姉ちゃんがしんだ。まだ14歳だったのに。
メンタルが弱っていて、最近はずっと寝たきりだったけれど。
でも、元気だった時の姉ちゃんも知っている。
明るくてハキハキしてて、小学校の時は頼れる自慢の姉ちゃんだった。
運動会の時に転んで怪我をした時は、生徒席から走って助けにきて一緒に救護エリアについてきてくれたり。面倒見の良い優しい姉ちゃんだった。
変わったのは中学に上がって部活を始めてから。その持ち前のリーダーシップが仇となって目をつけられていじめられていたらしい。
どうして姉ちゃんがそんなくだらない理由でターゲットにされなきゃ行けなかったんだ。
一緒にかけっこして遊んでた時も、終わりの見えない他愛のない会話をしていた時も、ずーっと姉ちゃんは笑っていた。
棺の中の姉ちゃんも、笑っていた。
どうして、笑ってられるんだ。
もうそっちには僕らはいないよ? なのに、こっちよりもそっちの方がよかったの?
どうして、置いていってしまったの。こっちの僕らはちっとも笑顔になんかなれないよ……。
【どうして】
※昨日のお題【夢をみてたい】の後日
カーテンも開けず薄暗い部屋の中、少女はベッドの中に潜り込んでいる。
時間は10時、普通の少女くらいの年代であれば学校に行っている時間である。
ぼんやりと、カーテンの隙間からこぼれている一筋の光を眺めていた。
すると、目を見開いたままの状態で、涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。頬を伝い、枕にシミがつく。
--動けない。
少女も好きでベッドに横たわっている訳ではないようだ。
本当ならみんなと一緒に学校にだって行きたい、こんな何もできない自分に嫌気がさしている様子。
目をつむってストンと眠れればどれだけ楽なのだろう、少女は更にぼろぼろと泣き始めた。
--夢をみてたい。
こんな現実で無力な自分を投げ出して、夢の世界へと行きたい。
夢の世界なら走ることも空を飛ぶことも話をすることも、なんでもできる。昔できたことがまたできるようになる。
あぁそうだ、ずーっと眠り続けることもできる。
--もう疲れたよ。
少女はやっとの思いで、一筋の光を生み出していたカーテンを開ける。
物凄く眩しくて涙を流して腫れている目が潰れそうになった。
--ずっと眠っていて、夢をみてたい。
少女は窓を開けた。雨も雪も降っておらず、乾いた冬の空気。濡れた頬には痛い寒さだった。
少女は窓枠に足をかける。
それからはあっという間だった。
--おやすみなさい。
【夢をみてたい】
大切な人と一緒にいる時、仕事も学校もなく休みでいる時、冬場のコタツや布団の中にいる時。
きっと誰しも一度くらい、ずっとこのままでいたい、と思ったことがあるだろう。
でも実際、ずっとこのままでいていいのだろうか、と同時に罪悪感もうまれるはずだ。
私は職を失った。
貯めていたお金で毎日遊んでいた。
仕事をして、休みの時に豪遊していた時は、このまま仕事なんてせずずっと遊んでいたい、と思っていたはずなのに。
いざ仕事を辞めて遊んで過ごしていると、空しさだけが残っていた。
仕事中に、ほっと一休みの15時のおやつと、休みの最中にだらけて食べる15時のおやつ。
同じ時間のはずなのに、何故か美味しさが違うのと似ている。
ずっとこのまま、が、できるはずなのに、ずっとこのまま、をしていては、何かがだめになってしまう。
理想であって、現実でそれをしてしまっては、メリハリがなくなり堕落してしまうと、人はきっとどこかで思うのだろう。
【ずっとこのまま】
ぬくぬくと過ごしていた年末年始が終わった。
世界は、いつものように動き出した。
朝夕はこんなに寒かったのか。
俺はマフラーに顔を埋めた。
寒くなければ、スマホを触りながら歩道を歩くところだが、寒すぎて手袋をしていてもポケットから手を出したくない。
なんなら、出来る限り肌を露出したくない。
年末年始はこたつに入ってごろごろしていた時間帯……俺は職場につくなり、時計を見てため息をついた。
そこへ、どん、と音を立てて書類が置かれる。
「年末年始の長期休暇に入る前にやれっていったよね?」
女性の上司が冷たい視線で俺に圧をかける。
外気温も寒さが身にしみたが、会社内でも背筋が凍るような冷たさを感じることになるとは。
【寒さが身にしみて】
今は18歳から成人、選挙権ももてるようになった。自立した立派な大人だ。
……と、言いたいところだが、実際のところ、まだまだ解禁ができるのは、20歳になってから。
お酒とタバコは二十歳から。このキャッチコピーはそのままである。
140年間程、成人は20歳と定められていたのだから仕方がない。
でも、だからといって、20歳になれば立派な大人なのかと言えば、そうでもない。
大学ニートなる親のすねかじりをする人も少なくはないし、初めてのお酒やギャンブルで身を滅ぼす人も多い。
逆に、中学卒業して高校に行かなくとも、15歳で立派に仕事をしている人だっている。
区切りなんて、あるようでない。
二十歳すぎれば只の人、という言葉がある。
そうなのだ、とりあえず、子、という意味合いはなくなり、一般の、人、になったのだ。
20歳になろうとしているあなたは、もしくは、20歳になった時のあなたは、きちんと、只の人、として生きていますか?
【20歳】