【太陽の下で】
太陽さんへ。
僕は、いつでも君の方を見ている。
さんさんと降り注ぐその光は、とても眩しくて、めまいさえしてしまうくらい。
でも、目をそらそうとしてもできないんだ。それが僕の習性だから。
君が動くと、僕もそちらに顔をむける。
からだ自体は深く根をはっているので、顔だけ君をおいかける。
ストーカー? いいや、僕は君からエネルギーをもらっている、いちファンです。
たまに、あまりの君の強さに喉が渇いてしにそうになる。でも、両手を広げて、君の力強さをうけとめるんだ。
太陽の下、それが僕の定位置。
また来年、夏になったらお会いしましょう。
ひまわりより。
【セーター】
洗えば洗うほど、小さく縮んでしまうものって、なーんだ?
え? セーター?
はずれー、正解は、あなたの心。
世間の荒波に揉まれれば揉まれるほど、
綺麗に洗おうとすればするほど、
独立して個性のあった感情という繊維が、
ぎゅーっと、ひとまとまりに縮こまっちゃうの。
そうか、セーターもそうだね!
あなたはセーターに似てるかもね!
デリケートなのに、寒くて冷たい社会に放り出されて、主という上司を温めなくちゃいけない。
セーターみたいだね?
【落ちていく】
二歳児くらいの子は、パタパタと丘を駆けていく。
「みててね~!」
そういうと、自分の身体の半分くらいある、ピンク色の大きなボールを下に向けて、放り投げた。
ボールは弾みをつけて、ポンポンとリズミカルに下へと落ちていく。
自分で投げて、転がり落ちたボールを、きゃっきゃと笑いながら追いかけ、それを抱え、また上へとのぼる。
「みててね~!」
その子は、また、先ほどと同じようにボールを放り投げる。そしてそれを見ては笑うのであった。
何が面白いのだろう。
ボールが下へと落ちていっているだけなのに。
「誰に『みててね』って言ってるの?」
「ママ! あのね、そこにいるパパにみててもらってるの!」
ママと呼ばれた彼女は、信じられない、といった表情で、こちらを見る。
「みててね~!」
私は見てることしかできない。
私のからだをすり抜け、ボールはまた下へと落ちていくだけだった。
とある昼下がり、主任が休憩に行っている最中に、後輩が私に訪ねる。
「主任って、なんで離婚したんですかね?」
洗い物のグラスを落としかけそうになる私。
「はい?」
「今日って、いい夫婦の日じゃないですか、主任はその日に結婚したのに、離婚してるの、不思議ですよね?」
後輩にとっては素朴な疑問だったのかもしれない。
「好きで結婚して、色々知って夫婦になって、記念日まで作ってるのに、なんで離婚するんだろう」
「後輩くん、それはね、外野がとやかくいう話じゃないんだよ。夫婦になるのも大変だっただろうけど、夫婦になってからも、好きだけじゃなんともならない大変さがあるんだよ」
「ふーん、そういうものですか」
本当にわかったのかは知らないが、一応私なりに諭してみた。
なんだか今日は、やけに空調がきいている気がした。
【夫婦】
大好きな人と別れた。
付き合って五年、きっとこのまま結婚するものだと思っていたのに。
『ごめん、別れよう』
対面でなく、電子の文字でそれだけ。
もう何もしたくなくなって。
ご飯を食べる気力もなくて、寝るにも眠くなくて、散財してやろうにも元からお金はなかった。
死のうかな、と思ったけど、よくやり方がわからなくて諦めた。
誰かに殺してもらいたかったけど、そんなお願いを聞き入れてくれる人も身近にはいなかった。
何をするにも何もない。何のために生きているの?
一体、どうすればいいの?
【どうすればいいの?】