日暮蝉も鳴き止んだ、真夏の終わり
猛暑は続くが、夕陽が沈む頃は、秋の虫が鳴き始め
リーンと鈴虫の鳴き声に
コロコロとコオロギの音色も重なって
スイーッチョンとウマオイも追いかけ、初秋を感じる
外では、湿気の少ない心地いい涼しい風が肌を掠め
猛暑疲れからか、眠気でウトウト
ああ、秋の足音が、直ぐ近くまで迫っているんだ
真夏の終わりを告げる夕焼け空を
1人、染々と空を仰ぐ
秋の涼しさが、いつまでも続けばいいのに……と
真夏の終わりを、噛み締めるのだった
ー8月31日、午後5時ー
幼き日々、帰りがけに遊ぶことを禁止されていた私は、毎日毎日1人で帰っていた
他に人は見当たらない、車も通らない……
学校はつまらず、一緒に語り合える友達も少なくなった
そんな覇気のない寂しさから、最初は道ばかりを見て帰っていた
夕焼けに照らされた赤く燃える山々や、四季折々の風に靡く田んぼに生えた草花の綺麗な景色に、心撃たれてからは、寂しさを感じてた日々も楽しく思えるようになった
けど、周りの状況は日々悪化
毎日のように繰り返される祖父母と親との喧嘩を、どうにか食い止めようと仲裁に入った
火に油状態どころか、『子供が入ってくるもんじゃない‼』と、怒られ殴られ摘まみ出され、とばっちりを受ける始末
物が飛び交う日が続いても、親の面子を潰すまいと誰にも話せない日が続いて、嫌な思いを抱えたまま過ごしていていた
四季折々移り変わる、赤やピンクや黄色に染まった色鮮やかな夕焼けに照らされた田んぼ
何事にも動じないドンと聳え立つ山々
体全体を優しく包み込む風を感じ取る度に、心が浄化されて心と体が軽くなり、心晴れやかになる思いを感じ取った
まるで、大自然から『大丈夫だよ』と抱き締められたかのように
それからは『1人じゃない、自然が味方してくれてるから怖くない』と元気が漲って確信に変わり、日々を楽しく過ごすことが出来るようになった
日々状況は悪化してく一方で、心から語り合える友達はいなくなり、表面だけで付き合う事が多くなったけど──
唯一色褪せない夕焼けの綺麗な景色だけは、いつも心に癒しを与えてくれた
そんな思い出が、心の中の風景として深く根付き、今も心の支えとなっている
ー心の中の風景はー
夏休みになる度に
道端のフェンス越しから
辺り一面を青々と生い茂り
襲われそうになるほど
高々としなやかに押し寄せてくる
津波のような夏草
何度蹴られて
刈られて、燃やされても
どこからともなく
ニョキニョキと生え伸びては
再び青々と迫り襲ってくる
自転車で避けるのも一苦労なほど
これでもか!と挑戦を挑むが如く
毎年、道の真ん中へと
一斉に押し寄せる光景
なぜ君は、そんなにタフなんだ
真夏の猛暑、暴風雨もへっちゃらで
何度人に刈られても、何のその
倒れても直ぐに立ち上がり
平然と生え繁っては、人の行く手を遮る
君のような
何度倒れても立ち上がる
そんなタフさがあったなら
人生で立ち塞がる壁にも
クヨクヨと悩んだりしないのに
ー夏草ー
よく見ると、いびつで不思議な形のピースも
点と点を繋げば線ができ、絵が描けるように
1つのピースとピースをつなぎ合わせれば
線となって形となる
折り紙も
折るにつれ、厚みを増して、立体となる
『ここにあるんだ!』
と、主張してるかのように
ドンと構える風貌は
富士山のような存在感を感じさせる
ーここにあるー
初恋の人に別れを告げられた夏の日
海辺で涙を流した
砂浜を素足のままで駆け回り
打ち寄せる波を蹴っては
過去の思い出にあかんべーをした
打ち寄せる波は
なぜか清々しく気持ちよくて
素足を心地好く撫でていった
ー素足のままでー