「ワタナベ、それ一年生の頃から使ってない?」
高校三年生の冬、私はクラスの一部からいわゆる『いじめ』を受けていた。
ボスである女からなにかと、からかわれたり、突っかかってこられる毎日。
「一年生の頃からじゃないよ、中3から」
にっこり笑顔で私はそう切り返す。
「はぁ!? 中3!?」
「ワタナベ家はそんなに貧乏なのかよ!」
どっと爆笑の渦である。
「大切な彼氏からもらったものなの♪ 使えるうちは大人になっても使うよ?」笑顔のまま使える「それとも、みんなはコロコロ彼氏が変わるから、その都度プレゼント捨ててるの? あ、それとも、プレゼントもらったことない、とか? かわいそ……」
私が全部言いきる前に、ボスの女が持っていた水筒の飲み物を私にかける。
「あ、ごめん、水筒の蓋しまってなかったみたい~」
あはは、と笑ってそのグループは撤退していった。
冬の下校時間は、陽が昇っているのにもう寒い。更に飲み物を頭からかぶっているので尚更だ。
「ごめんごめん、待った?」
短く刈った茶髪の私の彼氏が、駅のホームから駆けてきた。
「ううん、大丈夫!」
「あ! 今年もその手袋使ってくれてるんだね!」
「うん! だから温かかったよ~」
彼氏は、へへへ、と笑ってくれた。
どんなに嫌がらせを受けても、私は大丈夫だからね。
私は手袋越しに彼氏と手を繋いだ。
【手ぶくろ】
追記、ゆずの香り、の数年後
私は数年前に故郷を捨てた。
とても田舎で、街灯は少ないし、娯楽施設もない。
雪はたくさん降るし、公共交通機関もあってないようなものだ。
もうこんな場所嫌だ!
どこかでそんな歌を聴いたことがあるが、まさにその通りで、故郷を捨てた。
今は大都会·東京へと上京し、何年か経ったある日。流行り病も落ち着き始めた頃合いを見計らって、久々の帰省である。
新幹線を使い、電車に乗り継ぎ、本数の少ないバスに揺られてついた。
変わらないものはない。
それは、進化、だけではない。
故郷は変わっていた。
悪い意味で変わっていた。
電車は廃線になり、唯一のコンビニも潰れ、廃屋が増えている。
私は故郷を捨てて、果たしてよかったのだろうか。
しかし、私一人がいたことで、何か良い意味での変わることはできただろうか。
何もないこの場所で、変わらず残っていたのは、実家だけ。
私は自室で、しばらく呆けた。
【変わらないものはない】
皆さんは今年のクリスマス、どのように過ごしましたか?
日曜日にクリスマスとかぶる、しかもクリスマス寒波が到来で、もれなくホワイトクリスマス。
カップルで過ごせました? 家族サービスとしてお子さんと過ごしました? または、クリスマスをそもそも特別扱いしてませんか?
きっと、十人十色のクリスマスの過ごし方があったことでしょう。
え? 私ですか?
私は仕事をして過ごしました。
なんなら、いつもより1時間早い出勤でした。
もれなく12時間勤務でした。
クリスマスプレゼントは、残業代といったところでしょう。
さぁ! でも、まだ12月25日は残っています!
私はこれからクリスマスを堪能しますよ!
メリークリスマス!
【クリスマスの過ごし方】
眠い。とっても眠い。時間は23時。
小学4年生の僕には、とっても眠い。
今日は12月24日、クリスマスイブです。
僕には、今日しかできない任務がある。
--サンタクロースの正体を確認する。
それが今日の僕の任務である。
だがしかし、とてつもなく眠い。
ちょっと布団の中に入ってしまうものなら、ものの数秒で眠ってしまうであろう。
でも、眠っていないと現れないのは、ここ数年で学習した。
寝ちゃいけないのに布団に入って寝たふりをする。試練でしかない。
や、やばいー、ねむ、い……
そんな時、スーッとふすまが空いた気配がした。
サンタだ! サンタクロースだ! 絶対にその正体を見てやる……!
むくりと僕は起き上がった。
そして、サンタクロースの正体をみた。
その正体は--
それは、みんなもクリスマスイブの夜に確かめてみてくれ、健闘を祈る!
【イブの夜】
平成の時代だったら祝日だった、本日12月23日。
令和の現在は、通常の平日。俺は仕事に明け暮れていた。
そんな時、彼女からのメッセージで、スマホが明るくなる。
『明日のデート、楽しみ♪』
そう、明日はカップルの一大イベントのクリスマスイブ。幸いなことに、俺には彼女がいるので、このイベントを十分に楽しむことができる。
はずなのだが……
俺はため息をついて、仕事中だが返信をうつ。
デートが嫌な訳ではない、彼女が嫌いな訳ではない。
--クリスマスプレゼントをまだ用意していないのだ。
前に彼女がいた時は、前日の本日が祝日で、仕事も休みなので、ゆっくりプレゼントを選べる時間があったのだが……時は令和、暦通りの仕事の俺には、そんな余裕が本日なかった。
(どうしよう……)
また大きくため息をつく。
悩んでいても仕方がない、仕事が終わるのは20時、帰り道に開いている店をとりあえず入ってみて……
「おーい、佐藤、この間の報告書、ミスだらけだから残業してでも書き直せってよー」
俺の頭の中は、雪のように真っ白になった。
【プレゼント】