人の命は限りあって、だからそのために精一杯生きるのであって。
それが仮に1000年先も生きていたら、日々の感激は薄れていくものである。
だから、人間は儚いけれど、毎日が輝いていて羨ましいと思う。
偉そうに言っているが、お前は誰かって?
私は地中深く眠っている化石だ。元は命を宿しているが、それももうずっと昔の話だ。
それこそ、千年やそこらではない。
そしてこれからも、誰かが掘り起こさなければ、千年先もここで眠っている。
あぁ、しんだら終わりだと思っていたのに、こうやって何千年も体は古びてはいるが存在している。
こんなことなら、生きていた時にもう少し名前をとどろかせていればよかった。
みんなも、しんでもそのまま残る場合もあるから、悔いなく生きてくれよ。
【1000年先も】
この花は、春の訪れを知らせる花なんだって。
小さくて可愛いね。
パパとママが出会ったのも、ちょうどこの花が咲いている春の時期に出会ったのよ。
春は出会いの季節っていうけど、本当にその通りだったな。
ノドカは、パパのこと覚えてる?
ノドカが今よりもーっと小さい時にお星様になったんだけどね。
この花を見ると、ママはパパのこと思い出しちゃうんだ。
ノドカも、まだパパのことを覚えていたら、忘れないでいてあげて。パパ、きっと喜ぶから。
パパ、あなたはまだ私達のこと、覚えてる?
見守っててくれている?
私達も覚えているから、忘れないでいるから、あなたもちゃーんと、忘れないで見守っててね。
【勿忘草】
※【とりとめのない話】の続き
こんなに良い天気なのに、公園には誰もいない。私が子どもの時は、親や友達と一緒にこの公園にきていたのに、人っ子一人いない。
少子高齢化とは言うけれど、これ程子どもを見なくなってしまったのかと思った。
--キィ……
風に揺れて遊具のブランコが鳴る。
きっと整備もなれていないだろう、随分と錆び付いている。
お昼休憩でコンビニ帰りの袋を持っていた私は、そのブランコの鳴き声に足を止める。
--キィ……
私は周りを見回した。誰も見てない、よね?
コンビニの袋を片手にブランコに着席する。
せっかくなので、ここでお昼ごはんを食べよう。
もし人が来たら避ければいいよね?
よくドラマとかで、サラリーマンがワンカップ片手にブランコやベンチに座ってるシーンを見る。
私はサンドイッチを食べながらため息をつく。
いつからか、私もそんな大人になってしまったのか、と。
--キィ……
漕ぐまではいかないが、足でブランコを揺らしてみる。
懐かしい音がした。
【ブランコ】
なんだかとっても陽気がいい。
風も強くなく、寒すぎず暑すぎず、お日様が優しく照らしている。
そうだ、旅に出よう!
こんな旅立つのに良い日よりは中々ない。
思い立ったら即行動!
俺はバッグに財布と飲み物など、最低限の持ち物を詰め込み、旅に出た。
旅と言ってもあてなどない。日帰り旅行と言われたらそれまでかもしれないが、今の時代の旅とはそういうものではなかろうか。
予定など決めずにふらりと遠くのどこかへ行く。観光をするでもなく、ただふらふらと。
行き当たりばったりだから、予定外なんてこともない。ただ天気がいいな、歩いてどこかにいこう、綺麗な景色が見れたらラッキーだな、そんな程度の旅。
旅が終わると、また明日からの現実に引き戻される。また次の旅に出るその日まで頑張ろうと、旅路の果てに思うんだ。
きっとまだ果てに辿り着いてないのだろうけれど、果てに辿り着くために、小さな旅を重ねていくんだ。
【旅路に果てに】
私には、気づいた時には母親がいなかった。
幼稚園の母の日のプレゼント作りや小学生の時の参観日、何故か普通に友達には母親がいて、私が普通じゃないことに気付き始めた。
今の時代だと片親も珍しくないけれど、やはり周りから視線は薄々感じていた。
母親に会いたい。
いつからかそう思う気持ちは薄れてきた。自分が他と違うから憧れて、幼い頃は会いたいと騒いでいた記憶はある。
机の引き出しには、父親には内緒の鍵付きの引き出しに母親へのプレゼントが入っている。
幼稚園の時に作った母の日のプレゼントや、運動会でのメダルなどの自慢したい品々。
なんで私をおいていったのか、とか、いつからいなくなってしまったのか、とか、聞きたいこともたくさんあるけれど、一つだけ。
恨んでないから、憎んでないから、好きだから会いたい。
この思いと自慢の品々をあなたに届けたい。
【あなたに届けたい】