻したのか。
将来は何人子どもがほしいのか、新居はどうしたいのか、仕事はこのまま続けるのか。
飛躍しすぎ? 付き合ってもないのに?
あなたのことをもっと知りたい。そして、私は失敗しない。大好きなあなたとずっと一緒にいたいから。
成功したいので、あなたのことを、もっと知りたい。
【もっと知りたい】
目を開けると、見慣れた天井があった。
カーテンの隙間から差し込む光があたっている所が若干温かい。
寝返りをうちスマホで時間を確認する--6時半。アラームより少し早く起きたらしい。
今日も学校に行って、授業を受けて、部活やアルバイトはしていないからそのまま家に帰る。
宿題があればやるけれど、ないなら夕飯までスマホをいじって、夕飯を食べてお風呂に入って、またスマホをいじってそのまま寝る。
毎日その繰り返し。つまらなく変化のない毎日。
だからと言って、これといった刺激を求めている訳ではない。
このままなんとなく、平和で平穏な日常を過ごすことに何か問題があるのかと言われたらそうではない。不満があるのかと言われたら返答に困るけれど。
さて、今日もいつもの一日が始まるのか。
私はむくりと起き上がる。ベッドが反動でギシリと鳴った。
シャーッとカーテンを開けると、朝日が射し込み私を包みこんだ。
--そう、光に包み込まれたのだ。
私の知っている平穏な日常、いつもの一日、ではない。
その光はまばゆく、視界が真っ白になる。
視界が戻った時、私の目の前にあった光景は……。
【平穏な日常】
※なにかの物語の冒頭みたいな感じに。
愛がほしければ、こちらも愛さなければいけない。
平和がほしければ、ルールを守らなければならない。
ほしいだけじゃだめなんだ、その分の努力をしなければならないんだ。
私は愛されたかった。もちろんそれ以上の愛も注いだ。愛されたいから愛した。
私は平和で平穏な生活を求めていた。だから悪いことなどしなかった。争いごとなんてしたくないから秩序を守った。
そう思っていたのに、全てを突き放された。
--お前は見返りばかりだな。
彼はそう言い放って私の元から離れていった。
愛と平和がほしかっただけなのに。
これらはほしいと求めてはいけないものなの?
【愛と平和】
7年前くらいの実話、つらぁ