星乃威月

Open App

砂浜に脱ぎ捨てられたままのビーチサンダル

日中に脱ぎ捨て、夕暮れまで過ごしてたのか

持ち主の姿は、どこにも見当たらない


波は相変わらずザー、ザバァーと打ち寄せては引き寄せ

ビーチサンダルを浚おうとするが、なかなか届かない


時が過ぎて、潮が満ちても

ビーチサンダルは、砂浜に置き去りにされたまま

片方のサンダルが風で飛ばされ、徐々に放れていった


それでも、持ち主の姿は見当たらない

置き忘れて帰ったのか、それとも──

ビーチサンダルは置き去りにされたまま

初秋を迎えようとしていた

◇─◇─◇

「あったー!来てぇ~!」

麦わら帽子に、長袖を羽織った、幼い女の子が

靴を履いて、駆けてきた

「サンダル、片方しかない……」

シクシクと涙を流しては、頬にこぼれた涙を、手で拭い

見当たらぬもう片方のサンダルを、テクテク、テクテク

あっちへ、こっちへと足を運び、懸命に探す

「本当に、ここで脱いだの?」

母らしき姿の女性が、まだ幼い女の子の目線まで屈み

辺りを懸命に見回す

どこに行ったのだろう……

「また、買えばいいじゃない
 今日はこの辺にして、ばあばん家から、お家に帰ろう?」

「お気に入りの、ピンクのサンダル……
 あれがいいの……」

女の子は、グスングスン泣き、手で流れ落ちる涙を擦りながら

テクテク、テクテク、砂浜をあっちへ、こっちへ

歩いて、歩いて、探し回った


時は過ぎ、更に肌寒い風が吹き始めた

空が紅葉色に輝き出す

二人の顔が赤く日に焼けても

もう片方の小さくピンク色した花柄ビーチサンダルを

暗くなるまで、懸命に探し続けていた



ー夏の忘れ物を探しにー

9/1/2025, 12:50:30 PM