星乃威月

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9/6/2025, 8:19:09 PM

ふと目が覚めると

周りには誰もいなかった


窓から吹き込む風が

カーテンを揺らす


涼しい秋風に

心寂しくなる


「夏も終わりか
 残り、あと半年……」


卒業まで何を残せるだろう──


残りの歳月を指折り数え

何も残せていない自身に

物悲しくなった



ー誰もいない教室ー

9/5/2025, 9:08:26 PM

突然、体は走り出した

けど、心は「止まれ」と悲鳴を上げている

体と心がバラバラ

なぜ信号を出さない?

助けを求めれば、救えたかもしれないのに



ー信号ー

9/4/2025, 3:36:10 PM

彼女が泣いていた

好きな人に振られたんだとさ

振られてから、三日三晩泣き続けてるらしい

涙が頬を伝い

肩をヒクヒクさせながら、泣き続ける彼女


俺は、言い出せなかった

「俺は、君の事、悲しませたりしないよ」と



ー言い出せなかった「」ー

9/2/2025, 12:55:06 PM

部屋を掃除してたら

古いブックたちが目に止まった


『何だろう?
 冊子がないから、本ではなさそうだし……』


気になり、古びた1冊に手を伸ばした

ホコリを払い、よく見ると、表紙もなかった


『何だろう……
 表紙もないって、なんだか気になる……』


好奇心を押さえきれず

掃除もそっちのけで、とうとう表紙をめくった

見慣れない景色の写真が、びっしりと貼られている


『これ……誰だろう……?』


その中に、見慣れない人を発見した

まだ若い大人の男女が写り

何度か楽しそうな表情を浮かべている


「キョウコ?
 なんだか静かだけど、部屋の掃除は終わったの?」


ハッとした


『この写真の顔、なんだか母に似てる……』

「それがねー!
 古いアルバムみたいなのを見つけて、見入ってたのー!
 海の写真に写ってるの、これ、お母さん?」


1階にいる母に聞こえるよう、大声で叫んだ


「えー?聞こえないー!
 今、行くからー!」


2階に来た母は、煌びやかな微笑みを浮かべて近づき

古びたアルバムの前に屈み込んだ


「これは、母さんと父さんが
 初めてデートした時の写真よ?
 懐かしいわぁ~
 こんなところにあったのね
 きっと、父さんが大事に閉まっていたのよ
 貴女の父さん、
 景色を撮るのが、とても好きな人だったからね」


と、母は若かりし頃を懐かしむように、ページをめくる

海や川、空に山、湖に草花、木々の姿も……

父が、大自然に魅了されていたのが

古びたアルバムをめくる度に、徐々に滲み出してくる


「父さん、本当に大自然が好きなんだね
 なんで今は、写真を撮らなくなったの?」


と、母に訪ねると


「それは、貴女とメイが産まれて、
 仕事に育児に忙しくなったからよ
 大自然は、家の近所にはないからね
 まだ幼い貴女たちを連れていくわけにも行かないし……
 とても危険な場所を通り抜けないと、
 大自然には行き着けられないらしいのよ……」


と、母はがっかりしたように話した


「ってことは、母さんは、
 父と大自然を探検に行ったことないの?」


母は困った顔をしている


「言ったわ
 私も連れてって欲しいと
 けど、大事な人を、危険に晒すわけにはいかないからって
 連れてって貰えなかったの」


と、残念がっていた


母をも連れて行けないほど、過酷な大自然──

アルバムに映る景色は雄大で、どれも優しさに溢れているのに

そんな過酷な背景を潜り抜けて、撮影していたなんて……

私は、言葉を失うと共に

まだ若かりし頃の父が撮影したアルバムをめくりつつ

つかの間の間、写真の景色に魅了されるのだった




ーページをめくるー

9/1/2025, 12:50:30 PM

砂浜に脱ぎ捨てられたままのビーチサンダル

日中に脱ぎ捨て、夕暮れまで過ごしてたのか

持ち主の姿は、どこにも見当たらない


波は相変わらずザー、ザバァーと打ち寄せては引き寄せ

ビーチサンダルを浚おうとするが、なかなか届かない


時が過ぎて、潮が満ちても

ビーチサンダルは、砂浜に置き去りにされたまま

片方のサンダルが風で飛ばされ、徐々に放れていった


それでも、持ち主の姿は見当たらない

置き忘れて帰ったのか、それとも──

ビーチサンダルは置き去りにされたまま

初秋を迎えようとしていた

◇─◇─◇

「あったー!来てぇ~!」

麦わら帽子に、長袖を羽織った、幼い女の子が

靴を履いて、駆けてきた

「サンダル、片方しかない……」

シクシクと涙を流しては、頬にこぼれた涙を、手で拭い

見当たらぬもう片方のサンダルを、テクテク、テクテク

あっちへ、こっちへと足を運び、懸命に探す

「本当に、ここで脱いだの?」

母らしき姿の女性が、まだ幼い女の子の目線まで屈み

辺りを懸命に見回す

どこに行ったのだろう……

「また、買えばいいじゃない
 今日はこの辺にして、ばあばん家から、お家に帰ろう?」

「お気に入りの、ピンクのサンダル……
 あれがいいの……」

女の子は、グスングスン泣き、手で流れ落ちる涙を擦りながら

テクテク、テクテク、砂浜をあっちへ、こっちへ

歩いて、歩いて、探し回った


時は過ぎ、更に肌寒い風が吹き始めた

空が紅葉色に輝き出す

二人の顔が赤く日に焼けても

もう片方の小さくピンク色した花柄ビーチサンダルを

暗くなるまで、懸命に探し続けていた



ー夏の忘れ物を探しにー

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