喜村

Open App
11/25/2022, 11:04:36 AM

【太陽の下で】

太陽さんへ。

 僕は、いつでも君の方を見ている。
さんさんと降り注ぐその光は、とても眩しくて、めまいさえしてしまうくらい。
 でも、目をそらそうとしてもできないんだ。それが僕の習性だから。

 君が動くと、僕もそちらに顔をむける。
からだ自体は深く根をはっているので、顔だけ君をおいかける。
 ストーカー? いいや、僕は君からエネルギーをもらっている、いちファンです。

 たまに、あまりの君の強さに喉が渇いてしにそうになる。でも、両手を広げて、君の力強さをうけとめるんだ。

 太陽の下、それが僕の定位置。
また来年、夏になったらお会いしましょう。

ひまわりより。

11/24/2022, 12:22:22 PM

【セーター】

 洗えば洗うほど、小さく縮んでしまうものって、なーんだ?

 え? セーター?

 はずれー、正解は、あなたの心。

 世間の荒波に揉まれれば揉まれるほど、
綺麗に洗おうとすればするほど、
独立して個性のあった感情という繊維が、
ぎゅーっと、ひとまとまりに縮こまっちゃうの。

 そうか、セーターもそうだね!
 あなたはセーターに似てるかもね!

 デリケートなのに、寒くて冷たい社会に放り出されて、主という上司を温めなくちゃいけない。
 セーターみたいだね?

11/23/2022, 11:25:43 AM

【落ちていく】

 二歳児くらいの子は、パタパタと丘を駆けていく。
「みててね~!」
 そういうと、自分の身体の半分くらいある、ピンク色の大きなボールを下に向けて、放り投げた。
 ボールは弾みをつけて、ポンポンとリズミカルに下へと落ちていく。
 自分で投げて、転がり落ちたボールを、きゃっきゃと笑いながら追いかけ、それを抱え、また上へとのぼる。
「みててね~!」
 その子は、また、先ほどと同じようにボールを放り投げる。そしてそれを見ては笑うのであった。

 何が面白いのだろう。
 ボールが下へと落ちていっているだけなのに。

「誰に『みててね』って言ってるの?」
「ママ! あのね、そこにいるパパにみててもらってるの!」

 ママと呼ばれた彼女は、信じられない、といった表情で、こちらを見る。
「みててね~!」
 私は見てることしかできない。
 私のからだをすり抜け、ボールはまた下へと落ちていくだけだった。

11/22/2022, 12:34:38 PM


 とある昼下がり、主任が休憩に行っている最中に、後輩が私に訪ねる。

「主任って、なんで離婚したんですかね?」

 洗い物のグラスを落としかけそうになる私。

「はい?」
「今日って、いい夫婦の日じゃないですか、主任はその日に結婚したのに、離婚してるの、不思議ですよね?」

 後輩にとっては素朴な疑問だったのかもしれない。

「好きで結婚して、色々知って夫婦になって、記念日まで作ってるのに、なんで離婚するんだろう」
「後輩くん、それはね、外野がとやかくいう話じゃないんだよ。夫婦になるのも大変だっただろうけど、夫婦になってからも、好きだけじゃなんともならない大変さがあるんだよ」
「ふーん、そういうものですか」

 本当にわかったのかは知らないが、一応私なりに諭してみた。
 なんだか今日は、やけに空調がきいている気がした。

【夫婦】

11/21/2022, 10:37:14 AM

 大好きな人と別れた。
付き合って五年、きっとこのまま結婚するものだと思っていたのに。
『ごめん、別れよう』
 対面でなく、電子の文字でそれだけ。

 もう何もしたくなくなって。
ご飯を食べる気力もなくて、寝るにも眠くなくて、散財してやろうにも元からお金はなかった。

 死のうかな、と思ったけど、よくやり方がわからなくて諦めた。
 誰かに殺してもらいたかったけど、そんなお願いを聞き入れてくれる人も身近にはいなかった。

 何をするにも何もない。何のために生きているの?
 一体、どうすればいいの?

【どうすればいいの?】

Next