喜村

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 カーテンも開けず薄暗い部屋の中、少女はベッドの中に潜り込んでいる。
時間は10時、普通の少女くらいの年代であれば学校に行っている時間である。
 ぼんやりと、カーテンの隙間からこぼれている一筋の光を眺めていた。
すると、目を見開いたままの状態で、涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。頬を伝い、枕にシミがつく。

--動けない。

 少女も好きでベッドに横たわっている訳ではないようだ。
 本当ならみんなと一緒に学校にだって行きたい、こんな何もできない自分に嫌気がさしている様子。
 目をつむってストンと眠れればどれだけ楽なのだろう、少女は更にぼろぼろと泣き始めた。

--夢をみてたい。

 こんな現実で無力な自分を投げ出して、夢の世界へと行きたい。
 夢の世界なら走ることも空を飛ぶことも話をすることも、なんでもできる。昔できたことがまたできるようになる。
 あぁそうだ、ずーっと眠り続けることもできる。

--もう疲れたよ。

 少女はやっとの思いで、一筋の光を生み出していたカーテンを開ける。
物凄く眩しくて涙を流して腫れている目が潰れそうになった。

--ずっと眠っていて、夢をみてたい。

 少女は窓を開けた。雨も雪も降っておらず、乾いた冬の空気。濡れた頬には痛い寒さだった。
 少女は窓枠に足をかける。

 それからはあっという間だった。

--おやすみなさい。

【夢をみてたい】

1/13/2023, 10:48:54 AM