なんて薄っぺらくて、なんてつまらない言葉なんだろう?
愛してる、好きだ、なんて、口に出して言うことになんの意味があるのだろう。
かっこよく英語でLove you?尚更胡散臭さが増す。
私は知っている、あなたはいろんな女の子に、そんな浮いた言葉を使っていることを。
私だけじゃなく、色んな女の子を手玉にとって、愛してるよ、好きだよ、I LOVE YOU、なんて文面を送っていることを。
色んな女の子にじゃなく、その言葉は私だけにかけてほしいのに。私だけの人になってほしいのに。
あなたのLoveは軽すぎた。
明日は金曜日、資金調達も下調べも完了した。やっとこれで会いにいける。
本当の愛を届けに行くよ。言葉だけじゃない、文面だけじゃない好きを。
「ふふ、Love you……」
私はスマートフォンで彼のプロフィール画面を見て呟いた。
【Love you】
※【溢れる気持ち】の続き
元気で明るくて、それでもって周りを熱く盛り上げるようなそんな存在。それがノドカのパパであり、私の旦那。
よくいう、太陽のような存在だった。
太陽はいきなり雲に覆われ、見えなくなってしまった。
それまでその温かさになれてしまい、太陽がいないとこんなにも寒いものなのかと思い知らされた。
寒くなると心細くなり、自暴自棄になってしまう。梅雨時期の憂鬱に似ている。
やはり彼は、私の太陽だったのだ。
「ママ~?」
ノドカが不思議そうに声をかける。
私は一人でこの幼子を果たして育てられるのかも不安である。
「なーに?」
「にこにこ!」
ノドカは無邪気に笑ってみせる。
私の不安を察したのか、笑顔をふりまいてくれる。
あぁ、私には太陽がもう一つあったようだ。
旦那は雲に陰ったのではなく、海に沈んでしまったようだ。もうその日の出を拝むことはない。
でも新たに、ノドカという太陽のような存在が上ってきた。この太陽は手におえないくらいの暴風雨の時もあるけれど、ね。
【太陽のような】
※【勿忘草】の続き
何もない0からのスタートは、誰だって怖いものだ。
0から1にするには、ものすごいエネルギーを使う。
それも、どれだけエネルギーを使っても1に辿り着かない時だってある。
だから怖いのだ。
逆に1から0にすることもまた、怖いものである。
それまでようやく1として作り上げた土台の安定を崩すというのも、そのあとまた0になると分かっているだけに、0から1にする苦労を知っているだけに、怖いのだ。
人間関係にしても、転職にしても、引っ越しにしても、0からのスタートは、とても恐怖でとても疲れることである。
0からのスタートだからこその発見や楽しみもあるのだが、果たしてみんなはそれを見出だすことができるのだろうか。
0からのスタートに、光を見つけられれば、それは素晴らしいスタートであり、有意義に1を作り上げられるだろう。
【0からの】
バリバリの仕事人だった私に、赤ちゃんが生まれた。
とてもふにゃふにゃで、柔らかくて、くしゃくしゃで、でも日々成長している。
産後は八週目から仕事復帰をしていいらしい。法律でそう定められている。
事前準備を怠らない私は、既に保育園も確保し、その八週目から仕事に戻った。
「中田さん、お久しぶりです~体大丈夫ですか?」
後輩達がみんな私を出迎えてくれた。お祝いも色々もらっていただけに、育児休暇のない会社の私は更に働かなければ、という気持ちにかられていた。
そんな時だった。
「中田さん、保育園から電話です~」
子どもが熱を出したらしい。
「子どもが小さいから仕方がないですよ!」
「今は復職期間ってことで!」
みんなから同情された。
「働いてるだけでもすごいことですよ!」
「旦那の稼ぎがよかったら私なら仕事辞めちゃうくらいですから、中田さんはすごいです!」
その同情が、やけに痛くて。
産後のメンタルはずたずただ、その同情はマイナスの意味にしか捉えられない私にも苛立ちがある。
「中田さん!?」
私は初めて職場で泣いた。接客業の現場で、泣いてしまった。
この涙は、なんの涙なのだろう。
【同情】
※【冬休み】の続編
落ち葉には、
緑色でまだ元気なのだが、風で飛ばされたりしてやむなく落ちたものと、
もう元気がなく、枯れてしまったものがある。
人の夢もそれに似ている。
夢に向かう元気があり、まだ諦めきれていないが、時間とお金とが折り合いつかずに逃してしまった夢と、
圧倒的にこれは無理だと諦めて、または目を背けた夢。
植物の枯葉は、枯れたり変色したらもう戻ることはない。
でも、夢の枯葉は、いつの日か再び芽吹くことだってある。
社長になりたい、メジャーデビューしたい、お店を出したい。いつの日か夢見て枯れてしまったものでも、もしかしたら、枯れ果てていない葉っぱだとしたら。
神様はその枯葉を拾い上げてくれるかもしれませんね。
【枯葉】