星乃威月

Open App

部屋を掃除してたら

古いブックたちが目に止まった


『何だろう?
 冊子がないから、本ではなさそうだし……』


気になり、古びた1冊に手を伸ばした

ホコリを払い、よく見ると、表紙もなかった


『何だろう……
 表紙もないって、なんだか気になる……』


好奇心を押さえきれず

掃除もそっちのけで、とうとう表紙をめくった

見慣れない景色の写真が、びっしりと貼られている


『これ……誰だろう……?』


その中に、見慣れない人を発見した

まだ若い大人の男女が写り

何度か楽しそうな表情を浮かべている


「キョウコ?
 なんだか静かだけど、部屋の掃除は終わったの?」


ハッとした


『この写真の顔、なんだか母に似てる……』

「それがねー!
 古いアルバムみたいなのを見つけて、見入ってたのー!
 海の写真に写ってるの、これ、お母さん?」


1階にいる母に聞こえるよう、大声で叫んだ


「えー?聞こえないー!
 今、行くからー!」


2階に来た母は、煌びやかな微笑みを浮かべて近づき

古びたアルバムの前に屈み込んだ


「これは、母さんと父さんが
 初めてデートした時の写真よ?
 懐かしいわぁ~
 こんなところにあったのね
 きっと、父さんが大事に閉まっていたのよ
 貴女の父さん、
 景色を撮るのが、とても好きな人だったからね」


と、母は若かりし頃を懐かしむように、ページをめくる

海や川、空に山、湖に草花、木々の姿も……

父が、大自然に魅了されていたのが

古びたアルバムをめくる度に、徐々に滲み出してくる


「父さん、本当に大自然が好きなんだね
 なんで今は、写真を撮らなくなったの?」


と、母に訪ねると


「それは、貴女とメイが産まれて、
 仕事に育児に忙しくなったからよ
 大自然は、家の近所にはないからね
 まだ幼い貴女たちを連れていくわけにも行かないし……
 とても危険な場所を通り抜けないと、
 大自然には行き着けられないらしいのよ……」


と、母はがっかりしたように話した


「ってことは、母さんは、
 父と大自然を探検に行ったことないの?」


母は困った顔をしている


「言ったわ
 私も連れてって欲しいと
 けど、大事な人を、危険に晒すわけにはいかないからって
 連れてって貰えなかったの」


と、残念がっていた


母をも連れて行けないほど、過酷な大自然──

アルバムに映る景色は雄大で、どれも優しさに溢れているのに

そんな過酷な背景を潜り抜けて、撮影していたなんて……

私は、言葉を失うと共に

まだ若かりし頃の父が撮影したアルバムをめくりつつ

つかの間の間、写真の景色に魅了されるのだった




ーページをめくるー

9/2/2025, 12:55:06 PM